著名人の方々に、自身の18歳のころを振り返っていただく連載企画“18歳のころ”。大人と子供の狭間でもある18歳は、未成年から成年年齢に変わる歳でもあり、多くの人が高校を卒業して新しい道を歩むタイミングでもあります。憧れのあの人の18歳のころを知ることで、これからの人生を送る上でのヒントを見つけられるかもしれません。

今回は、宛名のないラブレターから始まる青春ラブストーリー映画『交換ウソ日記』で主演を務めた高橋文哉さんが登場。このお仕事においてたくさんの大切なことを学んだという18歳の頃を振り返っていただきました。

▼萩原利久さん、杉野遥亮さんが登場！
学生の君に伝えたい３つのこと

俳優・高橋文哉の18歳のころ

今まで生きてきた世界と同じとは思えない新世界で生きているような感覚

――18歳の頃を振り返って、印象に残っていることはありますか？

18歳の頃が人生の中で一番いっぱいいっぱいでした。この仕事を始めた年でもありますし、『仮面ライダーゼロワン』をやった年でもありましたし、わからないことだらけの中に飛び込んで、僕が今まで生きてきた世界と同じとは思えない、新世界で生きているような感覚だったので、ほぼ記憶がないんですよね。果たしてあの時が18歳だったか19歳だったかも思い出せないくらいです。

――特に何が大変だったのでしょうか。

何が大変かもわからない大変さというか、無知ってこんなに怖いんだなという感じでした。急に台本を渡されて「来月から撮ります」と言われたのですが、「撮るとは？台本とは？ト書きとは？」からのスタートだったので。それまで見ていたドラマや映画のもの作りの部分に自分が入っていく実感も全くなかったですし、やっていても実感は湧いてこなくて、18歳の後半くらいから放送が始まってやっと「これが今、僕が本気で目指そうとしてる仕事なのか」と思いましたね。

――そんな中で特にキツかったことや、逆に楽しかったことはありますか？

しんどかったのは、家にいるのに台本を読まないといけなかったことですね。当時は「家にいないときはお芝居をして、家にいるときはお芝居のために台本を覚えて、自分の時間がない！」みたいに思っていて（笑）。作品をやっているときは役にすべてを捧げるのが当たり前なのですが、当時はそう思えなくて。でもそれが現場でいい芝居をするために必要なことだとは分かっていましたし、そのための努力が美しいと感じてもいたので「なんでやらなきゃいけないんだ」とは思わなかったですが、「自分の時間がないな。でもまあこれはこれでいっか」みたいな感じで、振り返ってみたらその積み重ねで時間が経っていた感覚でした。逆に日々楽しかったのは、本番のその瞬間ですね。この世界から自分をなくせるというか、極論を言うと本番中に急にバク転をしても、髪の毛を切り始めても、着ている洋服をビリビリにしてもいいじゃないですか。もちろん怒られますけど（笑）。「自分が想像する範囲は無限だぞ」とずっと言われていたし、自分がその役を思ってやったことに間違いはないので、その自由度の高さに難しさもやりがいも感じましたね。だから楽しかったんだと思います。

――撮影が終わったあとは、得るものも大きかったのではないでしょうか。

そうですね。芸能界の幼稚園みたいにこの世界での生き方を手取り足取り教えてもらったというか、赤ちゃんが「こうやって歩くんだよ」「これは◯◯っていうんだよ」とひとつずつ教えてもらっているような感覚でした。物の名前から物事の向き合い方、この世界での生き抜き方まで真髄に触れられる場所だったので、あの頃に得たものは今も思い出すことがありますし、当時わからないながらもガムシャラになれた理由のひとつが「ここは学校だと思えばいいんだよ。放送が始まって１年間で評価してもらうのだから、本番は発表会だと思って、その前は準備段階としてしっかりと向き合うことが大事」と言っていただいたことで。そんな日々の中で気づけば違和感もなく朝５時に起きて、気持ちを作って現場に入っていって、自然に大人になっていく感覚がありました。

自分を信じると書いて“自信”、それを大切にできたら少し楽になると思う

――当時の自分に何か言葉をかけるとしたら、どういったことを伝えたいですか。

たくさんありますが、不安だったので「今これだけの景色を見られているよ」というのは一番伝えてあげたいですかね。それ以外は「もうそのままがむしゃらに頑張っておけ！」という感じです。

――今見えている世界は当時から想像できました？

全くできなかったですね。仮面ライダーをやっている当時は１年後も想像できていなくて、自分がどんなふうに仕事をして、どんな役をやってどんな役者さんになって、どんなふうになりたいかも全くわからなくて。それを想像するための情報がない中で生きていて、不安だったのは覚えているんです。家族や友だちなど、周りもたくさん不安にさせましたし、でもその人たちに対しては「いや、大丈夫だよ」と言って、内心では自分のやるせなさとかに苦しんでいた時期だったので、「そのまま頑張っていれば大丈夫だよ」と言ってあげられたら当時の自分はすごく楽になるだろうなと思いますね。今だから言えるのですが。

