社長もYouTuberも学生も。全国から人が集まるカフェバー@高円寺|トーキョーエモジェニックマップ #1
はじめまして! 横石陽大と塚本拓真です。ぼくたち2人は、バックパッカーの世界大会を通じて出会い、意気投合しました。 この連載『トーキョーエモジェニックマップ』は、インスタ映えだったり、コスパが最高だったり、おしゃれなお店がたくさんある東京23区において、「ここにしかない」と思わせてくれるような、自分にとって特別を感じさせてくれる「エモいお店」を僕たち2人の目線で探し、地図を作る……そんな連載です。
二浪を経て早稲田大学に入学。在学中は、受験生応援雑誌を製作するサークルの代表や旅に熱中。その後、レッドブルが主催するバックパッカーの世界大会「Can you make it ?」では日本代表となり、無一文・スマホなしでヨーロッパ横断を達成。そこで横石と出会う。
右)横石陽大(21歳):明治大学 法学部3年
幼少期から自然と戯れており、冒険好き。大学入学後は、夏休み限定で自転車日本一周に挑戦しており、今夏に達成予定。レッドブルが主催するバックパッカーの世界大会「Can you make it ?」では日本代表となり、無一文・スマホなしでヨーロッパ横断を達成。そこで塚本と出会う。
記念すべき第1弾は杉並区 高円寺にある、旅×夢×笑顔×繋がりをコンセプトにした『Cafe & Bar スマイルアース』にやってきました。
今回インタビューする吉田ゆうきさんは、大学を卒業し、大手企業に就職したあと、世界一周をするために会社を辞めて、帰国後に高円寺でお店を開いたそうです。
「もう一度サラリーマンに戻るなら、世界一周する意味がないかな」と思って始めたお店
—吉田ゆうきさん(以下ゆーきさん)、よろしくお願いします! いきなりですが、どうしてこのお店を始めたんですか?
俺、世界一周する前はサラリーマンだったんだけど、日本に帰って来てからもう一度サラリーマンに戻るんなら世界一周する意味ないなって思って。せっかく時間もお金も使って色んな経験できるんだから、それを武器に自分でなにかを始めたくて。そのときに「俺にもできそう」って思ったのが飲食店だった。そこから自分が大好きな旅をコンセプトにした店をやろうって思い立ったって感じかな。始めたのが2011年の5月だから、今年で丸7年になるね。
パチンコとバイトばっかの大学生だった
—ではお店を開くはるか前……まずは大学時代の話を聞かせてください! ずばり、当時の経験は今に生きていますか?
特にない(笑)。だって、学生時代はなにも考えてなかったからね。
確かに、学生時代は娯楽としてバックパッカーをしていたけど、当時はひとりで東南アジアを周って、パチンコとバイトばっかのクソみたいな大学生だった。大学を卒業したあとはそのまま就職して、一生この会社で働くと思ってたし、会社での成績もよかったから給料もよくて全然満足してたんだけど、世界一周しようと思って会社を辞めた。
—順風満帆な社会人生活だったのに、世界一周をしようと思ったきっかけってなんだったんですか?
突然、彼女が「世界一周したい」って言い出したから(笑)。
……っていうのもあるんだけど、2004年くらいかな、「ニート」っていう言葉が世の中にでき始めてニュースとかでニートの特集をやっていたのを見て、逆に、1、2年ふらっと世界を周ったとしてもいいかなってふと思ったんだよね。なんとなく、世界一周が頭にチラついてたから、「世界一周」をネットで検索したら、記事がたくさんあって、「俺も行っちゃおうかな」って思えた。
そのころは、仕事がいい感じで、だから天狗になっていて、1、2年ブランクがあっても20代のうちなら何度でも取り返しがつくし、大丈夫かなって思ってた。最悪、再就職できるだろうしって。
ー「サラリーマンに戻らない」って覚悟がすごいですよね。ちなみに世界一周は何年間したんですか?
それは世界一周する前から「旅が終わったら旅をコンセプトにしたお店をやりたいな」って考えてたからね。実際に世界一周にかかったのは2年間かな。
ー2年間の世界一周をとおして、当初から考えていた「旅のお店をやりたいな」って気持ちがさらに強くなったとかありますか?
あー、それはまったくない(笑)。
最初はとりあえずメニュー決めていって、なんとなくラフな感じではあったけど、イメージはあって。でも、どんなお客さんが来るとか客層とかもわからなかったから、どっちかっていうと「やりながら、やりながら」って感じで店を始めたかな。
やりながら「あとから決まっていくこと」ってすごく多くて、たとえば「出張スマイルアース」っていう取り組みがあって。それは、“俺自身”がこのお店=スマイルアースとして、日本全国の旅をコンセプトにしたお店にお邪魔して、カウンターに立たせてもらうってことをやっているんだけど、それはお店を始めたあとからいろんなお店とつながっていくようになって、その縁の中で「じゃあそっちのお店に顔出させてよ」って言って実現するようになったんだ。
あと、昔Twitterで「青森に住んでいるから行けないけど、(東京の)スマイルアース行ってみたい」ってツイートを見かけて、「店に来られないなら、こっちが行けばいいや」って思った。そこから「旅するスマイルアース」っていう名前で、お酒をリヤカーに積んで日本中で立ち飲み屋を営業しながら周ったんだ。
とにかく手探りで、“やりながら、やりながら思いついたことをやっていった”って感じなんだよね。
理想は海外のゲストハウスみたいな空間
—なぜお店の場所を高円寺にしたんですか?
