ろう者も聴者も一緒に笑える! 芸人ユニット「よしもと手話ブ!」が創る新しい文化から“つながる社会”を学ぶ #つながる体験部

学生の窓口編集部

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手話はろう者とのコミュニケーションツールと思いがち。でも、もっといろいろな形があってもいいと思いませんか?

そこで今回は「お笑い」と「手話」を掛け合わせたライブを開催している芸人ユニット「よしもと手話ブ!」にインタビュー。活動のきっかけや、聞こえる人と聞こえない人どちらも楽しめるお笑いライブへの想いについて、 #つながる体験部 が聞いてきました!

INDEX:

音がないとわかりにくい…ろう者の声から生まれたお笑いユニット
普段の仕事やコミュニケーションでも役立つ“手話のスキル”
大事なのは“押し付けない”。お笑いが手話を1つでも覚えるきっかけに
よしもと手話ブ!を通して伝えたいこと
Q:今日の感想は?
意思疎通は特別な支援じゃない!伝え方を知ることが誰もがつながる社会への一歩に

左から順に、よしもと手話ブ!の上河内貴人さん、部長のソイさん(カエルサークル)、きくちこうすけさん、そして #つながる体験部 メンバーのコさん、ガモウさん、ミヤシタさん

#つながる体験部とは?
「#つながる体験部」は、聴覚・言語機能・音声機能・視覚・盲ろう・失語など、障害や難病によって意思疎通に困難を抱える人と、その周りの人との“伝える・伝わる”を支える「意思疎通支援」をテーマに、実際の現場を取材・体験しながら学んでいく企画です。身近な体験を通じて、“つながる社会”について考えていきます。

音がないとわかりにくい…ろう者の声から生まれたお笑いユニット

よしもと手話ブ!は、部長のソイさん(カエルサークル)とピン芸人のきくちこうすけさん、上河内貴人さんを中心に、次長課長の河本準一さん、麒麟の田村 裕さん、そして吉本新喜劇の筒井亜由貴さんの6名で活動している、お笑いユニット。「手話×お笑い=シュワライ」をテーマに、ライブやイベントで手話を使ったコントなどをおこなっています。

今回は、よしもと手話ブ!旗上げメンバーのソイさん、きくちさん、上河内さんにお話を伺いました。

今日はよろしくお願いします。まず、「よしもと手話ブ!」ってどんなユニットですか?

メンバーはそれぞれコンビやピンで芸人をしながら、手話に興味がある人同士で、手話を使ってお笑いを届けようという集まったユニットグループです。

芸人さんで手話、って正直あまりイメージがなかったのですが、皆さんどうして手話に興味を持ったのでしょうか?

私は高校生の頃、授業中に声なしで会話できたらいいなと、お友達5人くらいで指文字を覚えたんです。指文字っていうのは、「あ・い・う・え・お」とか1文字1文字を指の形で伝えるもので、なんだか秘密の暗号みたいな面白さが手話って面白いなと思って、覚えて会話しようってなったのがきっかけです。

そのあと、20歳ごろに本格的に手話の勉強を始めて、地域の手話講習会で耳の聞こえない方・聞こえにくい方々と交流している時、手話通訳士を目指してほしいっていう風に地域の耳の聞こえないおじいちゃん、おばあちゃんとかからも言われて、資格を取る勉強を始めたっていう感じですね。

手話通訳士:手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)|厚生労働省

すごい!手話通訳士の資格をお持ちなんですね。

きくちさんと上河内さんはどんなきっかけで手話を学ぼうと思われたんですか?

僕は手話歌っていう、聞こえない人が振り付けや歌詞を作ってくれるサークルに所属している友人に手話を勧められたんです。「手話って面白いよ」って。それでやってみようかなと調べたら、地域の手話サークルが各市区町村にあったので、参加してみたのが始まりです。

まず指文字を覚えてから通い始めたんですけど、耳の聞こえない方とのコミュニケーションはやっぱり手話を覚えたほうがいいな、スムーズにコミュニケーションが進むんだなと思いましたね。

周りの人がきっかけだったんですね。

僕は1時間ずっと喋り続けるっていうトークライブのイベントのスピンオフで、1時間踊り続けるってイベントをスピンオフで企画したんです。

すごい、1時間喋り続けるのも大変なのに1時間踊り続けるんですか?!

