【投資の知識】「いい投資ポートフォリオ」って何? #もやもや解決ゼミ
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最近は、若い人でも金融リテラシーが上がっています。大学生読者の皆さんの中にも投資を始めよう!という人がいらっしゃるでしょう。
「投資はポートフォリオが大事」とよくいわれます。聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。では、この「ポートフォリオ」とは一体何なのでしょうか。
今回は、カオス理論の専門家で、世界でも他に類を見ない独創的なアプローチで、市場がいか動くのか、そのメカニズムとは何かを研究されている『京都大学大学院情報学研究科』の梅野健教授に答えていただきました。
梅野先生は、2023年10月31日、国際学術誌『Applied Economics Letters』に「Fractal portfolio strategies: does scale preference of investors matter?(フラクタル・ポートフォリオ戦略:投資家の関心の大きさは重要か?)」という論文を発表されました。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13504851.2023.2274298

「ポートフォリオ」って何?
「ポートフォリオ」というのは、投資の世界だけではなく、一般にも使われる言葉です。
「ポートフォリオがない」というと、一つの選択肢しかないということで、金融の世界では投資先が一つしかないことになります。
ポートフォリオがないとなると、例えば今戦争が行われているので金(Gold)に投資しようとか、(資金の)全額を金に投入するのです。
ただ、それだと金の価格が下がって株価が上がったときなどに対応できません。なので、株式にも投資しておこう――となって、資金の投資先が複数に分かれることになります。
例えば4:6で資金を別々のものに投資するとかするわけです。
こういった複数の投資さんに投資する組み合わせのことを「ポートフォリオ」といいます。
戦略として、株と債券に分散投資するというのはよくある話です。
一般的には、金利が上がると株価は下がります。株価が下がる局面では債券の価格が上昇します。
ですので、金利が上がる状況に備えて、株式だけではなくて債券にも投資しておくのです。この場合には、株式と債券の両方を保有するというポートフォリオになります。
市場の有名なことわざに「卵を一つのかごに盛るな」というものがあります。これはまさにポートフォリオのことをいっていて、資金を一つの資産に投資するのではなく、ポートフォリオを組みなさいというわけです。
問題は、ポートフォリオをどのように組むかで、それは資金を投入する資産にリスクがどの程度あるのかによります。
金融の世界には、ポートフォリオ理論というものがあって、それぞれの資産のリスクを計算して、できるだけ損失が出ないように、できるだけ利益が出るように、ポートフォリオを組むのです。
今回私が発表した(上掲)のは、これまでの標準ポートフォリオ理論よりも、もっといいやり方があるよ――というものです。
それを示すと同時に、金融機関さん(メガバンク)と一緒に米国債、米国株式を組み合わせ、より良いと思われるポートフォリオを実際に組んで、バックテストもしてみました。
その結果、これまで使われていたポートフォリオ理論よりも正しくリスクを評価できることが分かりました。
ドローダウンを最小にできるのが良いポートフォリオ
上記のとおり、投資先の組み合わせを一般的にポートフォリオといいますが、これはリスクが的確に評価できているものでなければなりません。
例えば、リーマンショックのような暴落が起こると、市場は大きく下がります。投資した資産も減ってしまいます。
この下げ幅のことを「ドローダウン」といいますが、ドローダウンはリスクを評価する上でのよい指標になります。
ドローダウンが大きくなったとしても、それをできるだけ小さくすることができる長期的なポートフォリオは良いポートフォリオと考えていいでしょう。
「市場のフラクタル性」こそがキーである
毎日多くの人が、毎秒、それよりも短い時間に大量の取引を行っており、それがチャートになって表れるのですが、チャートにはフラクタル性があります。それが理解の大本です。
私が研究しているカオス理論は、市場のフラクタル性の理解につながっています。私は「カオス的市場仮説」と呼んでいますが、市場の動きは完全な無相関ではなく、背後にはそれを決定しているメカニズム(相関)があり、それはカオス理論によって説明できるのではないか、と考えています。

◇けつろん!
「ポートフォリオ」というのは、資金を投入する先を複数にしてその投資先の組み合わせのことです。また、いいポートフォリオというのは、できるだけリスクを小さくしながら長期的に利益を上げられるもの、なのです。
◇教えてくれた先生
梅野健
Profile
『京都大学大学院情報学研究科』教授。理学博士。
1995年 『理化学研究所』基礎科学特別研究員
1998年 『郵政省』通信総合研究所、 郵政技官
2000年 『科学技術振興事業団』プレベンチャー事業、研究代表者
2001年 『総務省』通信総合研究所(CRL)、主任研究官
同年 『独立行政法人 通信総合研究所』 主任研究員
2003年『株式会社カオスウェア』代表取締役
2001~2004年『独立行政法人通信総合研究所(CRL)』主任研究員
2008~2012年『津田塾大学』情報科学科、非常勤講師
(「暗号理論」「情報セキュリティー」担当)
2012年~現在『京都大学大学院』情報学研究科、教授
2016年『東京大学』物性研究所、客員教授
文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部



























