アイヌ文化と北海道の魅力に触れられる『界 ポロト』 非日常を届ける星野リゾートの仕事とは?【お仕事図鑑】

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創業100年以上の歴史を持つ、リゾート運営会社「星野リゾート」。「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」「BEB」といった、コンセプトが違う宿泊ブランドや日帰り施設などを各地に展開しています。

今回は2022年1月に北海道・白老町(しらおいちょう)でオープンした、「界 ポロト」で活躍されている渡邉謙一さんにインタビュー。アイヌの文化や歴史が継承されている「界 ポロト」での仕事内容や、星野リゾートに入社したきっかけなどを伺いました。

プロフィール

PROFILE

渡邉 謙一さん

アパレル業界を経て「モノ」から「体験」を提供したいという想いから2017年2月に星野リゾートへ入社。温泉旅館ブランドである「界」に着任し、『界 箱根』に約5年半在籍。現地広報として取材対応やVIP対応を担う他、社内におけるサービススキル研修の講師を務める。2021年10月から北海道初の界ブランドである、『界 ポロト』の開業メンバーとして赴任。フロントチームのリーダーとしてオペレーション設計から施設運営まで幅広く担当。プライベートでは、キャンプや登山など北海道の大自然を満喫中。


アパレル→ホテル業界へ。星野リゾートに入社した理由

――キャリアのスタートはホテル業界ではなく、アパレル業界だったそうですね。

はい。都内を中心に展開しているセレクトショップで働いていました。雑貨や洋服の販売のほか、店舗のマネジメント業務も担当。“モノ”を扱うことから私のキャリアはスタートしました。

就職活動をしていた当時は、「ホテル業界」よりも「誰かのために何かをしたい」という気持ちが強かったです。その気持ちを深掘りしていく中で、“モノ”についてならお客様に良さを魅力的にお伝えできると思い、“モノ”を扱う仕事へと方向が定まっていきました。

――星野リゾートに転職したきっかけを教えてください。

“モノ”を通して、お客様の人生を彩り、新しい価値観や、素敵な時間を提供していると気づいたことがきっかけでした。

セレクトショップ時代、私はお客様が「商品を買ってくれたら100%」「買わなければ0%」という考え方ではなく、「このお店に来て良かったと思ってもらえたら100%」という考え方で接客をしていました。

“モノ”には、3万円や5万円といった価値があらかじめ付けられています。価値を購入することによって一定の満足度が得られるとは思いますが、単に商品を買う・買わないだけの時間を過ごすのではなく、お客様にとってプラスな時間になるような接客を心がけていました。

お客様と濃い時間を過ごしていると、だんだんと商品の話だけではなくプライベートの話にも発展していくんです。次第にお客様が、ご自身の友人にお店をご紹介してくださることもありました。私が行っているのは単純に商品を売って人と“モノ”を繋げるだけではなく、人と人、充実した時間や快適な場所を提供していることにも繋がっていると感じるようになったんです。

“モノ”の価値は金額だけではなく、私という人間を通してさらに高めることができると分かったときに、「より多くの素敵な時間を提供したい」と思い、転職しようと決意しました。

――競合他社が多い中、なぜ星野リゾートだったのでしょうか?

星野リゾートでは「時間を提供したい」という自分の大切な軸を持ち続けられ、その中でも「クリエイティビティを追求し自ら発信できる」ことや、「フラットカルチャー」である部分に惹かれました。

お客様のご希望に答えるのは、ホテルマンとして当然だと思います。ただ、それ以上の価値を生み出すためには、自らがお客様のためになる“何か”を考えて、行動するクリエイティビティが必要だと思うんです。

マニュアル的なサービスは安定している一方、どこへ行っても同じサービスを受けられるとも言えます。ここでスタッフ一人ひとりがクリエイティビティを追求し、自ら商品を開発したり、行動に移したりすることで、価格以上の価値へと変化します。

星野リゾートでは、クリエイティビティの追求や発信、行動までのオペレーションを自分で定められ、開発から提供まで全て実践できる点に魅力を感じました。

また弊社では戦略上、上下関係をあえて作らないようにしています。経歴や勤務年数に関わらず自分の意見が言える組織文化があるため、働きやすい環境であると感じました。競合に負けない大きな魅力だと思い入社を決めました。

地域の方とのコミュニケーションを徹底。「界 ポロト」の開業に向けて意識したこと

――「界 ポロト」について教えてください。

「界」は、国内の温泉地に展開している高級温泉旅館ブランドです。大きく4つのことをお客様にお約束しています。1つ目が現代に合う快適性を追求した和の空間を提供すること。2つ目がその地域や季節ならではのおもてなしをすること。3つ目が温泉の本質を伝えて湯治文化を継承すること。4つ目が星野リゾートの精鋭スタッフを揃えていること。

「界 ポロト」は北海道・白老町のポロト湖畔に建ち、全室から湖が望めます。白老町は先住民族であるアイヌの歴史や文化が根付いた土地。「界 ポロト」で過ごすことで、アイヌの文化や精神性などに触れられます。

――どのようなお仕事を担当しているのでしょうか?