さすがに1人で1時間踊ったら倒れちゃうので、いろんなゲストを呼んだんですね。その時、一緒に踊ろうって誘った自分の娘の友達のお父さんに音が聞こえづらい難聴の方がいて。その人との出会いがきっかけでした。

娘さんが踊るので、見に来てくれたんですよ。自分の娘が踊ってる姿を見るのは楽しいですけど、聞こえないなかで本当に楽しめているのかなと思って。その時に、その1時間喋り続けるのを手話でやれば楽しんでもらえるのではないかと思ったんです。1時間、手話をすることの大変さは手話を勉強してから気づいたんですけどね。それでマネージャーさんに相談したら、手話に詳しい方が吉本の中にいるよって。

そこで、きくちさんと知り合いました。

そうそう、ご縁があってソイとつながり、手話ブ!を立ち上げるんですけど、よかったらどうですか。って言ってもらえて、じゃ、俺もぜひ参加させてもらいますってことで入ったんです。

最初によしもと手話ブ!を立ち上げようと思ったきっかけは、手話講習会で耳の聞こえない方から『お笑いがわかりづらいんだよね』という話を聞いたんです。たしかに、当時のバラエティ番組はまだ決めゼリフしかテロップが出なかったし、漫才は喋りの応酬で動きや表情もあまりない時もあるから、お笑いの面白さが耳の聞こえない方・聞こえにくい方に伝わりにくいと思うんですよね。そこで初めて、お笑いと手話って掛け合わせられるのでは、と考えるようになりました。

そうだったんですね、それでは手話を上達するためにどんなことをしていましたか?

指文字から手話を勉強しようってなった時に、聞こえない人、手話を使う人ってこの世のどこにいるのか全くわからなかったんです。それに、普段生活していても、意識しなければこの人は聞こえない方なんだなって、全く気づかなかったんです。そこで、まずはどこにいるんだろうというところから調べ始めて。

そしたら、カモ(上河内さん)と同じように地域に手話サークルがあるのを知って。手話サークルでは、聞こえない方、聞こえる方、そして勉強されてる方、教えてくれる方など、いろんな方がいるのを知ったんです。そこに通ったりしていましたね。

私は去年から地域の講習会に通い始めました。改めて勉強しようと思って。

僕は2人と違って手話サークルではなくて、飲み会です。まずはみんなと一緒で、指文字を覚えて、手話による身近な単語だけ覚えて、共通の友人である手話ができる聴者と耳の聞こえない方と飲み会に行って、わからない単語があったら聞いて覚えるという感じです。本でも勉強できますが、生きた手話を学ぶなら実際にコミュニケーションを取って学ぶのが一番だと思います。地域や世代によっても手話のニュアンスが違うので面白いですね。

ただ、やっぱり自分の家族とか友達とか学校に耳の聞こえない子がいなければ、自分から1歩踏み出してサークルに行ってみたり、講習会のような学ぶ場所で出会わないと、手話を使って生活する方がいるというのに気づくのが難しいかもしれません。

よしもと手話ブ!はいつ立ち上げられて、どのくらいの頻度で活動しているのですか?

立ち上げは2019年くらいですね。現在6人いて、今ここにいるみんなは旗上げメンバーです。皆さん芸人として活動しつつ、よしもと手話ブ!のユニット活動をしています。主に活動しているのはこの3人で、今は月に3~4回、さまざまな地域の自治体や手話サークルのイベントでネタを披露しています。

去年の東京デフリンピックの時は、1週間毎日イベントに参加していました。日本で初めてデフリンピックが開催されるタイミングに、ちょうど手話ブ!としての活動をしてた時期が重なったのはすごいありがたいです。

真面目なだけだとどうしても敷居高いなって思う方も多いと思うので、エンタメみたいな部分から、手話に興味持ってもらえれば嬉しい。なので、東京デフリンピックとコラボできたのはすごいありがたいなと思いました。

よしもと手話ブ!の活動を始めて、皆さんの中で気づいたことや、嬉しかったことはありますか?