店をやるならとりあえず東京がよくて。東京って、絶対みんななんかのタイミングで来るでしょ? 成田空港の帰りとかさ。だから「旅」の店をやるなら東京がいいなって思って。
最初は山手線沿いにしようとしてて、線路沿いを散歩して、不動産屋に行って、一駅散歩して、不動産屋に行って……を繰り返してた。
オフィス街は違うな、繁華街はチェーン店が多いから違うなって、いろいろ考えて山手線沿いを選択肢からやめようと思ったときに、以前、友達と一緒に行った中央線沿いがおもしろいなとふと思い出して。そして、高円寺に遊びに行ったときに「このへんはおもしろそうだな」ってピンと来たんだよね。
地元の横浜もいいかなって考えたんだけど、やっぱり東京がよくて、ここの場所を見つけるのに1年かかったよ。

—ゆーきさんが始める前から「旅」をコンセプトにしたお店はあったと思うんですけど、どうやって他のお店との差別化を図ろうと思ったんですか?
旅をコンセプトにするって、実は難しくて。世界一周をする前に、飲食店にどうやって「旅」の要素を盛り込むかを考えていた。たとえば、世界一周した夫婦が世界中のビールを売っているお店を見に行って、お話を聞いたりとか、いろんな方に話を聞いてて、ひとつずつ探していったんだよね。
いろいろ考えて、俺がやりたいなって思ったのは、海外のゲストハウスみたいな場所がいいなって思った。チェックインしてロビーにいたら「こんにちは、どこに行くんですか?」って旅の話ですぐに仲よくなれる……そんな場所を作って、不特定多数の人と旅の話を通じて友達になれる空間にしたかった。
中学のときは中学、大学のときは大学。バイトのときはバイト……って自分の所属している場所でしか友達ができないけど、スマイルアースは学生だったり、YouTuberだったり社長とか色んなバックグラウンドを持つ人がフラットに話せるし、「ゲームで負けたらテキーラね」とか一緒にはしゃげる。そういうのは楽しいじゃん?
ーこのお店をやっていて、一番印象に残っているお客さんはいますか?
一番って言われるとわからないな(笑)。ただ、最初のころ、スマイルアースに来るためにヒッチハイクで来たお客さんがいて、そいつに会えたときは嬉しかったな。今でも結構いるんだけど、日本一周しているやつで、『高円寺』って掲げてヒッチハイクしていたらしくて。
あとほかにはYouTuberのジョーブログ。あいつはYouTuberになる前から来てるんだけど、変わったやつで(笑)。当時、金の全身タイツを着て、全身縄で縛られた状態で来た。縛られてピョンピョンしながらヒッチハイクをして日本一周するのがコンセプトだったらしくて、「大阪からスマイルアースめざして来ました。」って言ってくれたよ。「お前1回も縄ほどいてないな?」って聞いたら、「すみません、どうしてもトイレ行きたくて、名古屋で1回ほどいてもらいました……」って言ってた(笑)。
ーでも一回だけだったんですね(笑)。いろんな旅人が集まってくるお店だと思うんですけど、みんなゆーきさんに会うために来てるんですか?
いや、どうだろう。ただ、手前味噌だけど、俺はお店のことや俺のことをうまく発信できてると思うんだよね。Facebookとかインスタとか、あと旅行系メディアの中の人とも仲いいから、うまく広報はできてると思うし、仲よくなった人に「なにか仕事ちょうだいよ」って言って、俺から振って実現したこともある。
「繋がり」が「繋がり」を呼んで、今のスマイルアースがうまく作り上げられている。
ーこのお店を始めて丸7年になると思いますが、今後どんなお店にしていきたいですか?
ここのお店は、もうこのままでいいと思っている。でも、最近思っていることは、まあ思いだからコロコロ変わるかもしれないんだけど、こういうお店を全国の色んな場所でできたらなと。うち、シェアハウスも運営しているけど、それももっと色んな場所でできたらなって。
たとえば、スマイルアースと同じようなカフェバーの店とシェアハウスをセットで、那覇、名古屋、大阪、仙台とかでやって。そしたら従業員が全国を旅しながら働けるし、うちのコミュニティにいる人たちが全国のスマイルアースのシェアハウスに泊まれる。みんなが全国を旅しながらスマイルアースにいられるようなシステムを作りたいなあ。
最後に、ゆーきさんが思う「エモい」を書いてもらいました。
吉田ゆうきさん、ありがとうございました。
取材/文:塚本拓真(Twitter:@orehayuichiro51 Instagram:@takuma.photo777)
横石陽大(Twitter:@sutera1004 Instagram:@y.yodai)
撮影:塚本拓真/マイナビ学生の窓口編集部
取材協力:Cafe & Bar スマイルアース(http://smileearth.sunnyday.jp)