羽生竜王が将棋界のトップを走り続ける理由。「流行」を追いながらも、「個性」を活かす!
学生が抱えるさまざまな不安や悩みを著名人が受け止め、突破口になるアドバイスを贈る本企画「学生の相談窓口」。今回、悩みに答えるのは、将棋界史上初の永世7冠を達成した羽生善治竜王(以下、羽生竜王)です。国民栄誉賞も授与された羽生竜王に、トップを走り続ける秘訣を教えてもらいました。
羽生さんは現在将棋界でトップの位置を走り続けている方だと思います。トップであり続けることへの不安はありますか? また、トップになるための秘訣はなんですか? 自分が将来人を引っ張るような人になったときに参考にできればと思います。
工学部/男性/20歳(大学1年生)/東京都在住
A.トップであり続けるためには、個性と時代の流行りとの相性をチェックする |
情報化社会でトップを走り続けるには、個性を活かすこと
不安は常にありますね。今の時代ってネットも発達していて、基礎的な情報やセオリー、パターンは、ある程度情報収集すれば簡単に吸収できるじゃないですか。だからその部分で他の人たちと差がつくことは基本的にはない。将棋の世界に限っても、知識の部分で差がつくことはないんです。
基本的な知識で差が出ないのなら、そこから先は、その人が持っている個性とか、持ち味とか、オリジナリティとか、そういうものが問われてきます。
それと、マッチングの問題もあるんです。自分が持っている能力とか、才能とか、センスみたいなものってありますよね。それと、今の状況や時代が求めているものとの相性を考える必要があると思っていて。たとえすごいものを持っていたとしても、時代の流れと相性が悪い場合、なかなかうまくいかない。
どんな分野でも新しい流行の波が来たら、取り入れる前に自分との相性をチェックするのが大事だと思います。流行に合わせすぎちゃうと個性が死んでしまうので、そことのせめぎ合いみたいなものです。
流行を取り入れるときは、自分の個性に合うか吟味する
将棋の世界で新しい戦法が出てきたときなどもそうです。今後なにが流行りそうかとか、なにが駄目になりそうかとかは、常にアンテナを張り巡らせてチェックしています。もちろん流行りにまず乗っかってみることもあるのですが、自分に合わないと感じた場合、スタイルを崩してまで常にそれを追いかけていくことはしないです。
ファッションで例えると、「今年の秋は茶色が流行る」という情報があった場合、それに合わせるか、この色は着たくないので着ない、とかってありますよね。自分に似合わない色なのに、流行っているからといって無理に着ることはしないということです。そのあたりの兼ね合いを考えてやるのがいいのではないでしょうか。
そもそも自分の「個性」が見つからない人はどうする?
「個性を活かせと言われても、そもそも自分の個性がわからない」という人は、多様な経験をするとか、いろんな人に会うとか、幅広い世界を知ることに尽きると思います。
普通に生活していたらたぶん気が付かないので、いろいろな人に会ったり、普段なら手を出さないことをあえて経験してみたり、調べてみたりするといいですね。「自分ってこういうところが他の人と違うんだ」とか、「こういうところが得意なんだ」あるいは「不得意なんだ」といったことが、だんだん見えてくるんじゃないでしょうか。
情報化社会の今は、基礎的な知識の部分では差が付きづらい時代。さまざまな経験から自分の個性を見つけだし、時代の流れと自分の個性の相性をチェックしてみよう |
トップであり続けるためには、「個性と時代の流行りとの相性をチェックする」という、この先ずっと使える考え方を教えていただきました。いろいろな世界を知って、自然と個性を見つけながら、時代に求められているか確認する。これを学生のうちにやっておけると、社会人になってから悩んだり、不安に思ったりすることも少なくなりそうですね。
文・取材/砂流恵介
撮影/中邨誠
編集/学生の窓口編集部
▼羽生善治さんの回答をもっと読む!
羽生善治竜王のアドバイス一覧
▼その他のアドバイザーの回答を読む!
「大学生の相談窓口」TOP