【第36回プリコン 学生映像制作プロジェクト優秀賞受賞!】東北芸術工科大学の『あいまい』撮影現場に取材に行ってみた! #プリコン
「マイナビ学生の窓口」と「プリ小説」の共同コンテストである“ショートドラマ原案募集コンテスト”においてグランプリを獲得した現役学生の重茂わらび著『あいまい』。
さらにグランプリ作品の映像化を行うにあたり、原案小説を元に作成したショートドラマの脚本を現役の学生さんから募集。
今回は多くの応募作品がある中で、見事優秀賞に選ばれ撮影クルーとして選ばれた東北芸術工科大学の佐藤理乃香さんが率いるチームの撮影現場に取材に行きました!!
\こちらの2名にお話をお伺いしました/
佐藤理乃香さん
東北芸術工科大学 デザイン工学部 映像学科2年
「第36回プリコン 学生映像制作プロジェクト」にて優秀賞を受賞。プリ小説ショートドラマ『あいまい』にて、脚本及び初監督を務める。
吉川啓太さん
映画監督・映像ディレクター/Film director
武蔵野美術大学大学院造形構想研究科修了
大学2年の時に実写映画に興味を持ち、映画の自主制作を開始。
「トラベルノート」が、TikTok×TOHO Film Festival 2021でグランプリを受賞。その後、浜辺美波さん主演の縦型連続ショートフィルム『夏、ふたり』を監督。
プリ小説ショートドラマ『あいまい』にて、制作時のアドバイザーを務める。
自身の脚本で初監督に挑戦する思い
まずはこのアワードを振り返ってもらいつつ、感想を伺いたいと思います。
ーー改めて、『第36回プリコン 学生映像制作プロジェクト』優秀賞おめでとうございます!今回のプロジェクトにご応募いただいた理由を教えてください!

東北芸術工科大学 佐藤理乃香さん
佐藤さん:わたしは大学1年生から脚本を書いて学内コンテストに挑戦していたのですが、なかなか結果が出せずにいました。そんな中、2年生になるタイミングで『なんとか自分の脚本を映像化し、学外へ発信していきたい』という思いがより強まっていました。そんな時に登竜門を見て、映像化募集を知ったんです。
もし、脚本が通ったら外部の方と関わりながら、自分の初監督作品を一緒に世の中に出すチャンスになるのではないかなと思い、私の中では初めての挑戦でしたが、思い切って応募を決意しました。
ただ、まさか本当に自分の脚本が採用されるとは思っていなかったので、優秀賞をいただいたときは正直かなり驚きました(笑)
ーーお2人は、原案小説『あいまい』を最初に読まれたときは、どんな印象を持たれましたか?
左から東北芸術工科大学 佐藤理乃香さん、映画監督・映像ディレクター 吉川啓太さん
佐藤さん:まず最初に読んだ感想としては、原案自体が「大学生の恋」をテーマとしていたため、主人公(日奈)の気持ちがすごくわかるなという印象をもちました。
ただ、映像化をするにあたっては率直な意見で難しそうだなと思いました。 恋愛ものは一般的に両者の目線で描かれることが多いと思うのですが、今回は主人公(日奈)の目線でしか描かれておらず。小説の場合は、文字なので情感を豊かに書くことで読者の想像を膨らませることができると思うのですが、映像化した場合、「なんで付き合ったのかな?」というシンプルな疑問ももちろん、すごくいい言葉で言い尽くされているこの感情を一体どのように書いたらいいんだろうか?という点で悩みましたね。
吉川さん:原案を読んだ感想としては、それぞれの思いが交錯する部分や、言葉にしても伝わらない感じがリアルで、感情が大切にされている作品だなと思いました。同時に、佐藤さんも仰っていましたが、すごく大学生の恋愛って感じがしていいなと素直に思いましたね。
また映像化を行うことを考えた際、今回主人公(日奈)からの一方通行の視点のため、見せ方によっては感情の押し付けにもなりかねない。やり取りが少ないからこそ、そうならないようにする境目を探すのが難しいだろうなと。先輩においても、やり取りがあまりできず、受け取る事しかできないキャラクター像を作るのは恋愛ジャンルにおいて難しいなと思いました。
ーー佐藤さんは原案小説を元に脚本を作成するにあたって、どのような点を意識されましたか?
佐藤さん:原案は、主人公(日奈)の目線でずっと描かれていたのですが、いざ先輩が全部悪かったのかというと私はそう思わなかったんです。 実際の恋愛も多分どっちかが絶対悪いとかではなく、少しずつの思いや考え方のすれ違いで、どんどん距離が離れていってしまうのかなと思っています。
そのため、今回の脚本で意識したのは、主人公(日奈)の目線で基本的には書きつつ、主人公(日奈)が全部100%正しかったわけでも間違っているわけでもなかった。先輩も主人公(日奈)から見たような100%キラキラの王子様というわけでもなかった。結局、両者等身大の人間だったよねという部分を伝えるために、そこは特に意識しました。
どちらも良くないところがあって、でもどちらもいい意味で人間臭いところがあるなっていうところに、原案よりは多少シフトしたのかなと思っています。
ーー吉川さんは脚本にどのような印象を持たれましたか?また、どのような点に注意して改善に向けたアドバイスをされましたか?
吉川さん:優秀賞受賞の際もコメントさせて頂いたのですが、セリフとモノローグ*のバランスがうまいなと思いました。
脚本修正において注意した点としては、キーとなるアイテムが今回たくさんあるのですが、それをちゃんと後になって結び付けられるように、主人公(日奈)や先輩を思い出させてくれる一部になるようにという点は、意識してアドバイスさせていただきました。
*モノローグ
映画や演劇などにおける演出手法。登場人物が誰に向けて話すでもなく、自らの心境などを吐露すること。「心の声」と呼ばれることもある。
ーー本作は吉川監督に監修を頂きましたが、佐藤さんは普段からプロの方に監修を頂くことってあるんですか?
佐藤さん:座学では、常に各本職の方に来ていただいて、授業を受ける機会はあります。ただ今回のように実際に自主制作に入っていただくということはかなり珍しいと思います。現場に入って指導頂くのは、ほんとうに教授ぐらいですね。
撮影(取材)当日の様子や苦労したこと
ーー吉川監督は学生さんの撮影だったり脚本監修を行う機会って普段からありますか?プロと学生さんの現場の違いももしあれば教えてください。
吉川さん:学生さんの現場監督や監修の機会は、今はないですね。
プロとの違いと言えるかはわからないのですが、学生さんが制作する映画にプロデューサーがいるのはすごいなと思いました! 自分もそういう映像制作系の学科ではありましたが、プロデューサーはいなかったですし、普通はなかなかいないイメージです。
ーー実際に吉川監督に現場に入ってもらっていかがでしたか?
佐藤さん:今回ジンバル*を使用したのですが、学科の機材貸出し管理の方が、「せっかく新しく入れたのに誰も使ってくれない」と言われるほどジンバルについて教わる機会がなく、わたしたち含め多くの在校生が使い方がわからない持てあましていた機材だったんです。

