「諦めるのは何かに出会うチャンス」葛藤を乗り越え、1番好きなことを手に入れた佐藤千亜妃が伝えたいこと #19才のプレイリスト
人生はきっかけの連続だ。だからこそ、自分のやりたいことをどう選べばいいのかわからない。今何をするべきなのか迷ってしまうという大学生のために、「音楽」という道を選んだアーティストに直撃し、19才の頃に聴いていた楽曲を元に人生観を語っていただく連載『#19才のプレイリスト』。
今回は、ミュージシャンの佐藤千亜妃さんにインタビュー。佐藤さんに19歳のころのことを聞くと「ちょうどバンドを組んだ頃ですね。毎日、葛藤していました」とのこと。夢と現実の間、周囲からの反対を乗り越え、今、1番好きなものを手に入れられた理由はいったいなぜなのでしょうか。佐藤さんの熱い思いが詰まったインタビューを余すことなくお届けします!
文:於ありさ
写真:友野雄(YU TOMONO)
編集:学生の窓口編集部
▼INDEX
1.やるべきことと、やりたいことの間で揺れていた19歳
2.言葉でわかってもらえないなら行動するのみ
3.諦めることは何かに出会うチャンス
4.自分が納得できる決断をするのが1番健康的
5.自分の人生に責任を取るために、自分の声に耳を傾ける
やるべきことと、やりたいことの間で揺れていた19歳
――佐藤さんは19才のころ、どのような毎日を過ごしていましたか?
ちょうどバンドを組んだ頃ですね。毎日、必死に曲を作ったり、ライブをしたりしていました。
でも、女優をやっていた時期でもあったんですよ。音楽をやりたくて上京したのですが、マネージャーの方針で最初は役者をやってほしいと言われて。音楽と芸能の仕事、二足のわらじを履いていることに毎日葛藤していましたね。
――なぜ葛藤していたんでしょう?
音楽をもっとやりたいという気持ちがありつつ、芸能の世界もプロの世界なので、来るお仕事には真剣に取り組まなきゃいけない。やるべきことと、やりたいことの板挟みに悩んでましたね。
それに、生半可な気持ちで演技のお仕事に関わってもいいのだろうかって後ろめたい気持ちがあったんです。もしこれが音楽の現場だったら、100%でやれるんだろうけど、演技となると気後れしちゃう部分もありました。
――なるほど。佐藤さんと同じようにやるべきこととやりたいことの間で悩む大学生はたくさんいると思います。
それこそ敷かれたレールを進んだ方がいいのか、やりたいことをやれる道に行くべきか悩んでる子はいるでしょうね。そういう子を見ていると、当時の自分を思い出します。
――そんな日々の中で佐藤さんが当時聞いていた曲があれば教えてください。
フラワーカンパニーズさんの「深夜高速」です。サビの部分の「生きててよかった 生きててよかった 生きててよかった そんな夜を探してる」という歌詞を聞いて、生きててよかったと思えるまで頑張ろうと思えたんですよね。
言葉でわかってもらえないなら行動するのみ
――やるべきこととやりたいことの葛藤からはどのように抜け出したんですか?
とにかく行動しました。言葉で言っても、信用してもらえないことに気づいたんですよね。19歳ということもあって、自分の考えを主張しても子供扱いされてしまうし、できると信じてもらえない。そのことは悔しくもあったのですが、「そりゃそうだろうな」って納得もしたんですよ。
だったら、行動することでしか証明できるものってないよなと思って。役者のお給料が入ったら、音楽の機材を買い集めて、自分で宅録できる環境を構築していきました。
――すごいアクティブ…そうすることで変化はあったんですか?
バンドを組んで地道に活動していた結果、インディーズレーベルからリリースが決まり、その後はライブやフェスなどを通して活動の場が大きくなっていってメジャーデビューにこぎつけました。実際に行動に移していく中で、徐々にやりたいことが理解されていきました。
特に嬉しかったのが最初「音楽をやりたい」と言ったときに難色を示していた某テレビ局のプロデューサーの方から「昔からずっと音楽がやりたいって言ってたもんな。お前、貫いててかっこいいよ」と言われたとき。本当に泣きそうになりましたね。
――反対していた人から認められたときって嬉しいですよね。
「スターは一握りの人しかなれなくて、生まれた時から決まっているんだよ」って言われたこともありました。それでも、私は自分の可能性を信じて行動した。結果的にやり続けてよかったなって思いましたね。
だから、自分の責任で自分の好きなことを貫き続けたら、運命を覆すこともできるというのは自分が経験したからこそ、学生の皆さんに伝えたいです。
その当時のことは、私の「STAR」という曲の原案にもなりました。隣にいる君さえ「いつかきっと誰かを照らすだろう」と締めている曲なんです。自分を1人の星みたいに思ってどこかで誰かを照らせると思って、大事に生きてほしいなと思います。今何かに悩んでいる人がいたら、ぜひ聞いてほしいですね。
諦めることは何かに出会うチャンス
でも、その一方で諦めることって悪いことではなくて、むしろチャンスだとも思うんです。
――どういうことでしょう?
