「心に余白があるから、自分と向き合える。」 俳優・岡山天音の夢をかなえる方法
9月13日に公開される『王様になれ』で、カメラマン志望の主人公・神津祐介をエモーショナルな魅力で演じている岡山天音さん。若手演技派俳優として注目を集める彼が、the pillows30周年記念映画である今作に参加して感じたことや、夢に向かって人生を切り開こうともがき続ける主人公にちなみ、岡山さん流の「厳しい現実と向き合いながら夢をかなえる方法」についてお伺いしました。
文:落合由希
写真:島田香
編集:学生の窓口編集部
【INDEX】
1.厳しい現実と向き合い夢をかなえる方法
2.天音流 後悔しない「人生の歩み方」
3.昨日まで選ばれなかった僕らでも、明日を持ってる。
厳しい現実と向き合いながら夢をかなえる方法
ーー岡山さん演じる「祐介」は厳しい現実の中で崖っぷちにいる自分、成功していく同期への嫉妬、ほのかな想いを寄せる女性との心のすれ違いなどを経験していきますが、岡山さん自身が、過去を振り返って「厳しいな」と感じていたことはありますか?
ありますけど、だからと言って今、なにかを乗り越えた感があるかと言えば別にそんなことはないですね。新しいことに挑戦する機会に恵まれた仕事なので、まだまだ自分はトライ&エラーの中にいるなっていう感覚がめちゃめちゃあります。
ーートライ&エラーの日々の中で、ちょっと厳しいなとかしんどいなとか思ったときは、そのことに対してどんなふうに向き合って乗り越えてきたんですか?
挫折したときって、台本を読もうとしたり自分が出演した作品のオンエアを確認しなおそうとしてもなかなか効果が出ないんです。そんな時に僕がやってるのは、一度立ち止まって全然違うことに没頭する時間を作ること。それこそ趣味だったり……あとはめっちゃ散歩するとか(笑)。がっつり何か別のものと向き合うというか、“衝撃には衝撃で対抗する”みたいな気持ちです。
ーーそうすることによって、改めて向き合ったときに見え方が違ったり、解決法が見つかったりするんですか?
そうですね。ちょっと心に余白ができるんだと思うんです。それまでは視界が狭くなっているせいで“お先真っ暗”みたいに感じていたのが、余白ができることで少し俯瞰で見れて、そんな自分も笑えるようになるというか。
何か別のことに感動することで、立ち止まる瞬間を作るのが大事ですね。
天音流 後悔しない「人生の歩み方」
ーーもし大学生が、夢と現実の狭間で苦しむ祐介と同じような局面に立たされたとしたら、どのようなアドバイスを贈りますか?
個人的にはこれと決めたことを貫くのが好きなんです。日常ではそれを邪魔しにいろいろな障害が立ちはだかるんですけど、それは自分の中で確信がつかめているかどうかを試されている気がするんですよね。
だから、いろいろな方向からいろいろな種類の妨害が来ても、それはたぶんまやかしというかドッキリだぞ、みたいな感覚が自分の中にはあるので、「そのドッキリには引っかからないぞ」って思うんです。
もし苦しんだその先に、望んでいたような結果が伴わなかったとしても、他にも納得できる未来はあるのかなと思いますね。やっぱり、結果よりも過程が大事だと思うし。最終的にはみんな死んじゃうから……(笑)。
死ぬときに何を思い返すかを考えたときに、自分が「オレはこれを選択したんだ」って納得できたらそれでいいんじゃないかな、って。最後の最後に「あいつのせいで……」って誰かのせいにするのはキツイじゃないですか。
だから、「なるようになる」。最終的に超安易な答えですけど(笑)、妨害に負けずに突き進んで、楽しむことを忘れずに、毎日取り組んでいってほしいなって思いますね。
ーー努力をしても夢がかなわなかった人や、何かしらの事情で夢をあきらめざるを得ない人もいると思いますが、そういう人についてはどう思いますか?
その先に宝が埋まっている気がすごくします。運命じゃないけど、そうなるべきだったというか……。自分で勝手に「自分の幸せはそこにしかないんだ」って決めつけていただけで、夢や希望を断たれて違う方向に流れついたとしても、そこにも豊かさはあると僕は信じています。
この仕事も自分の「やりたい」っていう思いだけで、ひたむきに努力していれば続けられるかといえばそうではないし、やっぱり選ばれないといけない仕事だし、運も必要なので。
もし自分の思いを貫いた結果、望んでいたような場所にたどりつけなかったとしても、それは今いる方に人生の豊かさみたいなものが待っていたからこそ、こっちに導かれたんだなって僕は思います。
まぁ、そうじゃないと楽しくないから……って思っているというのもありますけどね。そうじゃないとキツイなぁ……って(笑)。
ーー祐介は仕事で大きな失敗をしてしまいますが、岡山さんにはそんな経験はありますか?
第三者から見たら「そんなことない」って思われるかもしれないけど、自分的にはもう失敗の繰り返しです。「あぁ〜、死にてぇ」みたいな(笑)。
ーーそんなときはどんなふうに気持ちを立て直すんですか?
