【男性作家史上最年少で直木賞を受賞!】作家・朝井リョウが語る出版業界の課題と現代における読書の価値 #2 ~出版甲子園による独占インタビュー~
大学在学中のデビュー以来、その豊かな想像力で読者の心を掴んできた作家、朝井リョウさん。今回は、出版甲子園がこの夏発行したフリーペーパー「SHIORI」に掲載の朝井さん独占インタビューを3回連続で公開!「本」を通して、さまざまな面からその内面を掘り下げました。
▼1回目のインタビュー
【男性作家では史上最年少で直木賞を受賞!】
作家・朝井リョウ「学生っていう肩書きでできることは、全部やらないともったいない」 #1
~出版甲子園による独占インタビュー~
読書は、オリジナルの優しさを育ててくれる
——昨今の出版業界に関して、例えば本の売り上げがだんだん減っていると言われていますが、それについてはどのように考えていますか。
朝井:大前提として悲しいし寂しいことだと思いつつ、書店に限らず、店舗と在庫ありきの売り方と、“全てを手に入れるために全額払うか、0円で何にも手に入れられないか”という二択の支払い方法しかないという点が、今の世の中と合致しなくなっているのかな、とも思います。個人的に、活字自体からは人間や若者が離れているわけではないと思うんです。なんだかんだ皆さんSNSでの投稿や歌詞や、何かを言葉で表現するっていうことは好きなままだと思う。ただ1冊二千円近くする本を本として手に取るっていう行為に対しては距離があるのかなと思っているので、活字欲のグラデーションの部分を逃さないスキームが今後必要なのかなと思ったりします。
あとやっぱり、紙の本はかなりの数が処分されてしまう現実があって、構造として考えると環境的にどうなのか、という点も気になります。せっかく手に取るものならば環境にいいものにしたいという考え方は、特に大学生世代の方には浸透していると思うので、それぞれが抱える本への距離感や活字欲の程度に合わせて、紙の本を消費することに対する罪悪感がもっと少ない状態で手に取ることができればいいのかな、と考えています。
——そういう意味では、電子書籍なんかもありますね。
朝井:そうですね。そこに関しては、日本の出版社が横断的に手を組んで、今でいうKindleのようなものを作れていたらな、と思ってしまいます。テレビでいうTVerみたいなサービスですよね。今は海外製のツールに頼っているので、そのぶん定価が上がってしまっていると思います。電子書籍に関しては紙の本に比べて制作や物流にコストがかかっていないのにほぼ紙の本と同じ値段なのはおかしいと思うし、作家に入ってくるパーセントも正直しっかり理解できていない部分があります。私自身もそのあたり曖昧なままなので、書き手側がもっと理解して提言していかないと、とも思います。
——電子書籍やオーディブルといったサービスもある中で、それでも本屋さんで本を手に取ってほしいなという思いはあるんでしょうか。
もちろん私自身書店が身近な存在だったので絶対になくなってほしくはないです。行けばジャンル問わず沢山の書籍があるというのはその地域にとって非常に重要な空間だと思います。ただ、何かのトラブルでデータが消えてしまわないとか、付箋を貼れるとか書き込めるとか、人にプレゼントするときにより“プレゼントらしさ”が出るとか、そういうこと以外に絶対に紙の本じゃなきゃダメな理由を挙げられるかと言われると難しいです。また、私自身 CDショップがなくなってほしいわけではないけれど音楽はサブスクで聴いているので、書店のために紙の本を買ってくださいと声を大にして言いづらいところもあります。本の種類によってはオーディブルも利用していますし、書店や紙の書籍は大好きなんですけど、利便性を重視している自分もいるんです。
それに、沢山本を読むことがいいことだという空気も、それは大前提として今私たちが主に言葉でコミュニケーションをとっているから、ですよね。今後、頭の中で思い描いた映像がパッとそのまま他人の頭の中に転送できるようになったら、本を読みましょうという呼びかけは一気に減ってしまう気がします。今私たちが大切だと感じていることって、結局コミュニケーションの主体が何なのかということに左右されている可能性が大きいのかな、と。
ただ今は言語コミュニケーションがメインなので、やっぱり言葉の選択肢をひとつでも多く持つことは自分を守ることに繋がると思います。例えばすごく理不尽な目にあったとして、それを他者に理解してもらう必要があるとき、つまり1.5じゃなくて1.49を相手に伝えなければならないような瞬間って、誰だって出くわすと思うんです。その時に言葉の選択肢が多いに越したことはない。活字に触れることは最終的に自分を守ることにも繋がると思います。
また、いろんな本を読むと、自分とは違う考え方や背景を持つ人の文章にたくさん触れることになります。そうすると、他者への想像力が身について、優しさとして花開くときがあります。読書はオリジナルの優しさを育ててくれるものだとも思います。
朝井リョウ(あさい・りょう)/岐阜県生まれ。小説家。『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。『何者』で第148回直木賞、『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞、『正欲』で第34回柴田錬三郎賞を受賞。最新刊は10月発売予定の『生殖記』(小学館)。