私が頑張り続けられたのは、音楽が自分にとってプライオリティーワンだったから、そして負けず嫌いだったからという理由なんです。もともと飽きっぽい性格なのに、音楽だけは、いくらやっても飽きなかった。いつまでも背中を追いかけている、片想い相手のような存在だったんです。
一方で、諦める選択ができる人って、それを諦めても生きていける人じゃないですか。それって、決してネガティブな意味じゃなくて、プライオリティーワンが別のことだっただけだと思うんですよね。そして、その1番のものに、まだ出会えていないだけ。いつかもっと適したものに出会えたときに頑張れたらいいと思うんです。
――なるほど。
それは別に夢とか仕事に限ったことじゃなくてもいいんですよ。家庭でも恋人でも、なんでもいいから諦めきれない何かに出会えたら素敵ですよ。
自分が納得できる決断をするのが1番健康的
――優先したいことが夢や仕事に限らなくてもいいと言う言葉を聞いて勇気が出ました。でも、やはり誰かと比べて卑屈になってしまうこともあると思うんです。そんな時はどう対処したら良いでしょう?
一旦は好きなことに触れたり、満たされることに時間を使ったりして対症療法をとることが良いと思います。私はモヤモヤしたら、太陽の光を浴びたり、キックボクシングに行きます。
ただ最終的には成功体験を重ねて、自信をつけるのがいいかなと。でも、それは時間がかかっちゃうので、ゆっくりでいいと思います。
あとは、不必要に人と比べないこと。結局のところ、自分の中で納得できる決断ができることが、1番健康的ですから。
――それはなぜですか?
コロナ禍を経験して、ふと立ち止まったときに、不幸って人と比べるからこそ生まれるのかもしれないと思ったんですよ。持ち物が違う中で、誰かとポイントで比べても意味がない。幸せそうに見えても幸せじゃない人もいるし。自分の実りに自分で気づけることが大切だって思ったんですよね。
そう思う前は私自身、競争社会が嫌いじゃないタイプだったのですが、ほとんどの人がうまくいかない感覚に陥ったときに、誰かと比べているように思えました。誰かと競って得た結果よりも、自分が自分と戦い続けているうちに生み出して実ったものの方が納得してやりきれたなって死んでいけるような気がしたんですよね。
自分の人生に責任を取るために、自分の声に耳を傾ける
――楽曲のお話も聞きたいのですが、3月3日に配信した「声」はどんな楽曲ですか?
去年、なかなか思うように活動できない中で自分が音楽をやる理由とか、自分自身とは何かを考えることが多くあったんですね。
そのときに、私が大事にしてることって、やっぱり感情が一番伝わってくる人間の声だなと思えたんです。それで声というものをテーマに作ることにしました。「声が聴こえたような気がして」という歌詞のある1番は自分の体験からひねりだしました。一方で2番の「声にならない想い」というところは、うまくいかないことが多い中で、自分の気持ちすらも、言葉にできずに過ごしている人ってやっぱり多いのかなと思って詞を書きました。音としては聞こえないけど、それも人間の声なんじゃないかって自分の中で思ったので。
実は2年前に粗方できていた曲なのですが、コロナ禍を経験して、推敲できたからこそ描けた曲ですね。
――まさに今の状況にぴったりですね。最後に、大学生の方にメッセージをお願い致します
学生のうちっていろんなアドバイスや決めつけを言われることがたくさんあると思うんです。でも、他人は自分の人生の責任を取ってくれないということは伝えたいですね。その人が何歳まで生きるかなんてわからないじゃないですか。自分の人生は、自分の心の声に耳を傾けて、自分で選ぶこと、楽しむことが大切。
自信家でいる必要はないけど、どうか自分のことを好きでいてください。
ヘアメイク:SAKURA(まきうらオフィス)
スタイリスト:入江陽子(TRON)
衣装:
ジャケット/ニードルズ(ネペンテス)
パンツ/カイコー
リング/スウス
スニーカー/ナイキ スポーツウェア(ナイキ カスタマーサース)
その他 スタイリスト私物