【お仕事図鑑】世界で累計1億台販売されている「スーパーカブを生み出す仕事とは?」 #本田技研工業株式会社

編集部:ゆう

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亀水二己範(かめみず ふみのり)さん
本田技研工業株式会社 本田技術研究所 二輪R&Dセンター 主任研究員


本田技研工業(株)ものづくりセンター(熊本) 商品開発部 商品開発課 二輪機種開発責任者。 二輪車のフレーム設計、商品力向上の為の完成車技術開発を行い、スクーターを主に車両開発責任者を担当。 10年前からカブシリーズを担当、現行スーパーカブの開発責任者。

ホンダのオートバイ「スーパーカブ」。全世界で累計1億台以上を販売している世界的ロングセラー製品です。

大学生の皆さんの中にも、日常の足としてご存じの人も多いのではないでしょうか。日本が世界に誇るスーパーカブですが、どのようにして開発しているのか、皆さん気になりませんか? 

今回お話を伺ったのは、スーパーカブの開発責任者、本田技術研究所の主任研究員、亀水二己範さん。「スーパーカブ」を世に送り出す「開発の仕事」に迫ります。

全員でひとつのバイクを作り上げる仕事

――まず亀水さんがどんなお仕事をしているのか教えてください。 

私の仕事は「二輪の車体設計」です。2012年からはスーパーカブを担当していまして、現在開発責任者として日本で販売されるモデルだけでなく、海外で販売されるモデルの開発も行っています。 

 ――開発・設計の仕事とはどんなことをするのでしょうか? 

二輪開発の場合、まずは「企画」を立てて、企業としての「イン/アウト」が成立するかを考えます。分かりやすく言えば、この車にはどんな魅力を持たせ、お客さまにどんなアピールができて、どの地域にどのくらい売るのかといった計画を立てます。

そしてそれにはどんな技術が必要なのか、どの国で造り、製造コストはどうするのかなど、さまざまな点を考え、コンセプトを決めることからスタートします。

同時にそれに関わるヒト、モノ、お金を考慮しながら、新しい車を提案して、会社からOKが出たら生産に向けて開発することになります。 

 ――生産に進むまでにどのような作業を行うのですか? 

開発は、技術領域だけでも各チームに分かれて行います。

例えば二輪の場合は、エンジン、フレーム、足回り、デザイン、電装などに分けられ、それぞれ技術者も含めて開発を行います。エアクリーナーはどうするのか、どんな制御技術を入れるか、などなどを考えながら、粘土で実物の大きさのバイク(クレイモデル)を作っていきます。

これじゃマフラーが大きくなってしまう、これじゃ格好悪いからもう少し工夫しようと、あれこれ意見を出し合いながら車を形にしていく作業です。

開発は、いろんな部隊が協力しながら、コンセプト通りの車を作り上げる仕事だといえば分かりやすいかもしれませんね。 

 ――開発がいないと製品が世に出ることはないのですね。 

いえ、開発だけというわけではありません。大事なのは、工場で生産に関わる人や、出来上がった車をお客さまに提供する人です。彼らがいないとどんなに良い車を生み出してもお客さまに使ってもらえません。

プロジェクトに関わる人全てに敬意を持って仕事をすることが必要です。

難しいからこそやりがいがあるスーパーカブ開発

――スーパーカブは「ホンダの象徴」ともいえるバイクですが、その開発はどのように行うのでしょうか?

基本的には先ほどお話ししたように、コンセプトを考えて全員で形にしていく流れで開発を行います。ただ、スーパーカブは初代ですでに基本形が出来上がっているため、その完成されたデザインにどんな工夫を入れるのか、どのように進化させるのかを考えないといけません。これが難しい点ですね。 

 ――究極のフォルムといえるのですね。 

スーパーカブのフレームは、「多くの人が安心して扱えること」を考えてデザインされています。突き詰めて考えても、結局あの形、サイズ感になります。

2017年に外観を一新しましたが、そこでもやはりカブの伝統であるS字のライン(ハンドルから座席、リアまでのフレームがS字を描く形になっている)を「いかきれいに出せるか」に最も苦労しました。 

 ――他に苦労した点はありますか? 