*ジンバル
軸基点で物体を回転させる台のこと。カメラやスマートフォンで動画を撮影する時に、手ブレを補正する機材であり、台を回転させることによって、常にカメラを垂直・水平の状態に保つ。
吉川さん:ええ! そうなんですね!
佐藤さん:その機材を、たまたま吉川さんがいらっしゃるタイミングで持ち出してきて、2、3年生のスタッフに教えて頂けたことが、かなり有意義な時間でしたね!
映像制作の学生チームメンバーと吉川啓太さんの打ち解け合う様子
あとは、音声トラブルがあったのですが、その時も、すごい親身になって聞いていただいたっていうのが印象的です。チームメンバーは人見知りな子が多いのですが、「ああすごい、やっぱり本職の方だ! 」という感動とともに、その後もわからないことを吉川さんに聞けるということでいつもより安心感がありましたね。
吉川さん:よかったです、仲間に入れてもらって(笑)
ーー吉川さんは学生さんの現場に立ち会ってみていかがでしたか?
吉川さん:あまり佐藤さんに監督としてのアドバイスができなかったのは、申し訳ないなって思っています。ただ、いつもやっている仲間ってそれぞれのやり方があるので、いきなり来た人間が口を出しても良くなるとも限らないかなと思っており、僕自身が学んできた技術的な部分をお話できたかなと思います。
また、現場に入った瞬間からチームワークの良さを感じていたのですが、それに加えて、全員が的確に一歩先のことを考えて動いていた印象がありました。それって大人でもなかなか自然に実践するのは難しいことだと思うので、すごいなと思いました。

ーー実際撮影を行って、つまづいた点や苦労した点などはありますか?
佐藤さん:1番大変なのは、なんだかんだ家の許可取りです。
吉川さん:いや~わかります。人の家を借りるのって大変ですよね。
佐藤さん:大学内で撮影できるところは問題ないのですが、道路を塞ぐシーンなどがどうしても出てくる際、警察署に行かないといけなかったり、家だと不動産屋さんに連絡を入れなきゃいけなくて...。セットが予め組まれている貸しスタジオは学生だと高すぎて、借りることができないんです。
吉川さん:不動産屋にまで連絡入れているのは丁寧ですね。自分も学生のときは、友人の家で撮影をしていました。
佐藤さん:そうですね。騒音トラブルとかに発展してしまうと、退去になりかねないです。常識的な意味という点ではもちろんですが、本音は大学生の退去はかなり痛いというところがあります(笑)また、今回は登場人物が大学生ということもあったので、学生が実際に住んでいる家を使ったほうがリアリティが出ていいかなと思ったのも理由の一つです。
ただ、とにかくその許可取りが本当に大変です(笑)
それ以外だとスケジュールですね。天候などに左右されたりすることもありますし、大学内で突然工事が始まったりすることもあります。スケジュール通りにいかないことも多くあるので、そこは臨機応変になんとか対応しています。
ーー今回の映像化にあたって、一番見て欲しいポイントとか思いはありますか?
吉川さん:主人公(日奈)の心情をかなり丁寧に描いていると思います。
原案ももちろん、登場人物、現場の仲間などいろんなことを大切にしながら作っているのも見どころです。
映画で賞を撮りたいという熱意みたいなのも感じ取ってもらえるんじゃないかなと思うので、そのあたりを楽しんで見てもらえたらなと思います。
佐藤さん:今回、元々原案の中で「キーアイテム」があるんですが、わたしはそれのイメージや色だったり、主人公の個性を汲んでいるつもりです。伏線を張ったりしているので、学生が作った拙いものではあるのですが、そういった部分に着目してもらえると嬉しいなと思います。