――高橋さんから18歳の読者へ、エールをお願いします！

無責任な言い方かもしれませんが、努力は確実に報われると思います。自分に自信を持ったり、周りを信じるということの大切さに18歳、19歳で出演した仮面ライダーというすごく素敵な、歴史ある作品を通して気づくことができたんです。何かに熱中する瞬間にしか気付けないものって間違いなくあると思います。なんでもいいからやりたいことや好きなものに熱中したら必ず失敗も成功もあるので、それをしっかりと自分の情報にしつつ向き合っていくと、間違いなく周りとの差がつくと思います。そうすると自分に自信を持てるようになってくるし、自分を信じると書いて自信と読むので、それを大切にできたら少し楽になるのかなと思いますね。

日常をどれだけ等身大で描けるかを意識した

――７月７日から高橋さんの主演映画『交換ウソ日記』が公開されます。恋愛映画では初主演となりますが、これまでの作品との違いを感じたことはありますか？

いろんな胸キュンポイントみたいなものがある中で、どのように映ったらいいかな、何を届けらたらいいかな、みたいなことは常に考えながらやっていましたね。そういうシーンを演じるときは責任感なのかわかんないですけど、前夜から緊張していて、台本読んでどんなふうにやろうかなと考えていた気がします。

――今回演じた瀬戸山はどういう人物だと感じましたか？

本当に真っすぐですごく素直で、難しそうに見えるんですけど、まったく難しくなく、自分がどのように生きたいかに沿って生きているというか。全員が瀬戸山みたいだったら必ず衝突が起きるだろうなという人間性ではあるんですけど、周りにしっかり頼りつつ頼られつつという人柄ですね。

――瀬戸山はキラキラした王子様のようなキャラクターではなく、等身大の高校生感がありますよね。

そうですね。多分勝手にキラキラするタイミングがあるから、そういう部分を引き立たせるために普段は瀬戸山の人となりがわかったほうがいいなと思っていて、だからこそ日常をどれだけ等身大で描けるかが大事かなということは台本を読んだ段階から意識していましたね。あとは瀬戸山が本当に自分の思うがままに生きているんだなみたいなことが伝わればいいなと思って、（曽田陵介さん演じる）米田といたらすごくうるさくてもいいし、でもおなかが空いていたら下を向いて黙っていてもいいし、そういう部分がありながらもちゃんと誰かを気遣うことができる、優しい17歳でありたいなと思っていました。あと思いを伝えるときは普通だと結構もぞもぞしていてもいいのかもしれないけれど、瀬戸山の場合はもぞもぞしたら負けみたいな感じだったので、どれだけ「いや、本気で思ってるよ」ということを伝えられるかと、強く言う言葉も喧嘩腰にはなりたくないから「瀬戸山くんだから」と思ってもらえるためにした努力はありました。

――勝手にキラキラするタイミングというのは、桜田ひよりさん演じる希美のほっぺをむにゅっと掴んだり、（髪型の）お団子をぽふぽふしたりというシーンでしょうか。

そうですね。そのときは何もせずにただ瀬戸山としてそこに存在していれば、監督はもちろん、スタッフやキャストのみなさんがキラキラさせてくれるので（笑）、そこに身を任せていた感じはします。

「誰かに手紙を書いてみようかな」と思ってもらえる作品

――高橋さんがこの作品の魅力を感じたのはどういったところですか？

交換日記というものの魅力がこの映画を見て伝わったらいいなと思いますし、これだけデジタルが発達している世の中で交換日記とまでは行かなくても「誰かに手紙を書いてみようかな」と思ってもらえるなと感じたので、それをみなさんに汲み取っていただいて、文字に起こす勇気をあと押しできたらいいなとは思いますね。

――映像の中でも手書きの文字が効果的に使われていましたよね。

そうですね。文字でも芝居するということはあんまりなかったので、「こうやって書いたら瀬戸山っぽいかな」とか、モノローグを含めそういうことは考えましたね。

――ご覧になって印象的なシーンはありますか？

たくさんありますけど、強いて言うなら全体的に瀬戸山が瀬戸山しているなと思いましたね（笑）。スクリーンにドンッと自分の顔がとんでもない大きさで出ることや、カメラ目線の自分と目が合う感覚があったりとか、すごく照れくさくなって恥ずかしかったです。今までに感じたことがない感覚ではありました。

――主演を務めるのは『仮面ライダーゼロワン』以来ですが、当時と比べて成長したなと感じることはありました？

ないですね。主演の難しさは改めて感じました。主演だからといって何か苦労したわけじゃないですが、やっぱり心の持ちようが自分の中で違っていて、すごく久しぶりの感覚になりました。でもキャストのみなさんが同世代ですごく素敵な人たちしかいなかったので、そこに救われながら、何も主演らしいことせずに気づけば撮影が終わっていましたね。

――今回は主演作、恋愛映画と高橋さんにとって挑戦があったと思うのですが、プライベートで新たに挑戦したことはありますか？

全然ないですね。毎日キャンドルを焚いているくらいです。キャンドルを焚いて、本とかを読んでいるのがカッコいいなと思って（笑）。

高橋文哉さんから学生のみなさんに手書きのメッセージ！

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出演：高橋文哉　桜田ひより
茅島みずき　曽田陵介　齊藤なぎさ／板垣瑞生
原作：櫻いいよ「交換ウソ日記」（スターツ出版文庫）
　 主題歌:「ただ好きと言えたら」KERENMI & あたらよ(A.S.A.B)
監督：竹村謙太郎
脚本：吉川菜美
©2023「交換ウソ日記」製作委員会

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取材・文／東海林その子
撮影／米玉利朋子