ボイルドエッグズ新人賞受賞! 大注目の現役大学生作家・小嶋陽太郎さん「小説家になるしかなかった」

学生の窓口編集部

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「小嶋陽太郎」という作家を知っていますか? 『鴨川ホルモー』で有名な万城目学などの有力作家を輩出している「ボイルドエッグズ新人賞」を受賞し、三作目『おとめの流儀。』を2015年11月に発表した現在注目の現役大学生作家です。今回は、この小嶋陽太郎さんにお話を伺いました。

小嶋陽太郎さん最新作『おとめの流儀。』の作者紹介はこのようになっています。

小嶋陽太郎(こじま・ようたろう)
1991年長野県松本市生まれ。
信州大学人文学部在学中。
2014年『気障でけっこうです』(KADOKAWA)で
第16回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー。
第二作は15年『火星の話』(KADOKAWA)、本作が三作目となる。
端正な筆致と軽やかな感性で注目を集める現役大学生作家。

『おとめの流儀。』は、なぎなた部に入った中学生少女・さと子を主人公に彼女の一生懸命な姿を活写した作品です。近年まれに見る真っすぐな青春小説で、多くの識者から高く評価されています。

――小説家になろうといつごろから考えていましたか? またそのきっかけは?

小嶋さん 大学に入学してからバンドをやっていて、それはそれで楽しかったのですが、ひとりでできる活動を何かやってみようかなと思う時期がありました。二十歳くらいのときです。「日本語を知ってさえいれば書ける」という点でハードルが低いなと思い、小説を書き始めました。もともと言葉が好きというのもありましたし。

書き始めてすぐに就活シーズンになりました。でも、あまりにも「自分がどこかの企業に就職する」ということがイメージできなくて。うまく言えないのですが、就活をすることのモチベーションを自分の中に設定することがどうしてもできず、とにかく困ったなと思っていました。

合同説明会に行っても、受付に名前を書いただけで耐えられなくなって帰ってきてしまうというような状態で。そんな調子だったので就活は諦めることにして、となると残るのが小説くらいしかないので、自然に「小説家としてデビューするしか生きる道がないな……」とそのときは短絡的に考えていました。馬鹿みたいなんですが。

――なるほど。「第16回ボイルドエッグズ新人賞」を受賞されたのが2014年ですから、それまで約1年ほどですね。その間に書かれた小説はどんなものでしたか?

小嶋さん そうですね、例えば、僕は二十歳のころ電車に乗れなかったんですよ。それを小説にしたりだとか……。

――それは「乗ったことがなかった」という意味ですか?

小嶋さん ひとりで乗ったことがほぼなくて、本当に切符の買い方や乗り換えなどがわからなかったんです。で、その小説を『坊っちゃん文学賞』に応募して箸にも棒にも掛からなかったり、とか(笑)。

*記者注……小嶋さんは長野県松本市生まれで松本市育ち。信州大学人文学部は松本市にありますから、それまで特に電車移動をする必要がなかったようです。

――受賞までにどのくらいの小説を書きましたか?

小嶋さん 書き上げたという意味では、短編・中編・長編など3本ほどだと思います。

――その1年の経験で、すぐに賞を獲得されたというのはすごいですね。受賞したときはいかがでしたか?

小嶋さん 4年生の1月(卒業間近)になってから、実は卒業できない状態だという話を家族にしました。それまでにも何度か「おまえは卒業して就職する気あんのか? 将来どうするんだ」みたいなやり取りもありつつ……。

家族会議で、母、姉から就職するようにとさんざん怒られまして……。家族に「ごめんなさい留年させてください、就職のことは来年考えます」とかなんとか、正座して告白した翌日に「第16回ボイルドエッグズ新人賞」を受賞したという連絡の電話がかかってきました。

――それは劇的なタイミングでしたね。

小嶋さん その時点ではデビューできるかどうかもわからないので手放しで喜べるわけではなかったんですが、可能性が出てきたぞ、ということで、「ぎりぎり生き延びたな……」と思いましたね。

――現在も大学生でいらっしゃいますが、創作活動はどのように行っていますか?

小嶋さん 現在は仕事優先で大学は休学しています。

――卒業するぞ! というお気持ちは?

小嶋さん なんとか卒業したいです。が、現在はいただいた仕事であたふたしていて、僕のキャパシティだといま復学してもパンクしそうなので、どうしたものかと困ってます。

――執筆スタイルはどんな感じでしょうか?

小嶋さん 特に決まっていないですね。パソコンに向かっている時間でいえば1日最低7時間ぐらいはそうですが。やはり進むときと進まないときがあります。

――小嶋さんが好きな小説や小説家は?

