「十八女」「六月一日」記録にはあるけど実際には誰もいない名字「 幽霊名字」って何!?
日本にはさまざまな名字があります。一説によれば「十数万種類ある」とされています。このように日本は名字の種類のとても多い国ですが、この名字の中には実際には使われたことのないものもある、というのです。
■実際にはない「幽霊名字」があるはず!
『名字の謎 -その成り立ちから日本がわかる!』という名著の作者・森岡浩さんは、同書の中で実際にはそんな名字はないのに、ある(あった)とされる「幽霊名字」について言及されています。長いですが、その部分を引用してみましょう。
「名字にかぎらず、「ある」ことを証明するのは簡単です。実例を一つ示せばいいだけですから。でも「ない」ことを証明するのは大変困難です。とくに名字の場合は、全国一億二○○○万人の姓をすべてチェックしたが一軒もなかった、としなければならないので、現実にはまず不可能です。そのため、どこかで、誰かが誤った情報を一度流すと、それがどんどん孫引きされて、一人歩きします。
たとえば難読姓の辞典に「競」で「わたなべ」という名字が載っています。平安時代に「渡辺競」(わたなべ きおう)という人物がいます。このあたりから編集者(あるいはそのお手伝い)が「競」に「わたなべ」というふりがなを振って誤って収集してしまったのではないかと思いますが、編者に「自分は見た」といわれれば、反対証明は不可能です。他人が見た幽霊を第三者が否定することは困難なのと同じで、私はこれを「幽霊名字」と呼んでいます」(『名字の謎』森岡浩 新潮OH!文庫版・P.142-P.143より引用)
つまり、本当はない(なかった)「幽霊名字」が「ある(あった)」とカウントされることが、日本の名字の種類が膨大な数になっている理由の一つではないか、というわけです。
■「幽霊名字」と明らかなもの!
辞典や書籍で珍しい名字といって紹介されている中にも「幽霊名字」があります。明らかに幽霊名字と判明しているものを挙げてみましょう。
●十八女(さかり)
●六月一日(うりはり)
●十一月二十九日(つめづめ)
●春夏秋冬(ひととせ)
は実際にはないそうです。ただし、同じ日付系(?)の名字でも、
●四月一日(わたぬき)
●八月一日(ほずみ)
は存在するとのこと。
●子子子(こねし)
●子子子子(ねこじし)
は、あったら面白いのですが幽霊名字です。嵯峨天皇が出したクイズとされる「子子子子子子子子子子子子」(「ねこのここねこ、ししのここじし」と読む)から作られたものでしょうか。
ただし、珍しいからといって実在しないとならない点が名字の奥深いところです。
森岡先生は「結局、名字をみただけでは、幽霊名字と実在の名字の差は全くわかりません。もし、実在する名字かどうかは一目みればわかる、という人がいれば、その人は間違いなく超人です。私だって、いまだによくわかりませんから」とおっしゃっています(サイトより引用)。
より詳しいことを知りたい人は、ぜひ以下の森岡先生のサイト、また著作を参照してください。名字に関する面白い知識が満載ですから!
⇒姓氏研究家・森岡浩先生の運営するサイト『日本人の名字』
http://home.r01.itscom.net/morioka/myoji/index.html
⇒『名字の謎』(ちくま文庫)
http://www.amazon.co.jp/%E5%90%8D%E5%AD%97%E3%81%A...=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1444806734&sr=1-1&keywords=%E6%A3%AE%E5%B2%A1+%E6%B5%A9+%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E6%96%87%E5%BA%AB
⇒『名字の謎がわかる本 -あなたのルーツをたどる』(幻冬舎文庫)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/434440395...
(高橋モータース@dcp)