商業映画はどんな流れで作ってる? 映画業界に就職したい人は知っておきたい基本の流れ

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年間1,000本前後もの数の映画が劇場で公開されていますが、そうした「商業映画」はどのようなプロセスで作られているのかご存じですか?
例えば、撮影が終わってから公開までにどのようなことを行っているのかは、知らない部分も多いですよね。そこで今回は、ポストプロダクション(映画撮影後の作業を行う企業)に勤める元映画助監督に聞いた「商業映画の制作プロセス」をご紹介します。
撮影まではどんな流れ?
映画を作る際、まずはどんな映画を作るのかを決めないといけません。例えば、最近増えているアニメや漫画の実写化作品も、最初にどの作品を実写化するのかを決める必要がありますね。そうした「どのような映画を作るか」を提案するのがプロデューサーです。プロデューサーは企画立案をして、映画制作会社などに売り込んで出資交渉を行います。
資金を確保したら、監督や脚本家など制作スタッフを集めます。最初からプロデューサーと監督や脚本家がタッグを組んでいることもありますが、まだどの監督にお願いするか決まっていない場合は最初に監督を探し、決まったらその監督と一緒にスタッフを集めることになります。
このとき、監督が自分が頻繁に起用しているスタッフ(チーム)を起用することもあれば、「あの作品のカメラマンを起用したい」などと注文を出すことも多いそうです。
その後、脚本家が脚本を執筆(先に脚本が完成している場合もあります)し、それと並行して出演する役者のピックアップ・出演交渉のほか、集めたスタッフと共に制作準備を進めます。
脚本が形になれば、クランクインまでにロケハンなど撮影に必要な準備を行い、全て整ったら撮影スタートです。
撮影してからどんなことをするの?
撮影には、ドイツの『アーノルド&リヒター』やアメリカの『レッド・デジタル・シネマカメラ・カンパニー』、日本の『ソニー』『パナソニック』『キャノン』などのカメラが用いられることが多く、現在は4K以上の画質で撮影されることがほとんどだそうです。
ちなみに、現在はほぼ用いられることがなくなった35mmフィルムの画質は、デジタルの4K相当なのだそうです。それだけフィルムは美しかったのですね。
撮影は台本を基に作成した撮影スケジュールに沿って進めていきます。このとき、撮影したデジタルデータは、データマネジャーやポストプロダクションなどによって逐一バックアップされます。
撮影と同時に編集や合成作業も進められます。このとき、撮影データをポストプロダクションの編集部などに渡して編集を行うのですが、そのままの撮影データだと容量が大きいため、編集しやすいよう容量の小さなデータに変換して渡します。
編集には『Adobe Premiere』や『Avid Media Composer』『Apple Final Cut Pro』などを用います。撮影現場に付いているスクリプター(記録係)が、撮影された映像がどのシーンのものかを全てまとめているので、それを参考に編集を進めます。同時に録音部から届けられた音声データを貼り付けます。
こうして撮影が行われている間にも編集が進められていくのです。編集工程では、監督やプロデューサーからどのように編集するのかなどの指示があったり、編集方針についての打ち合わせが何度も行われます。
こうして全ての工程が終了し、何度か試写して監督やプロデューサーからOKが出れば編集完了です。その後、編集内容を記録したEDL(Editors Decision List)を用いて、劇場公開用画質の映像データの編集を行うことになります。
編集が終わったら、次に「グレーディング(=カラーコレクション)」という作業を行います。これは「色調整」をする作業です。例えば晴れた日に撮影した映像と曇っている日に撮影した映像を「同じ日の出来事」として編集すると違和感がありますね。こうした場合にグレーディングを行うと、天気が異なる日に撮影した映像でも全て同じ天気に見えるようになるのです。ほかにも、撮影時に暗かった映像を明るくすることもできます。
色調整が終われば、次はタイトルやエンドロールを入れるといった作業が行われます。このとき、合成では処理しきれなかった部分を暗転(画面を暗くして場面を変えること)などを使って見えないようにするデジタル処理が行われることもあります。
こうした工程を経て「全てOKです」となれば、「デジタルシネマパッケージ」という映画館で公開するためのデータを作成。スタッフが試写して問題がなければ、次は劇場での試写が行われ、そこでも問題がないようであれば、各劇場にデータが届けられ、晴れて公開……となるのです。
ちなみに、デジタルシネマパッケージ作成後の試写で何か問題が見つかって差し戻しとなることは、「ごくまれ」にあるとのこと。よほどの場合は再撮影が行われますが、ほとんどは再編集での調整で済ませるそうです。試写から劇場公開日まで数カ月や半年などかなり日数が空いているのは、こうした「何かあったとき」のためなのです。
商業映画が作られる流れについてご紹介しました。ちなみに、テレビドラマも制作プロセスは商業映画とほぼ一緒なのだそうです。映像業界への就職を希望している人は、どのようなプロセスで映画が作られるのか覚えておくといいかもしれませんね。
(中田ボンベ@dcp)