“デートDV”を教える中学校の授業を大学生が体験!性暴力から子どもたちを守る教育の最前線から学んだこと
こんにちは! ガクラボメンバーのあやのです。みなさんは、自分が性暴力の被害者や加害者にならないための教育について、知っていますか?
私は、性暴力や命に関わる相談を受けたときにどう対応していいか、正直わかりません。しかし、本イベントに参加したことで、困難に直面したときに一人で抱え込まず、支援を求める大切さを知ることができました。
本記事では、主なプログラムの内容の紹介に加え、今回の取材を通して私が感じたことをレポートしたいと思います。
未来を選べる社会へ―SRHRとは?
2025年9月12日、東京ミッドタウンで「命と心をまなぶ、学校から社会へ:生命(いのち)の安全教育の最前線と未来」が開催されました。このイベントを主催したプラン・インターナショナルは世界80カ国以上で活動している国際NGOであり、女の子をはじめとする、誰もが差別されない平等で公正な社会をめざしています。当日は教育や福祉、医療、自治体関係者など多くの人が参加し、定員80名の会場は満席になっていました(別途、オンライン参加もあり)。
今回の勉強会のテーマとなっている「生命(いのち)の安全教育」とは、子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、文部科学省が全国の学校で推進している取り組みです。生命の尊さを学ぶとともに、性暴力の根底にある誤った認識や行動、性暴力が及ぼす影響などに対する正しい理解を促し、生命を大切にする考えのほか、自分や相手、一人ひとりを尊重することを学ぶ重要な教育と位置付けられています。
その中でキーワードになってくるのが「SRHR」です。SRHRとは、Sexual and Reproductive Health and Rights、「性と生殖に関する健康と権利」のこと。これは「自分の身体と人生を、自分で決めるための基本的な権利」と言うこともできます。特に若者にとっては、自分らしい生き方を選ぶ力の源となるものであり、「SRHRは未来を切り拓く土台」なのです。
SRHRについて、詳しくはこちら
自分を大切にすることから始まる受援力
孤独・孤立と命を守る施策/辻由起子さん(こども家庭庁参与)
基調講演を行ったのは、こども家庭庁参与の辻由起子さん。辻さんは23歳でシングルマザーとなり、一時、子どもへの虐待を行ってしまったという経験を持ちます。講演では、他者に助けを求め、快くサポートを受け止める力「受援力」を育む大切さを強く訴えました。
特に「自分を大切にできるから相手を大切にできる」「失敗はない 経験が増えるだけ」「正しい知識は自分と相手を守ってくれる」「勉強はなりたい自分になるそのための手段」という言葉が印象に残っています。
私自身も小学生の時に不登校になってしまい自分がとても嫌いになってしまった経験があります。知識がなかったため、誰に助けを求めたらいいのか、誰を信頼したらいいのかわからなくなってしまいました。当時、この言葉に出会っていたら、自分を大切にして前をもっと向けたかも!と感じました。
漫画で学ぶ『生きる』教育 ― デートDV防止と恋愛9ヶ条
授業体験ワークショップ:「『生きる』教育」を“体感”する――「『生きる』教育」の意義と可能性――/田中梓さん(大阪市立田島南中学校養護教諭)、西岡加名恵さん(京都大学大学院教育学研究科教授)
続いてのプログラムは、実際に学校で行われている授業を体験するワークショップ。はじめに、京都大学大学院教育学研究科教授の西岡加名恵さんが、大阪市にある田島南小中一貫校で行われている「『生きる』教育」について紹介したのち、同中学校で養護教諭を務める田中梓さんが登壇し、授業体験ワークショップが実施されました(※1)。
授業のテーマは「デートDV」。これは同中学校2年生が受けているものと同様の内容です。教材も実際に中学校で使われている漫画を使用し、参加者はシーンごとにDVの種類を分類したり、なぜ被害者は加害者から逃げられないのか、といったことを議論したり、DVに関する法律を学んだりしました。
漫画を用いることで、具体的な場面が描かれているため、文章のみと比べて状況が想像しやすく、小学生や中学生でも楽しみながら学ぶことができると強く思いました。
最後には、各チームで1つずつ条文を考え、「恋愛9ヶ条」を作成しました。この9ヶ条にデートDVにならないための気づきが書かれているので日常でも大切にしていきます。
※1「『生きる』教育」は、文部科学省の「生命(いのち)の安全教育」に先立ち、2016年に大阪市立生野南小学校(現・田島南小中一貫校)で誕生した教育プログラム。2022年に田島南小中一貫校に統合された後も実践されており、9年間を通したプログラムが組まれている。たとえば、小1ではプライべーとゾーン、小3では子どもの権利条約、小5ではデートDVについて学ぶ。
「生命(いのち)の安全教育」の広がりが進む
『生命(いのち)の安全教育』の取組と現状の整理/中園和貴さん(文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長)
続いて、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長の中園和貴さんが「『生命(いのち)の安全教育』の取組と現状の整理」と題し、講演しました。背景として、2017年の性犯罪に関する刑法改正をきっかけに、子どもへの教育の必要性が議論されたこと、その後、2020年に「性犯罪・性暴力対策の強化方針」がまとめられ、その中に「生命(いのち命)の安全教育」が盛り込まれたことがあります。これを受けて2021年に内閣府と文部科学省が連携し、「生命(いのち)の安全教育」の教材および指導の手引きを作成・公表、年齢に応じた教材を整備し、学校現場での普及を進めてきました。