最初は、拍手や歓声のない舞台に慣れなかったんです。お客さんは笑顔で見てくれているのですが、シーンとしているのでずっとスベっている感覚(笑)。あと、言葉遊びや言い方など、音の感覚を使ったボケが伝わらなくて、目で見えるボケを考えるのが大変でした。でも、最前列にいたご家族の娘さんが、イスから転げ落ちて床をバンバン叩きながら笑っていたのを見た時は『いい景色を見たな』と思いましたね(笑)。

聞こえる人の中に聞こえない人がいて、同じテレビを見ていて、笑いがわかる人とわからない人がいるという差が生まれるのは、家族間で結構気を遣うデリケートなポイントだったりするらしいんです。なので、「同時に笑えたのは本当に嬉しい」っていう声をもらうと、やりがいに繋がりますね。

ライブでは聞こえない人も聞こえる人も、楽しめるようにしています。普段のライブよりも、手の形が見やすい位置に立ったり、聞こえるお客さんにも伝わるように、声を出しながら手の動きや表情をつけたりと意識していて、両者に楽しんでもらうためのバランスを考えながら作っています。

そもそも、お笑いの劇場に耳の聞こえない方・聞こえにくい方が足を運ぶっていう文化がなかったと言われていたので、「よしもと手話ブ!のライブに行けば、手話で楽しめるよ」っていう情報が少しずつ広まって、実際にお友達や家族を連れてきてくれて「面白かった」って言ってくれてすごく嬉しいですね。

僕は、手話を続けていて、シンプルに友達が増えることが嬉しいです。友達みたいな感覚でお客さんも接してくれるし、手話のライブが珍しいからかお客さんと普通のライブ以上にめっちゃ喋るんです。

普段の仕事やコミュニケーションでも役立つ“手話のスキル”

よしもと手話ブ!での活動が、日常生活で役立っているなと感じることはありますか?

僕は手話を学んだおかげで、バイトで接客している時に、めっちゃ表情をつけられるようになりました(笑)。今まで手を動かさないでやっていたのを動かすようになって、わかりやすく表現できるようになりましたね。

表現の仕方として考えると、普段のコミュニケーション全般に役立ちそうですね!

舞台全体を俯瞰(ふかん)して考えられるようになりましたね。観客の方々にとっての見やすい位置や体の向きのコツは、手話ライブで学んだと思います。

私の家の近くにも、ろう学校があるのですが、なかなかろう者の方に出会えないなと思っていました。たしかに、手話を勉強するなどして意識してみると、身近なところに、耳の聞こえない方・聞こえにくい方が存在するということに気づけそうですね。

大事なのは“押し付けない”。お笑いが手話を1つでも覚えるきっかけに

手話ができない人が、聞こえない人と出会った時に、どう向き合えばいいでしょうか?

身近な物だと、スマホのメモアプリの音声認識機能で、話したことを文字にしながら見せる方法があります。相手が口の動きを読める人であれば、大きく口を開けてゆっくり話せば大丈夫!

でも、相手がしたいコミュニケーション方法に合わせるのも大事です。筆談したい人は筆記用具を持っていたりするけど、誰もが『絶対筆談じゃないとダメ』と言うわけではないので、その人が望む方法に合わせて『こうしようかな』って考えられたらいいかな。

そうですね、筆談も文章にしないで、単語で書いたほうがわかりやすいと思います。聞こえる側の考えを相手に押し付けない、っていうことを意識しておくと、コミュニケーションが取りやすくなるかなと思いますね。

よしもと手話ブ!を通して伝えたいこと

よしもと手話ブ!を通して、私たちのような学生や、若い人たちに伝えたいことはありますか?

手話ブ!を立ち上げた時から、ろう者の中になかったお笑いのライブに足を運ぶという文化を作りたいなと思っています。さらに、手話がわからない聴者の方たちが手話に興味を持つきっかけにもなってほしい。

結果として、みんなが手話で軽く挨拶ができる社会が広がって、街中でろう者が困っている時に一言、声をかけられる人や、手話がわからなくても、スマホのメモ機能など、手話以外でのコミュニケーションができる方が増えていけばいいなと思っています。

手話に触れてもらうという企画で埼玉の小学校に呼んでいただいたんですね。後日、生徒さんからいろんなメッセージをいただきました。そこで1人の生徒に「今年はすごい楽しかった」って書いてもらって。去年は真面目な授業で、手話のことを話しているのを聞いているだけだったけど、今回は手話による漫才を見たり、一緒にクイズコーナーを体験するとかゲーム企画で手話に触れることができて、すごい楽しかったようです。興味を持ってくれる子どもたちが増える一助になれればいいなと思います。