ぜひフロントフェンダーにも注目してもらいたいですね。フロントフェンダーは見た目、泥はね防止機能、さらには操縦性も関係してくるパーツですので、そのバランスにこだわっています。また、基本的な外観をキープしながら、現在の法規対応に即したデバイスを装着する必要があり、これも簡単ではありません。デザインひとつひとつに苦労があります。 

ただ、苦労すればするほど、出来上がった瞬間は何物にも代えがたいものになります。特にスーパーカブは街で遭遇することも多く、実際に走っている姿を見るとうれしいですね。そうした楽しみが待っていると思うと頑張れます。

「お客さまのために何ができるか」という思いに満ちあふれている

――スーパーカブの魅力はどんな点でしょうか? 

やはり「お客さまのことを考えつくした乗り物」であることですね。スーパーカブは、創業者の本田宗一郎と藤沢武夫が「世界中のお客さまの生活に役立ちたい」という考えを突き詰めて生み出した製品です。改めてその考えは偉大だったと感じています。我々もその「ものづくりの精神」を受け継ぎ、若い世代へとつないでいきたいと思います。 

――ホンダの二輪開発のすごいところは何でしょうか? 

二輪に限らず、ホンダは「お客さまのために何ができるか」を徹底してみんなが仕事をしています。これはホンダに入って驚いたことのひとつです。 

――まさに「ホンダイズム」ですね。 

そうだと思います。社員ひとりひとりが「お客さまのために」という信念の下、自分の個性や主観を大事にしながら真剣に取り組んでいます。全員が「自分はお客さまのためにこうしたいんだ!」というこだわりを持っています。全員が本気で向き合っているからこそ、評価していただけるのだと感じています。 

開発では、自分の置かれた状況で、いかにお客さまのためになるものを提供できるか、という考えが必要です。

スキルや知識も大事ですが、やはり大事なのは気持ち。これに尽きると思います。

いろんな国の歴史や文化を知ることが成功の鍵となる

――今後の展望を教えてください。 

自動組み立てで電動カブを作れるようになったなら面白いですね。ただ私はもう60歳。時間がないので後は若者に任せたいと思います。そのためにも、ホンダ二輪の魂をどのようにつなげていくのかを考えないといけないですね。 

――最後に二輪開発を目指す学生にメッセージをお願いします。 

スーパーカブシリーズは日本だけでなく、海外でも販売しています。特にアジアでは多くの国で人気です。海外でバイクを売るには、その国に受け入れてもらえる製品にしないといけません。そのためにも、ぜひ若いうちからいろんな国の歴史や文化を知るといいでしょう。技術も必要ですが、いろんな経験をして知識の幅を広げておくと役立つはずです。 

今の若い世代は、自分たちが同じ歳のころと比べても優秀です。皆さん頭の中にいろんな発想やアイデアを持っています。ぜひその考えを言葉にしたり文書にしたりして、「お客さまのためにこうするんだ」という強い気持ちをぶつけてください。そうすれば、きっといいものが生み出せることでしょう。期待しています。

――ありがとうございました!

※記事内容及び社員の所属は取材当時のものです。

編集後記

ホンダが誇るスーパーカブの開発は、創業者の思想と長い歴史の中で培われた伝統を継承しつつ、よりお客さまのためになるよう、常に新たな工夫を施す必要がある難しい仕事です。

しかし、それだけに「やりがい」は十分。「自分たちが開発・生産・販売したバイクが世界中の街で走っているのを見る」というのは、他の仕事ではなかなか経験できないことでしょう。

ホンダの哲学の下、真剣にぶつかり合いながらバイク開発をしたいという人は、ぜひ「二輪車開発」の道を目指してみては?

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文:高橋モータース@dcp

編集:学生の窓口編集部

取材協力:本田技研工業株式会社
https://www.honda.co.jp/

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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