フランスの「グランゼコール(高等科学技術学院)」で学ぶって実際どう?航空宇宙工学を深めるためにフランスで学ぶことを決めた学生がレポート!|マイナビ学生の窓口『study abroad report』

これから海外留学をする方、検討している方に向けて留学先のリアルな情報をお届けする『study abroad report』。
今回はフランスに留学をしているHikaruさんから情報をレポートしていただきました。本記事ではHikaruさんがどんな風に留学先を決めたのか?実際の授業・生活スタイルや、現地で困ったこと、留学してよかったことなどなど、知っておくとタメになるリアルな内容をお届けします。
レポートしてくれるのはこの人
Hikaruさん
芝浦工業大学在学。Institut polytechnique des sciences avancées(高等科学技術学院:グランゼコールと言う大学とは異なる理工系エリート養成のための高等教育機関)に2023年2月~約1年間留学中。航空宇宙工学の理解を深めること、学部での研究や将来のライフプランの幅を広げることを目的にあえてアメリカではなくフランスで学ぶことを決意。サブ目標としてフランス語の習得と日本企業とのオンライン長期インターンを掲げている。
Instagram:@hikaru_in_paris
留学先を知ったきっかけ、留学を決めたタイミング
ー留学の目的・目標は?
メインの目標として航空宇宙工学の理解を深める事を考えていました。そして学部4年生からの研究や、これからのライフプランの幅を広げようと考えています。サブの目標としてフランス語の習得と海外インターンを考えています。
フランス語に関しては日本では授業をとっていたわけでもなく挨拶しかできない状態からのスタートなので、帰国してからフランス語の資格試験であるDELF DALFとフランス語検定のどちらかを受験しようと考えています。(CEFR b1程度のレベルを取得しようと考えています。)
インターンに関しては日本とは異なり一般的に3か月~6か月の期間フルタイムで仕事を行っていることや、大学でインターンが義務化されているところもあるためインターンを見つけっるのにかなり苦労していますが…何とかしてインターン先を見つけようと思います!
ーいつ、どうやって留学先を選んだの?
私の場合は大学2年生までは留学なんて頭の片隅にもありませんでした。でも人間関係の変化をきっかけに自分の中でこれからのことを考えたり、周りが就職に関して話している中で自分は大学で何か誇れることをしてきたのかを考えてみるようになりました。そして、私は何も誇れることをしていないのでは…と自問自答するようになりました。
私自身、卒業後はおそらく就職すると思うので、4~5カ月間じっくり考えてみた結果、日本ではなく「世界」というスケールの大きい舞台でキャリアを積みたいと考えていることに気づきました。
当時、私は英語が全くしゃべることができなったのですが、まずは大学内で開催されている留学生と話し合うワークショップに参加してみました。そのそきに英語を流暢に話している人がいて、なぜ流暢に話せるのか質問してみると「カナダに1年間留学してたんだよね~」と言っていたのです。
その言葉をきっかけに、長期留学に関して考えはじめました。「海外留学」という選択肢が頭に浮かんだ後、すぐさま大学の国際部に走って行き相談をしました。「それなら交換留学がおすすめだよ!」と、奨学金などについても教えてもらいました。留学はお金がかかるのでどうしても自分の中でのハードルを上げてしまいがちでしたが、奨学金の話を聞いたことでそのハードルが少し下がりました。
私は芝浦工業大学では機械工学科に在学中ですが、なぜ航空宇宙工学を専門とする学校に留学を決めたかというと、単純に一度は航空宇宙工学に関して深く学習してみたいと感じていたからです。(航空宇宙工学は機械工学と同じ内容も扱っていることも多くあるため問題なく決断できました)
大学院ではモビリティー分野や航空宇宙産業に関する研究を行い、それに関する経験を仕事を通して得たいと考えています。
グランゼコール(高等科学技術学院)で学ぶってどんな感じ?