フロントチームのリーダーとして、オペレーションの設計から「界 ポロト」の運営に至るまで、幅広い業務を担当しています。

私は2017年にキャリア採用で星野リゾートに入社後、神奈川県にある「界 箱根」で約5年半の勤務を経て、自らの希望で2021年10月に北海道へ来ました。「界 ポロト」の開業から現在に至るまで、お客様に「界 ポロトに来て良かった」「また行きたい」と思っていただけるためにはどのようなことを提供したらいいのか、空間・動作・対話の3つの要素に分け、それらを深く掘り下げて日々のサービスを追求しています。

例えばチェックインではお部屋や窓からの景色を阻害しないために、お客様に先に歩いていただく……などのオペレーションを検討しています。一般的にはスタッフが先に歩き、お客様を誘導するケースが多いですが、「界 ポロト」では非日常の空間に没頭していただくために、歩く順番、質問を投げかけるタイミングなど、深く深く掘り下げてオペレーションを設計しています。

――「界 ポロト」の開業に向けて、地域の方々との協力が不可欠だったと思います。意識したことや思いをお聞かせください。

「界」は古き良き温泉旅館という文化は残しつつも、普段あまり温泉旅館に行ったことがない方に向けて、王道でありつつどこか新しい雰囲気を感じてもらいたい思いがあります。そのためには、まずは我々が王道を知らないといけませんし、誰よりもその地域の魅力を知っておかなければいけません。

表面的な知識だけですと、地元の方々には「あ〜それは知っていますね」と言われてしまいます。「おもてなし」とは、「持って」「成す」からこそ体現できるもの。自分の引き出しを増やし続けることが「おもてなし」には重要な要素になってくるため、仕事でもプライベートでも地域の方々との接点を作るようにしていました。

例えば「界 ポロト」で提供している日本酒をより詳しく説明できるように、北海道の酒蔵を1人で巡って、作り手さんに話を伺っていました。作り方や熱い思いを伺うことで、私がお客様に説明するときに厚みが出るんです。

作り手さんの思いを聞き、自分の中で理解をしてお客様に届けると、魅力が多くの方へと広がっていきます。地域の魅力を知って発信をし続けることで、地域が盛り上がっていく。そんなブランドを「界」は目指しています。

他には、アイヌ文化にはセンシティブな背景があるため、アイヌ協会の方々の協力を得て、正式な歴史や表現に則りお客様に情報をお伝えするようにしています。我々の先入観や主観が入らないように「このような歴史があり、今に至ります」と、アイヌ協会を通して伝え方や内容を作り上げていきました。

――大変だったことを教えてください。

開業に向けて大変だったことは多くありますが、星野リゾートだからこそぶつかった壁の1つが、働き方への理解です。星野リゾートのスタッフは、一人ひとりがフロント業務・客室清掃・調理・レストランサービスといった、複数の業務をこなしています。全てのスキルを持ち合わせていると、お客様との接点が増えてどのような質問にも答えられ、クオリティの高いおもてなしができるからです。

その一方で、マルチタスクだからこそ外部の方とやりとりをするときに、メールや電話の返信がスピーディーにできないことが多いです。返信に日を跨いでしまう場合もあるため、事前にスタッフの働き方や体制については、先方とすり合わせが必要だと感じました。

ホテル業界に向いている人物像とは?まずは自分の「好き・興味」を突き詰めよう

――お仕事を通して、嬉しかったエピソードを教えてください。

以前宿泊に来られた女性のお客様が、着席後に首を傾けて伸ばしていたんです。そのあとに背伸びをして首を回されたので、「もしかすると相当疲れが溜まっているのではないか?」と思いました。

お食事の前だったため、湿布の匂いがお料理の邪魔にならないように、食事が終わり退席するタイミングを見計らって、包んだ湿布をお渡ししました。すると「どうして分かったんですか?」と非常に驚かれていて。

「ご着席されたときに首や肩を気にされていた様子だったので、お疲れが溜まっていらっしゃるとお見受けしました。もしよろしければ温泉の後にご使用ください」とお伝えしたら、後日お手紙をいただきました。「そこまで見てくださっていることに気がつきませんでした。これがおもてなしなんですね」とお言葉を書いてくださったんです。お客様に伝えたい・届けたいと思っていた価値が届いたとき、このお仕事をしていて良かったと感じますね。

――この仕事はどのような人に向いていると思いますか?

私自身の経験からお伝えさせていただくと、自分の「好き・興味」を突き詰めたり、自分の「好き・興味」を誰かに伝えたりできる人でしょうか。

もちろん「これが好き」がまだ分からない人も多いはず。細かく言語化できなくてもいいので、まずは「これいいな」「興味あるな」と思うものがあれば、実際にやってみたり、行ってみたりするといいと思います。

私の場合、仕事を通じて地域の魅力に触れているうちに「これってどうやってできているのだろう」と疑問に感じ、酒蔵巡りを始めています。昔はあまり日本酒が飲めなかったのですが、今は大好きになり、日本酒の資格も取得しました(笑)。資格を取得したことで、より深い知識を持って、お客様へ魅力をお伝えすることができます。

自分の興味を大切にして、「なぜだろう」「これが気になる」「やってみたい」という思いを持てる人は、クリエイティビティを追求でき、お客様へ価値を提供できるのではないかと思います。

――ありがとうございます!最後に今後の「界 ポロト」の展望について教えてください。

開催未定ですが、北海道では2030年の冬季オリンピックの開催を目指していることから、今後は情勢が変わり海外の方に来ていただく機会がより増えると思います。その際に「界 ポロト」だけではなく、街全体、地域全体が手を取り合っておもてなしができるように、準備を進めていきたいと思います。


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文:田中青紗
編集:学生の窓口編集部
取材協力:星野リゾート

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活字中毒の中年編集者です。暇さえあれば本やウェブコンテンツを読み漁っています。 文章や言葉で読者を楽しませたり、悩みに寄り添い勇気づけられるよう、日々悪戦苦闘しながら言葉を紡いでいます。

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