トラウマの克服で大切なポイント!家が必ずしも“安全な場所”とは限らない?『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』#Z世代pickブック
こんにちは! Z世代ブックピッカーのひっき(出版甲子園実行委員会所属)です。
私たちの周囲には心理学の用語であふれています。例えば、心の安定を脅かす出来事によって引き起こされる「トラウマ」……多くの人が深刻さを理解しているのではないでしょうか。では心の傷はどのように克服していくのでしょう?
今回は、トラウマのケアの中でも第一段階となる「環境の調整」について、公認心理師・みき いちたろう氏の著書『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)よりお届けします。
トラウマ克服|環境を調整する
トラウマを負うことで生じるのが安心・安全感の欠如です。非常事態モードで常に身近に危機があると感じています。危険な環境に自分があるという感覚があるのです。
環境とは、外的な環境(職場、学校、家庭の人間関係など)、内的な環境(心身のコンディション)とに大きく分けられます。内的な環境の不安定さは、外的な環境の質も投影されています。安心・安全を回復するためには、環境の基盤となる安心・安全感を少しずつでも改善することが必要です。
外的な環境を見直す
そのためにはまず現在の外的な環境を調整することから始めます。でもなぜ、安心・安全感を改善するのに、過去の記憶の処理や内的環境の改善ではなく、外的な環境調整から始めるのでしょうか?
それは、トラウマは、しばしば現在の外的環境において継続、もしくは再生産されているからです。そして、直接的に関与可能な現在の環境を変えることがストレス源を除くことにとどまらず、コントロール可能性、自己効力感を取り戻すことにもつながります。現在の外的な環境を変えることは内的な環境の改善にもフィードバックされていきます。
外的な環境としては、理不尽な関係が続いているケース、特にトラウマの原因となった家族と密な関係を継続していることも少なくありません。あるいは、職場や学校、サークルなどストレスフルな環境にい続けてしまっているケースなどがあります。
もし、現在の人間関係や職場があまりにも自分にストレスがかかる環境であるならば、環境を選び直すこと、そこからは距離を取ることが必要です。
トラウマを負っている人は、「厳しい環境で頑張らなければならない。逃げてはいけない」という呪縛に陥っていることが珍しくありません。理不尽な環境を乗り越えよう、理不尽な人から認められようと頑張ってしまうのです。しかし、場合によっては、関係を持たないようにすることや転居、転職なども必要です。
本来、愛着が安定していれば、あまりにもひどい環境や人からは自然と距離を取るようになります。ですから、環境調整には安定した健全な愛着スタイルをモデリングする効果があります。理不尽な環境を実際に見直すことを通じて安心・安全感の回復を図ることができるのです。
家は必ずしも安全基地ではない
私たちは「家は落ち着く場所」「家は安全地帯」と素朴に感じています。しかし、それは大きな間違いです。家は不安と焦燥を感じる空間であることが少なくありません。
物理的にハラスメント、ストレスの原因となっている人物と同居している場合はもちろんですが、ひとり暮らしであっても同様です。家の中にいると、悶々と過去の嫌な出来事を思い出し、将来の不安を感じる、ストレスのかかる状況について頭の中でシミュレーションを繰り返す、などはよくあります。
近年は、スマートウォッチが普及して、心拍数などを簡単に計測できるようになりました。以前、私のクライアントがスマートウォッチを用いて実際にリラックスしている状態を調べてみました。すると家の中が一番緊張していた、と報告してくださったことがあります。意外にも、リラックスしていたのは、家の外で利害のない人間関係の中にいるときだったというのです。
多くの場合、家とは一時の休息場所ではあっても安全基地ではありません。実は、真に安心・安全な環境とは社会にこそ存在しています。安心・安全を保つためには適度に外出をして人と接することが必要です。
環境調整とは自分を大切にすること
環境調整というと、表面的には外的な条件を変えることですが、その本質は、「自分を大切にすること」です。「自分を大切にする」という視点があれば、環境は自然に選択されていくものです。慢性的に環境がおかしいという場合には、そんな当たり前のことが欠けています。もちろん、当事者の責任ではなく、理不尽な環境によって当たり前のことが奪われてきたためです。
対人関係においても過去のトラウマを再現するかのように、自分を大切にしない、自分をないがしろにする人との関係を続けていることが珍しくありません。自分に厳しく、批判的、感情的であることが自分への愛情であると歪いびつに捉えていることもよくあります。
好意的な相手には好意を示す、嫌いな相手には否定的な意思表示をする、とシンプルにやり取りを行うのが健康的な人間観です。トラウマを負っていると人間関係の捉え方もねじれてしまうのです。
環境調整とは、そんな対人関係を調整することでもあります。人と接する際にも「私を大切にしてくれていますか?」と心の中で相手に問うことです。これは、無意識の免疫のように作用して、自分を大切にしない人を遠ざける効果があります。自分でもおかしな関係に気づくきっかけとなります。
このように環境調整の際は、「自分を大切にする」という視点をもとに取り組むことがポイントです。
Z世代ブックピッカーのレビューコメント
安心・安全を回復するためには環境調整が重要であり、自分を守ることに繋がるのだと知ることができました。私自身も不安を感じるとき、その原因を自分に向けがちでしたが、家にこもって一人で悶々と考え続けるこが多かったからでは?と感じました。実体験を思い返してみても、一人で考え続けて解決しない問題も、誰かに話すと驚くほどあっさり解決策が見つかったこともありました。特に人間関係で悩んだときはインドアになりがちですが、だからこそ外部の環境にもっと目を向けてみたいと思いました。
『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』
著者:みき いちたろう 発売:2023年2月17日 定価:1,320円 (税込み)
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
詳細ページ:https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2934-4
書籍レビュー:
読み終わる頃には、今までうまく言語化できなかった不安な感情が何だったのか気付けるようになると思います。「自分を大切にすること」は当たり前にすべきことなのに、意外とできていなかったことに気付かされました。また、人を尊重するためには、その人のことを受け入れることから始めますが、自分の想像の及ばない人に出会ったとき、「何かしらの生きづらさを感じているのではないか」と想像を働かせ、受け入れ、尊重できるようになれたら良いなと思いました。




