授業の難易度に関して
授業内容に関して、個人的にはかなり難しいと感じています。
理由として、まず1つ目に航空宇宙分野に特化ているため、私が日本で学んできた機械工学の知識の範囲とは異なっているためです。日本の大学では理論的な内容や、研究に関係した内容に触れ研究に生かしていくために学習しているように感じています。それに対し、グランゼコールではより実践に特化した内容を学習している印象があります。
例えば日本では授業を通して理論を学ぶことがメインでしたが(学部生だからかも)、フランスでは航空機が何回の飛行で破損の確率が上昇するかや、様々なソフトを使用して材料の強度を調べるなどのシミュレーションを行っていることが多いです。
難しいと感じる2つ目の理由は、私は学部生として大学院に留学しているので授業の内容が単純に高度になっているためです。勉強する理論式も学部生が学ぶものよりも複雑なものが多いです。また、英語に関しても工学的な専門用語の単語に関して勉強不足なところがあるため、しばしば苦労しています。
授業の雰囲気に関して
授業は基本的に教授1人に対し20人程度で、主に小教室で受けています。大教室での授業もありますがCOURSのときに多い印象です。(COURSに関しては下で説明します。)
授業の種類は主にCOURS,TD,TP,PROJETの4種類があります。
COURSに関しては「ザ・講義」という感じですが、質問が飛び交う場面もあり、その点は日本の講義系の授業とは少し異なる雰囲気です。
TDはCOURSを受けての演習という感じの授業です。演習の解答に関しては生徒が前に出て演習の解答をする場面もあります。
TPは10人未満で研究室の中で実戦形式の授業を行っています。具体的には材料の有限要素法(シミュレーション)や機械の内部の流れの可視化のシミュレーションを行っています。また実験の一環として航空機、ロケットにも使用されている複合材料を実験で作ったこともありました。
PROJETはゼミと似たようなもので、数人でグループをつくり1つの議題について解決策・レポートを仕上げて発表する形式の授業です。あるPROJETでは内容が良ければその分野を取り扱っている会社に提出されることもあるそうです。
先生と生徒の距離感や、授業を受けている生徒の雰囲気
先生には比較的質問しやすいです。フランスでは日本よりも授業での質問が飛び交ったりする場面が多いので、生徒と教授との距離が近い印象です。また陽気な先生も多く、先生の冗談交じりの発言で笑いが起きたりすることもあります。
授業を受けているのはフランス人はもちろん、EU圏内からの学生も多くいます。日本人は学校で私だけです。(笑)
私が通っているグランゼコールは大学院1年の半年は海外協定校に留学しなければいけないため、私のクラス(大学院1年)はみんな留学経験者です。
留学先での生活について
1日の過ごし方~授業がある日編~

1日の過ごし方~授業がない日編~

滞在先の生活環境
ー住環境について詳しく教えてください。
私はStudapartというフランスの学校が推奨していた不動産業者を利用して物件を探しました。私の住んでいる家はシェアハウスなのですが、家具家電などが揃っていてとても住みやすいです。洗濯機、電子レンジ、IH、ケトル、そしてなんと炊飯器やサンドイッチ調理器、ミキサー、ものすごく大きなオーブンなども最初から家に備え付けてありました。
お風呂はユニットバスタイプですが、浴槽に浸かるのが大好きなので週に1回は浴槽にお風呂を沸かして入っています。(笑)
共有スペースの掃除は一緒に住んでいるメンバー4人で分担し、負担を減らすことができています。個人の部屋に関しても、ベットの、枕、掛布団、机、棚、ハンガーなどすべて最初からついていたので、留学生活をスタートするのに苦労することはあまりありませんでした。
ー持って行って役立ったものは何ですか?
・水筒:フランスは日本に比べて物価が高い国です。そのため水を購入するにしても日本よりも高いお金を払わなけらえば行けないことや、学校で水をくむことができるのでもって行ってよかったと思っています。
・変圧器・変換プラグ:フランスは220Vで日本とは異なったコンセントの形をしているのでこちらに関しては必須です。
・折り畳み傘:フランスは2・3月は雨がとても多いと感じています。また急に天気が変化してしまうことが多いので持っていくことをお勧めします。
・サンダル:フランスは家でも靴を履いているのでリラックスするためにもサンダルを持っていくことをおすすします。
・チャック付きのかばん:フランスは特にスリが多いです。そのため大事なものを盗まれて後悔しないためにもすべてのかばんに関してチャックがついているものを着用することをお勧めします。
・クレジットカード:VISAやマスターカードであれば小さなスパーでも使えるので持っていくことをお勧めします。
・クレジットカード(Wise):特にWiseに関しては少ない手数料で外貨を変換することができいるので個人的にかなり助かっています。私は外貨通貨変換にWiseを使用していて手数料を抑えることができているのでお勧めです。
・現金:パン屋さんでは3ユーロよりも小さな支払いは現金身の場合もあるのでユーロ通貨は20~30ユーロ程持っておくことをお勧めします。
ー大学までの移動はどんな手段を使っていますか?
