春になるとなんだか憂うつに……原因と対処法を心理学で徹底解説! #もやもや解決ゼミ
日常に潜む「お悩み・ギモン」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。
ぽかぽかと暖かくなり、いよいよ桜が咲く春の到来となりましたね。
かがやく青空の下、全てが輝いて見える春なのに、なぜか気持ちが弾まない……中にはそんな人もいるかもしれません。実は、春に憂うつになるというのは珍しいことではないのです。
でも、なぜそんな心理状態になってしまうのでしょうか。
立教大学 現代心理学部映像身体学科の香山リカ教授に回答してもらいました! 香山先生は精神科医としての活動も行っていらっしゃいます。
春は自分で自分にプレッシャーをかけやすい季節
「五月病」という有名な言葉があるように、楽しいはずの春になぜか気持ちが憂うつになる人がいるのは、昔から知られています。
なぜそんなことが起きるのでしょうか?
心理学的に考えると、春は「新年度だから頑張らなければ」という周りからの、そして自分からのプレッシャーがかかりやすい時期です。
特に自分で新しい年の目標をはっきり決めて突き進むタイプではなくて、「頑張らなくちゃ……でも何をしたらいいのかな」というタイプが、この「無言のプレッシャー」に弱いと考えられます。
逆に「新年度? まあ関係ないや」と気にしないタイプは、プレッシャーもなければそれに押しつぶされての「春の憂うつ」もないはず。
つまり、「まじめはまじめだけれど、新年度のプランをきちんと立てるほど意識が高いわけではない」という人たちが、新年度に目に見えないプレッシャーやストレスを感じるのです。
そして、「春って楽しいな」と思っているはずなのに、知らない間に「あれ、おかしいな……なんか疲れを感じる。それに、あまりウキウキもしない」と次第に憂うつな気分に陥っていくわけです。
「ストレスの正体」をはっきりさせるだけで心は楽になる
では、どうすればこの春の憂うつに囚われることなく、元気にこの季節を過ごせるのでしょうか?
一つは、「何かやらなきゃ」とあれこれ考えるよりは、きちんと思いを言葉に置き換えることです。
先ほども言ったように、春の憂うつの原因の一つは、自分で自分に対して目に見えないプレッシャーを与えていることです。でも、だからといってそのストレスを自分から取り除くのはムリ。
そういう人は本来とてもまじめだからです。
だとしたら、これからの一年で何をしたいのか、具体的にどうやってそれを行うのか、一度、きちんと文字やグラフィックにしてみましょう。
実際に実現のためのロードマップを作り、何かを始めてみるのもいいと思います。
もちろん、勉強や就活に関したことではなくて、例えば「彼女を作りたい」「あちこち旅行に行きたい」「ダイエットしておしゃれしたい」「歌がうまくなりたい」といったことでもいいのです。
とにかく、自分を外から、あるいは心の内から締めつけているストレスの正体をはっきり突きとめる。それだけでも、気持ちがラクになり、春の憂うつから解放されるはずです。
でも、「春眠暁を覚えず」という漢詩にもあるように、春はなんとなくけだるくて、のんびしたいなという気持ちにもなる季節です。
ムリして新年度のスタートダッシュをし過ぎずに、たまには「ポカポカして気持ちいいなあ」と公園でゴロンと横になり、ちょっとだけ自分を緩めてあげるのもよいでしょう。
ぜひあまり焦らずに、この良い季節を自分らしく楽しんでください。
香山先生によれば、まじめで自分で自分を追い詰めてしまう人ほど春に憂うつになる、とのことです。
せっかくの春、なんだか憂うつになりがちな方は、ぜひ今回ご紹介した方法を試してみてください。
イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp
教えてくれた先生
精神科医・立教大学 現代心理学部映像身体学科教授。
1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。
豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。