なぜ夏が終わるときにさみしく感じるの? #もやもや解決ゼミ
日常に潜む「お悩み・ギモン」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。
夏の終わりを感じたときに、なぜかさみしくなってしまったことはないでしょうか? では、夏が終わるころにこのような心理状態になるのはなぜなのでしょう。
立教大学 現代心理学部映像身体学科の香山リカ教授に教えていただきました。香山先生は精神科医としての活動も行っていらっしゃいます。
「夏の楽しかった思い出が消えそう」という不安が原因
夏の終わりは、この夏を有意義に過ごしたリア充さんにとっても、そうじゃない非リア充さんにとっても、名残惜しくさみしく感じられると思います。
まず、有意義に過ごした人。例えば、夏のバイトで彼女ができた、という人がいたとしましょう。そういう人は、バイトに行くのも楽しみで、終わった後に彼女と帰る途中でアイスを買って食べたり、休みの日には一緒に海を見に行ったりと、いろいろな思い出ができたことでしょう。
本来であれば、恋愛は季節に関係なく始まったり終わったりするものなので、秋になっても冬が来ても、彼女とは仲良くすればいいのです。
でも、夏ならではの「アイス」「海」「花火」といった思い出があまりにも強烈なため、心のどこかで「夏が終わったら恋も終わるのでは……」と不安になるのです。
多くはただの考え過ぎなのですが、この「夏が過ぎたら夏の間の楽しいことが全部消えるかも」という不安が、リア充さんにとってのさみしさの原因です。そういう人は「秋になっても楽しいイベントもたくさんあるし、彼女とも続くんだから大丈夫!」と自分に言い聞かせてください。
「秋になったらもう遅い!」ではない
夏を有意義に過ごせなかった非リア充さんにとってのさみしさの原因は、ズバリ「焦り」です。 夏の間に「とにかく何か思い出に残ることをしなければ!」という焦りに取りつかれてしまい、さみしいような、慌ててしまうような、おかしな気分になるのです。
そういう人は、一度冷静に考えてみてください。恋人づくりでも筋トレでも勉強でも、「夏にしかできない」ということはあまりありません。
やろうと思えばいつからでも始められるはず。むしろ世間の雰囲気が落ち着いてくる秋こそ、自分が本当にやりたいことを手掛けるチャンスです。「夏が終わったらもうおしまい」なんて思考におちいるのは、あまり意味のないことなのです。
しんみりした気分は「昇華」しよう!
社会人になって何年もたつと、忙しさから春も夏もよく分からないまま、仕事に追われて毎日が過ぎてしまいがち。
だから「あぁ、夏が終わるなぁ……なんかさみしいな」と季節の移り変わりにしんみりできる、というのは学生ならではの美しい心理のようにも思えます。 そういう気分のときには、写真を撮ってみたり、詩や短編小説を書いてみたりするのもおすすめです。
ネガティブな感情を作品づくりなど有意義なことに変えることを、心理学では「昇華」と呼んでいます。 さみしさを感じたときにしかできない、「昇華」という心の機能をうまく使ったあなただけの創作活動をこの夏から秋の変わり目にしてみませんか。
意外な自分の才能に気づいたり、その作品が好きな人の目にとまって「秋の恋」が始まったり、などということもあるかもしれません。
香山先生によれば、「夏の間にあった楽しいことが全て消えてしまう」という思い込み、「秋になったら遅い」といった焦りなどが、夏の終わりに人を寂しい気持ちにさせるとのことです。そのような気持ちは、香山先生のアドバイスにあるようにクリエイティブな方向へ昇華させるといいでしょう。「芸術の秋」なんて言葉もありますからね。
イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp
教えてくれた先生
精神科医・立教大学 現代心理学部映像身体学科教授。
1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。
豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。