トラム(路面電車)とバスが電車の2択です。私はシェアハウスで暮らしているので徒歩の場合は1時間半ほどかかってしまいます。
フランスで学生は年間定期を約6万円支払うことで、イル=ド=フランス地域圏※の電車・トラム・バス・地下鉄がすべてが乗り放題となります。※フランスの首都パリを中心とした地域圏のこと(TGVと呼ばれる高速列車は含まれません)
大学には駐輪場もあり、自転車を購入して通う手段もありましたが、スリと物価を考慮して年間定期で通うようにしています。
ーネット環境を整えるためにどんなツールを使ったり対策をしていますか?
Wi-Fiは家、学校についていますがFreeという携帯会社のSIMカードを購入することにより快適に生活できています。こちらに関しては月110G・電話し放題で約21ユーロなのでお得です。
ー生活で困ったことはどんなことですか?
手続きが遅いことです。例えば、定期をインターネットで注文した際「10日以内家に届く」といわれていましたがなぜが届きませんでした…。その期間の交通費がかなり高くついたので、さすがにおかしいのではと思い駅の窓口に相談しに行くと「ちょっと待ってね……」「はい!」と言われて定期を手渡されました。(笑)なぜこんなに時間がかかって、家にも届かなかったのかと聞いたところ、「さあね。」で終了しました…フランスだな、、と感じました。(苦笑)
ー生活で困ったとき相談する場所・人はいる?(どんな人に相談している?)
基本的には大学の友達に相談しています。フランスの国際部に日本の大学・企業に在籍していた経験がある方が1名いるので、困ることは少ないと考えています。また、緊急事態の際は24時間対応の保険業者に電話をしようと考えています。
留学をして自分自身が一番変わったところ
ー留学をして一番変わったところや、成長したと思うことは何ですか?
一番変わったと思うことは、「1日を大切にする」という考え方です。私はフランスに約1年間滞在予定ですが、1年間なんてあっという間に過ぎてしまうものだと感じています。
そのため、この1年間をより濃いものにするために、
・夜遅くまで起きてお昼までダラダラしないこと
・夏休みは旅行にはいこう
・長期インターンをして実務経験を今のうちに経験しておこう
など、行動や思考を変えるようになりました。
日本にいた大学1・2年生の時は、長期休みも特に何も目的や考えもなくバイトばかりしていたと思います。(もちろんバイトも目的があればいいことです!)この考え方は留学が終わった後も、ずっと活きてくる考え方だと思っています。
滞在先で気を付けた方が良いこと
ー留学先で自分の身を守るために気を付けていたことはありますか?
先ほども述べた通り、フランスはスリが非常に多い国なのでポケットに財布を絶対にを入れないようにしてください。内ポケットに入れたり、かばんの中にしまっておくなどしておくことをお勧めします。
夜のパリは、ナイトクラブなどが多く、明るく、夜中でもバスが動いていますが、危険な地域も多いです。違法薬物や銃などを持ってる人もいると友人から聞きました。そのため自身の身を守るためにも、夜間の外出は必要無ければ極力控えるべきだと思います。
これから留学をする学生のみなさんに伝えたいこと
年齢に関係なく留学に興味がある人はぜひ行くべきだと思います!高校生でも中学生でも社会人でも関係ありません。人生のなかで「やりたい」と思っていることをできるときにやらないと、いつか必ず後悔してしまうと思うからです。
学生で金銭的な面で困っている方がいるとすれば、留学給付支援制度を利用することをお勧めします。またそれでも足りないという人には貸与での奨学金などたくさんの選択肢があります。
私が留学を迷っている同世代の学生さんに伝えたいことは、「お金よりも経験を重要視した方が良いよ」ということです。社会人になってから、お金を稼ごうと思えばいくらでも稼げますが、時間があるのは学生の特権だからです。
「海外留学」という経験を通して、今までかかわることのなかった人たちと関ることができ、自分の人生の選択肢が大きく広がると思います。みなさんの将来にきっと役に立ち、新しい道を開いてくれると思います。

文・写真:Hikaru
編集:マイナビ学生の窓口編集部 ろみ