漫才による手話を見ていただくことで、聴者のどの方でも、手話って意外と入り込みやすい、わかりやすいと思わせるきっかけ作りになれればいいなって思いますね。

“お笑いのライブに足を運ぶ”という、ろう者になかった文化を根付かせながら、聞こえる人にもお笑いをきっかけに手話に興味を持ってもらえたらいいなと思っています。そこから誰もが街中でろう者とコミュニケーションが取れる社会になっていってほしい。だからまずはライブで笑いながら、手話を1つでも覚えてもらえたら嬉しいですね!

Q:今日の感想は?

手話に対して、難しいイメージがありましたが、気軽に楽しく学べるものという印象に変わりました。特別なものではなく、コミュニケーションなんですよね。今まで、ろう者の方と関わることがなかったですが、まずお笑いから手話を学んでみたいという意欲が高まりました。

手話を学ぶと友達が増える、という話を聞いて、コミュニケーションが苦手な人こそやってみるといいのかなと思いました。手話ができればろう者の方との接点ができて、世界が広がると思います。まずは今回知った挨拶から使っていきたいです。

音のないライブと聞いて、お客さんはどんな反応をするんだろうと疑問でしたが、笑顔や手話でリアクションを取って盛り上がってくれると伺って、とても興味深かったです。私も手話についての関心が広がったので、たくさんの方に手話の魅力を知ってもらえたらいいなと思います。

手話を使ったお笑いライブに挑戦する「よしもと手話ブ!」の活動から見えてきたのは、「どうすれば相手に伝わるか」を考え続ける姿勢の大切さ。コミュニケーションの手段は、手話だけでなく、表情や視線、ジェスチャー、筆談など、さまざまな方法があります。相手に寄り添い、伝え方を工夫する意識が、より良い関係づくりにつながっていくはずです。

最後に「ライブに来たお客さんにしてもらったら嬉しいことは?」と聞くと、
それぞれのサインネームを教えてくれました。

ソイさん(カエルサークル)

上河内貴人さん

きくちこうすけさん

意思疎通は特別な支援じゃない!伝え方を知ることが誰もがつながる社会への一歩に

さて、今回の6回の連載企画を通して学んだ“伝える”とは、どんなことだったのでしょうか。

これまでの連載

これまで手話の仕事といえば手話通訳士しか知らなかったのですが、芸人さんや美容師さんなど、さまざまな仕事と結びついていることを知り、手話がとても身近に感じられるようになりました。楽しく学べる入口があることで、手話へのハードルが下がり、多くの人が始めやすくなると思います。将来は接客業を目指しているため、手話検定にも挑戦したいです。手話を「暗記」ではなく、言葉とリンクして覚え、表情やボディーランゲージも使いながら、相手にどう伝えるかを考える姿勢を大切にしていきたいです。

今まで、手話や障害のある方への支援を「福祉」や「特別なもの」として捉えていましたが、実際は、耳や目の不自由な方など障害のある方は身近にいて、筆談や簡単な手話など、今すぐできる方法がたくさんあるのだと気づかされました。今後はメディア業界に進む予定なので、今回知ったコミュニケーション方法を活かして、取材の幅を広げることができたらいいなと思っています。将来は手話を取り入れた番組づくりにも挑戦してみたいですね。

大切だと感じたのは「相手の立場になって考えること」。目が見えない方や耳が聞こえない方の体験、失語症の方のことを知る中で、助けが必要かどうか、どんな助けを求めているのかに気づくこと自体が支援につながるのだと学びました。また、手話表現のお笑いライブなど、誰でも参加できる機会が身近に多くあることを知り、興味のハードルが下がりました。今後は、手話の簡単な挨拶から学び、手話検定や自治体の講習会にも挑戦してみたいです。

大学生が自分たちの目で見て、感じて、発信することで、“みんながつながる社会”を考える #つながる体験部 。これまでさまざまな活動に触れる中で、意思疎通は特別な支援ではなく、相手に寄り添い伝え方を工夫する姿勢から生まれるものだと気づかされました。意思疎通から社会を見つめ直すことが、誰もが関われる「つながる社会」への一歩になるのです。

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