1日たりとも同じ日はないですし、毎日いろいろな刺激があるじゃないですか。久々に誰かと偶然会ったり、仕事でいつもと違う場所に行ったりとか。
そういう小さなことを積み重ねていく内に、気がついたらちょっとずつそういう衝撃と距離ができて、また楽しいことを見つける余裕が出てきたりするんですよね。だから、時間が解決してくれるっていうのはあるんだなと思います。
昨日まで選ばれなかった僕らでも、明日を持ってる。
ーー今作はthe pillows(以下、ピロウズ)というバンドの30周年記念映画ですが、オファーが来たときはどのように感じましたか?
ピロウズの30周年記念に映画を作るということ。さらにそれがドキュメンタリーではなくオリジナル・ストーリーのフィクションで、僕が主演として立たせてもらうということが、とても興味深いというか、面白い場所に呼んでいただけたなという思いがありました。
ーーメンバーとの共演シーンもありましたが、メンバーとは話したりしましたか?
映画の話というよりも、歌詞を書いているさわおさん(山中さわお/ボーカル・ギター)の曲作りのスタンスなどを中心にお話を伺いました。すごく贅沢な時間でしたね。
撮影に入る前に『ハイブリッド レインボウ』(ピロウズのヒストリーブック)を読んだんですけど、ピロウズの歌詞はものすごく共感性が高くて魅力的だなと感じました。
基本的に、音楽って大衆に向けてメッセージを発信していると思うんですけど、ピロウズを聴いていると、まるで僕個人に語りかけられているような感覚になるんですよね。
それってつまり、それだけ歌詞にエネルギーというか普遍的なパワーがつまっているということだと思うんですけど、だとしたら、いったいどんな人が、どうやってこんな歌詞を書いているんだろうってすごく気になって。
ーー特に好きな曲や歌詞のフレーズはありますか?
やっぱり、映画のキャッチコピーにもなっている “昨日まで選ばれなかった僕らでも、明日を持ってる。” がいちばん印象に残ってます。
これは『ハイブリッド レインボウ』っていう曲の歌詞で、内容的には結構普遍的なメッセージだと思うんですけど、詞にするための言葉のチョイスが、ものすごく自分の中で新しく感じて、初めてこの詞を見たときはめちゃめちゃ刺さりました。
ーーGLAYのTERUさんやJIROさん、ストレイテナーのホリエアツシさんなど、ピロウズゆかりのゲストミュージシャンも多数出演されていますが、共演された感想は?
「やっぱりミュージシャンの方たちってカッコいいんだな」って思いました。ラーメン屋さんのシーンで、THE PREDATORSのメンバー(山中さわお、JIRO、高橋宏貴)がカウンターに並んで僕と交互に映るシーンがあるんですけど、見ていて「あっちは華あるな〜!」って(笑)。 役者にはない輝きみたいなものを感じましたね。
ーー監督・脚本・出演を務められたオクイシュージさんはどんな方でしたか?
オクイさんはすごく繊細で優しい方だと思います。だからそのぶん、周りの人にも愛をもって毎日撮影されていて。あとは、やっぱりとてもピロウズ愛を持っている方なので、現場では 「ファンの方たちに喜んで納得してもらえるような作品を撮ろう!」っていう覚悟やエネルギーをすごく感じました。
ーー最後に、本作の見どころを教えてください。
祐介が抱えている悩みや葛藤は、性別や年代を問わず、誰しもが味わったことだと思いますし、祐介より若い方や、同世代はもちろん、祐介より上の世代の方たちも、今もそういう気持ちの延長上に生きていると思うので、誰もが元気をもらえる作品になっていると思います。
また、歌詞の美しさやカッコよさを含め、 ピロウズの曲は時代や年代を超えて届くものだと思うので、ピロウズを知らない方たちにとっては、この作品がピロウズを好きになる入り口になると思います。ぜひ劇場で観てください!
『王様になれ』
9月13日(金)シネマート新宿ほか全国順次公開
(C)2019『王様になれ』フィルムパートナーズ
■公式HP
ousamaninare.com
■クレジット
岡山天音
後東ようこ 岩井拳士朗 奥村佳恵 平田敦子
村杉蝉之介 野口かおる オクイシュージ / 岡田義徳
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TERU(GLAY) JIRO(GLAY/THE PREDATORS) ホリエアツシ(STRAIGHTENER) THE KEBABS
ナカヤマシンペイ(STRAIGHTENER) 日向秀和(STRAIGHTENER) 高橋宏貴(ELLEGARDEN/THE PREDATORS) SHISHAMO
Casablanca THE BOHEMIANS 宮本英一(シュリスペイロフ) 藤田恵名 有江嘉典(VOLA&THE ORIENTAL MACHINE)
the pillows山中さわお 真鍋吉明 佐藤シンイチロウ
原案・音楽:山中さわお 監督・脚本:オクイシュージ
企画:バッド・ミュージック・グループ音楽出版
制作プロダクション:ブースタープロジェクト
製作:『王様になれ』フィルムパートナーズ
宣伝協力:キングレコード 配給・宣伝:太秦