「自分に素直に生きたほうが絶対に健康的だなと思った」Novel Core連載vol.2
「合唱コンクールで指揮者を経験して音楽の仕事を意識する」Novel Core連載vol.1
新世代のラッパー / シンガーソングライターとして多彩な活動を続けるNovel Coreさんのキャリアや表現者としてのこだわりに迫る連載企画。第2回目は、MCバトルや路上パフォーマンスに精力を傾けていた十代の思い出や、Zeebraさんとの出会いについてなどを中心にお伺いしました。
自分に素直に生きたほうが絶対に健康的だなと思った
――MCバトルに出ていた頃のNovel Coreさんは攻撃的なイメージでしたよね。
やっぱりステージの上ではある程度、「傾く」というか、かっこつけないといけなかったので、バトルのモードに入った時はそれなりにスイッチを入れてました。でも、その姿だけが独り歩きをしている状態だったんです。それで強いバッシングを受けた時期もありました。味方もいないし、そんなに精神をすり減らしてでもやり続けるべきものなのかって、自分的に分からなくなりました。
――クルーを組まずに、一人で活動することに孤独感はなかったですか?
ありました。でも、仲間が増えれば増えるだけ自分の持っている野心や責任感が減ってしまう気がしたんです。たとえば5人いたら5分の1になってしまう、と。だったら一人で全部背負い込んで戦いたいって気持ちが強かったですね。音楽の趣味が合う仲間もいましたが、クルーを組んで一緒に何かを作るということは避けていました。
――Novel Coreさんは、そこまでMCバトルに出ていた訳ではないですよね。
ベストバウトみたいな形で、自分のバトルを取り上げてもらうことが多かったので、世間的にはバトルにたくさん出ていたイメージがあると思うんです。でも実際に出た本数で言うと、そんなに多くはないんです。BAD HOPやちゃんみなさんもMCバトルから出てきた人たちですけど、みんな自分たちのフィールドをアーティストとして築いていたし、自分もそういう風になっていきたいという気持ちがありました。
――当時と現在ではラップのスタイルやリリックも大きく変化した印象です。
MCバトルに出ていた時期は、いわゆるスカしているかっこよさみたいなものに憧れていたのもありますし、人前で涙を流すことなんかも避けていました。でも、MCバトルから身を引くぐらいのタイミングで、自分に素直に生きたほうが、今後長い目でキャリアを見たとき、絶対に健康的だなと。僕が素直になった瞬間、周囲の人たちも優しく接してくれるようになったので、気持ちの変化と共にスタンスも大きく変わりました。具体的に言うと、自分から変に壁を作っていたことを後悔して、素直に思ったことや感じたことを出すようになりました。
――MCバトルで先輩たちと戦うのはいかがでしたか?
やっぱり、やりづらいですよね(笑)。バトルはエンタメというか、プロレス的な要素もあって、お客さんたちはある程度本気で殺し合っているところを求める性質もあるんです。長い間MCバトルシーンにいると、何回か戦ったり、楽屋で会ったりしていくうちに仲良くなっちゃうんですよ。でも、いざステージで対面したときには、相手を迷いなく斬りにいくので、そこに最初は抵抗感もありました。ただMCバトルで強い先輩方、たとえば呂布カルマさんなんかを見ていると、迷いなく相手を斬っていくんですけど、そこにリスペクトもあるんですよね。それは自分にない一面だったので、すごく刺激をもらいました。
――当時はCoreさんも迷いなく先輩方を斬っているように見えていましたけどね。
バトルのときはできるだけスイッチを入れるようにしていましたからね。ただ2021年10月9日に日本武道館で開催された「戦極MCBATTLE 第24章」に出場して、それが2年ぶりのMCバトルだったんですけど、今の僕には「むずいな」と思いましたね(笑)。違うフィールドで音楽と向き合っていたので。一対一で戦う難しさを感じました。
退路を断って、自分を追い詰めるために高校を中退
――MCバトル以外では、どんな音楽活動をしていたんですか?
その時期は渋谷の路上に週4日ペースで繰り出して、スクランブル交差点のTSUTAYA前にスピーカーを置いて、ドラムやビートボクサーやベーシスト、当日に乱入してくる人などと一緒にフリースタイルセッションをやっていました。
――現在、ワンマンライブはバンド編成で行っていますが、ドラムを担当している佐藤響さんは路上パフォーマンスで知り合ったそうですね。
そうです。路上パフォーマンスで出会った仲間たちは、その場でしか出会えない人たちという感覚が強かったのですが、当時から、いつかその人たちを集めて何かやりたいな思っていました。それを今、実現できているのはうれしいですね。
――当時、ドラムとラッパーによるパフォーマンスは異色だったのではないでしょうか?