小嶋さん 実は、僕はあまり本を読んでこなかったんです。家にある本を読んだりはしていましたが、積極的に自分から本を買って読んだりということはありませんでした。

小学校3年生のときに学校の図書館で発見して読んだ香月日輪さんの『地獄堂霊界通信』は大好きでした。印象的な読者体験で一番古いのはこの『地獄堂霊界通信』です。

高校のときは瀬尾まいこさんの作品ですね。瀬尾さんの作品は姉が文庫本を買って家にあったのでよく読んでいました。これも姉の影響ですが森見登美彦さんの作品、万城目学さんの作品も家にあったので、面白い!と思って読んでいました。

――小嶋さんの文体、文章のスタイルを評価する声がありますが、自分ではどう思われますか?

小嶋さん まず、読みやすいように意識しています。「凝った文章を書いてやろう」とかそういうことは、今のところは考えないようにしています。文章でいえば太宰治、村上春樹が好きです。

村上春樹はデビューしてからやっと読みだしたんですが、はまりました(実は5年くらい前に『海辺のカフカ』を少し読んで、こんなタフな15歳いねーだろ! と思って読めなかったという経験があったんですが)。村上文学は読んでいると、あのリズムが徐々に体を侵食してきて、如実に文体に影響を受けそうで、こわいです。恐れています。

――これからどんな小説を書きたいと思われますか?

小嶋さん まず現在『朝日中高生新聞』で『銀杏の木の下で』を、『別冊文藝春秋』という電子雑誌で『こちら文学少女になります』を連載しています。『銀杏の木の下で』は中学生の冒険で『ズッコケ三人組』のような話、『こちら文学少女になります』は漫画雑誌の新人女性編集者を主人公にした話です。

「これから先どんな小説を書きたいか」と言われたら……いろいろ書けたらいいなと思っています。「この人だったらこれだよね」と限定されない感じで書いていければいいですね。「確かに小嶋陽太郎が書いているのは分かるけど、毎回違う色があるな」と思ってもらえる、そういうふうになれたら、と思います。

――小嶋さんのように小説家になりたいと思う大学生はたくさんいると思うのですが、そういった人へ何かアドバイスはありますか。

小嶋さん 僕自身、いまのところ自分のことを「運よく何冊か本が出せたやつ」くらいにしか思っていないので偉そうなことは言えないんですが、ひとつだけ言えるとすれば、書いて応募することでしょうか。

当たり前なんですが。でも、「なりたいと思っているけど行動しない人」はたくさんいると思うので。作家になりたいのであれば、なりたいなと思ったり、誰かに「いま書いてるんだよ~」とか言ったりしている時間を書くことに充てて、小説を完成させることかなと思います。タイプによると思いますが、基本的には黙々とやったほうがいいんじゃないかなと。

――なるほど。

小嶋さん これも大学生の皆さんにアドバイスというより、自分に言い聞かせたいことですが、「自分の頭で考えて自分の言葉で話すこと」が重要だと思っています。他人(ひと)の考えを自分の考えのようにしゃべらない、というか。

そのときどきの環境や周囲の人間に影響を受けるのは悪いことじゃないと思うんですが、自分が見えなくならないようにしないとな、と。どこかで聞いた自分に都合のいい言葉を、自分の言葉としてしゃべることはしないように気をつけています。

具体的なことを言うと、たとえば就活をしないという選択をしたことに関して、「震災が起きて世の中が不安定だから、正社員であることに価値はない。だから就活なんかしてもしかたない」(当時そういう言葉をちょくちょく聞いたので)、とか、そういう意味ありそうで無意味な言葉で、就活から逃げた自分を正当化したりはしないように僕はしていました。

就職するかしないかは世の中の問題じゃなくて(もちろんそういう要素もあると思いますが)自分の問題だと思うので。僕は基本的に自信がないですが、「安定してお金をもらわないと生きていけないので就活したほうがいいとは思ったけど、どうしても耐えられないから別の道を探そう」と思っている自分の正直さには当時自信を持っていました。

どんな自信だよという感じですが。ともかく、言葉に責任を持ちたいので、自分で説明できないようなことは極力話さないようにしたいと思っています。気づくと無責任な言葉を話してしまうダメな部分が自分にもあるのを知っているからこそ、なんですが。

――ありがとうございました。

「自分の言葉で考えて決断をするのが大事」という小嶋さんの思いは、作中のキャラクターにも宿っているのではないでしょうか。小嶋さんの作品に爽やかな読後感があるのは、そのせいかもしれませんね。まだ小嶋さんの作品を読んだことのない人は、ぜひ手に取ってみてください。

(高橋モータース@dcp)

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