各段階の教材の主な内容としては、
幼児期:プライベートゾーン
小学校:プライベートゾーン、SNSを使うときの注意点(高学年)
中学校:相手との距離感、性暴力(デートDVなどの例)
高校:相手との距離感、性暴力(デートDV、セクシュアルハラスメントなどの例)
となっています。
私は、この取り組みが子どもたちの「生きる力」を育む「安全教育」(※2)のひとつとして捉えられていることは大変意義深いと感じました。性犯罪や性暴力の知識の伝達にとどまらず、社会で安心して生きるための力につなげるという視点は、ますます重要になると思います。
※2 文部科学省は、子どもたちが生涯にわたって健康、安全、幸福な生活を送るための基礎を培うこと、安全で安心な社会づくりに貢献できる資質・能力を育てることを目的とし、「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」を2001年に作成している。(2010年、2019年に改訂)
プレコンセプションケアが支えるライフデザインとウェルビーイング
京都府におけるプレコンセプションケアの取組/池田裕美枝さん(産婦人科医・一般社団法人SRHR Japan代表理事)、東江赳欣さん(前 京都府健康福祉部副部長)
プレコンセプションケアという言葉をみなさんは聞いたことがありますか? これは性別を問わず、適切な時期に、性や健康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)を考えて健康管理を行う概念です。
京都府ではSRHRをベースにした「きょうとプレコン」に取り組んでいます。これは「産めよ殖やせよ」といった特定の価値観の押し付けではなく、府民一人ひとりが自分が望む生き方(ウェルビーイング)を実現できることを目指しています。
妊娠に関する科学的知識を身に付ける、若い時から自身のライフデザインを考える、婦人科・泌尿器科の受診への心理的ハードルを下げる、SRHRの考え方を普及する、という4つをポイントに、現在、高校生を対象としたプレコンセプションケアに関する教育プログラムの実施や、広報啓発活動のほか今年の7月からは「きょうと妊娠から子育てのSNS相談」「きょうと妊娠SOS」をスタートさせています。
プレコンセプションという言葉はまだ広く浸透しているとは言えませんが、その概念が単に妊娠や出産の準備にとどまらず、ライフデザイン全体を支える考え方であることが理解できました。特定の価値観を押し付けるのではなく、一人ひとりの権利や選択を尊重しながら、科学的知識を持ったうえで自分らしい生き方を描いていくことが大切だという点に共感します。プレコンセプションケアの普及に終わらず、ウェルビーイングの実現に直結する取り組みであって、社会全体にとって重要だということを考えさせられました。
性的同意を考える―バウンダリーの大切さ
性的同意をどう教えるべきか/一般社団法人Spring
性的同意をどう教えるべきかというテーマでは、日本で初めて法人化された性暴力被害当事者団体である一般社団法人Springが登壇。前半の講演では、「相手の同意のない状態で一方的に性的な行為をすることは性暴力」であること、さらに、バウンダリー(境界線)の大切さを伝えていました。バウンダリー(境界線)とは自分と他者を区別する境界線のことです。自分にも他者にもバウンダリーがあり、それらは身体的だけでなく心理的なものにも存在し、相手との関係性や状況によって常に変化していくといいます。
後半の事例検討ではモデルケースをもとに、「同意は成立しているか」、「どのように子どもたちへ伝えたら良いのか」をテーマに、当事者、性的同意について教える立場、観察・フィードバックという3つ視点から、グループで話し合いを行いました。
本プログラムを通じて、性的同意をどう教えるかというテーマが、想像以上に複雑で重要な課題であると感じました。特に「相手の同意のない状態で一方的に性的行為をすることは性暴力である」というシンプルな言葉が、とても強く心に残りました。
バウンダリーという考え方も印象的でした。身体的な距離だけでなく、心理的なバウンダリーもあり、関係性や状況によって変化するという点は、自分自身の人間関係を考える上でも大切な視点だと思います。
グループでの事例検討では、どう子どもたちに伝えるかを考えることで、自分自身もより具体的に理解が深まりました。性教育は知識を与えるだけでなく、対話や事例を通じて考え続けるプロセスが必要なのだと実感しました。
一人で抱え込まないための学び ― 命と心を守る教育を通じて
今回の勉強会を通して、命と心を守る教育は一人ひとりの生き方を支える大切な基盤だと強く感じました。どの講演やワークショップでも共通していたのは、「正しい知識を持つこと」「自分も相手も大切にすること」「困ったときに助けを求めること」の大切さです。
私はこれまで、性や心の問題は「経験したことがある人だけが理解しているもの」だと思っていました。しかし実際は、誰もが直面する可能性があり、正しい知識を学ぶことで初めて自分や周りを守ることができるのだと実感しました。
特に「受援力」や「バウンダリー」という言葉は、自分自身の不登校の経験とも重なり心に深く残りました。今後は私自身も、一人で抱え込まずに声をあげられる人になりたいですし、周りが助けを求めてきたときにきちんと受け止められる存在でありたいと思います。
この学びを通じて、「未来を選べることがあたりまえの社会」を実現するために、まずは大学や家族など身近なところから正しい知識を広めたり、対話を続けたりしていきたいです。
文:あやの(ガクラボ所属)
編集:学生の窓口編集部
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