確かに同じ時期に、同じエリアでパフォーマンスをやっていた人たちで、ドラムとラップを組み合わせてやっている人は他に見なかったですね。海外ではよく見る形なんですけどね。路上でのセッションは15歳の頃から、2年間くらいやったんですけど、音楽的にすごく成長することができました。レコーディングで「ドラムのブレイクがここに欲しい」みたいな感覚があるのも、路上セッションの経験から生まれたもの。意外と生楽器とセッションできる機会って少ないですからね。
――高校を1年生のときに中退したそうですが、どんな理由があったのでしょうか。
もっとラップを頑張りたかったので退路を断ちたかったというか、自分を追い詰めたいなと。あとは当時の彼女との関係で精神が荒んでいたのもあって、けっこう感情がごちゃごちゃになってしまって、ちょっと病んでいる時期でした。それで、このまま無理して学校に通い続けるよりも、自分の今やるべきこと、やりたいと思っていることに集中したほうがいいんじゃないかということで、母親に相談して中退しました。
――お母さんは理解してくれたんですか?
その相談をしたときに、母親は「そう言うと思っていた」と。「高校を出ていないと、仮に音楽の道を諦めて違う仕事に就くとなったときに大きなデメリットになるし、それは覚悟した上で、それでもやりたいと思うんだったら思う存分やりなさい。どこまで行ってもあなたの人生だから」という風に背中を押してくれたんです。
――いい親子関係ですね。反抗期はなかったんですか?
生まれつき反抗期だったんじゃないかな(笑)。でも家族とは父親と9つ上の姉も含めて根本的にめちゃめちゃ仲が良くて。学校で会ったこととか、ちょっと嫌なこととかでも包み隠さず話すぐらい距離が近かったんです。ケンカすることもあったんですけど、お互いに近い距離で常に感情を吐露し合っていました。
――ご自身の決断に自信はありましたか?
根拠なき自信だけが武器でした。路上パフォーマンスをやっていた当時は、いつか絶対に大勢の人の目に触れる機会があると信じていました。実際、少しずつ路上パフォーマンスが注目されるようになっていって、改めて本腰を入れてやるべきことなんだと自覚しました。そしたら「高校生RAP選手権」に初出場する半年前ぐらいにZeebraさんから声がかかったんです。
――それはすごい!
Zeebraさんが渋谷にある中学校のハロウィンイベントでライブをするときに、前座として「若い子で4人ぐらいフリースタイルの上手い子を連れてきてほしい」というのを、別のラッパーの先輩伝いで僕のところに連絡が来たんです。それで「ぜひ!」ということで中学校に行ってラップしたら、その日にZeebraさんが連絡をくださって、「お前マジでヤベーから、うちの事務所に1回遊び来いよ」と。それで翌週、事務所に行って、レーベルに入ることが決まったんです。
――急展開だったんですね。傍目から見るととんとん拍子に見えますが、高校を中退して後悔したことはありますか?
辞めたからこそ今があると思うし、後悔はないですね。ただ高校の残りの2年間は貴重な青春時代で、人生において大事な期間だと思います。それが空白になったことに悔しさを感じるときもあります。なので失った青春を音楽で取り戻しに行くみたいなものも活動をしていく上で大きなテーマです。
PROFILE
Novel Core
東京都出身、22歳。ラッパー、シンガーソングライター。
SKY-HI主宰のマネジメント / レーベル "BMSG" に第一弾アーティストとして所属。メジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』とメジャー2ndアルバム『No Pressure』が2作連続、各チャートで日本1位を獲得。Zeppを中心とした大型のライブハウスを周遊する全国ツアーや、豊洲PITでの単独公演を全公演即ソールドアウトで成功させ、来年1月には日本武道館での単独公演が決定。
その存在感を確かなものにする一方で、FERRAGAMOやETROなど、トップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集める新世代アーティスト。
公式サイト:https://novelcore.jp/
Twitter:@iamnovelcore
Instagram:@iamnovelcore
TikTok:@iamnovelcore
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/novelcore
取材・文/猪口貴裕
撮影/GENKI (IIZUMI OFFICE)