「乾杯〜!」 杯を高く挙げるインターン生たちの手は雄大かつ自信のあることの象徴であるように見えて…|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:夜
エッセイキーワード:夜
エッセイタイトル:『SAKE★PARTY』 著者:井上 智尋 さん
985文字/3分くらいで読み終わります。
「乾杯〜!」
杯を高く挙げるインターン生たちの手は雄大かつ自信のあることの象徴であるように見えて、身震いした。
しかし次に続く会話から因数分解をするに、日々の勤務疲れを無理矢理払拭させようとする人、単純にこういった場を楽しみたい人、周囲のノリに合わせている人など、一つの組織にも互いに違う心理を持っていることがすぐに把握できた。
私自身は集団の中で話すことが特段好きではない。むしろ人に阿ったりする側面もあるこの夜は決して好きにはなれない。勿論、遠慮をするからこそ周囲に気を遣って話すことができない私である。空気を読もうとするあまり、自身の時間帯も割き、飲み会に出席するのだ。これもある意味仕事の一種なのだから。
それでも上司や学生が同等の立場で接することが許される空間や掲げた一杯が、私の固い心理状態を和らげる特効薬となる。
周囲に馴染めない私を気にかけてくれていたが、そこまで深く話すことのない同僚が肩を組んできた。
その唐突さに疑問を呈さないまま、私自身も彼女の肩を組み返す。この状況は殻の外の自分は冷静に把握しているが、自分ではない新しい自分が代わりに動いて止まない。 それでもメンバー一同のフランクさや、私に対しての賞賛や褒め言葉の数々を聞くに、自分が周りから愛されている人間だというポジティブな面にも気づき、涙腺が緩む。
「SAKE★PARTY」
自分を動かしている、知らない自分がInstagramのストーリーに流暢にそう手を滑らせた。最速のフリック入力である。半分眠ったような状態のいつもの私は、別の自分に半ば身を預けている。
"お酒"は英語表記すると"Liquor"であるという、知識すらもどこかへ吹き飛んだ。
朝になり、微妙な倦怠感を背負い私は起き上がった。そして昨日、輝いていた自身の姿を反芻させる。これは夢であったのかと思いつつも、私のSNSにはノリで書いた投稿がまだ残っている。「若気の至り」という言葉がよく似合う。
"PARTY"は毎日毎時に起こりうるものではない。こんな私という存在が他者と遠慮せずに話すことができるのは、まさに非日常であるPARTY故だ。
「今日の井上さん、面白かった〜w また飲もうね!」
という同僚からのメッセージは、私の顔を綻ばせた。
それでも私は本来の真顔に戻り、PCに向かう。今日も会社では3言しか発さないままタスクを終わらせ、退社をするのだ。
杯を高く挙げるインターン生たちの手は雄大かつ自信のあることの象徴であるように見えて、身震いした。
しかし次に続く会話から因数分解をするに、日々の勤務疲れを無理矢理払拭させようとする人、単純にこういった場を楽しみたい人、周囲のノリに合わせている人など、一つの組織にも互いに違う心理を持っていることがすぐに把握できた。
私自身は集団の中で話すことが特段好きではない。むしろ人に阿ったりする側面もあるこの夜は決して好きにはなれない。勿論、遠慮をするからこそ周囲に気を遣って話すことができない私である。空気を読もうとするあまり、自身の時間帯も割き、飲み会に出席するのだ。これもある意味仕事の一種なのだから。
それでも上司や学生が同等の立場で接することが許される空間や掲げた一杯が、私の固い心理状態を和らげる特効薬となる。
周囲に馴染めない私を気にかけてくれていたが、そこまで深く話すことのない同僚が肩を組んできた。
その唐突さに疑問を呈さないまま、私自身も彼女の肩を組み返す。この状況は殻の外の自分は冷静に把握しているが、自分ではない新しい自分が代わりに動いて止まない。 それでもメンバー一同のフランクさや、私に対しての賞賛や褒め言葉の数々を聞くに、自分が周りから愛されている人間だというポジティブな面にも気づき、涙腺が緩む。
「SAKE★PARTY」
自分を動かしている、知らない自分がInstagramのストーリーに流暢にそう手を滑らせた。最速のフリック入力である。半分眠ったような状態のいつもの私は、別の自分に半ば身を預けている。
"お酒"は英語表記すると"Liquor"であるという、知識すらもどこかへ吹き飛んだ。
朝になり、微妙な倦怠感を背負い私は起き上がった。そして昨日、輝いていた自身の姿を反芻させる。これは夢であったのかと思いつつも、私のSNSにはノリで書いた投稿がまだ残っている。「若気の至り」という言葉がよく似合う。
"PARTY"は毎日毎時に起こりうるものではない。こんな私という存在が他者と遠慮せずに話すことができるのは、まさに非日常であるPARTY故だ。
「今日の井上さん、面白かった〜w また飲もうね!」
という同僚からのメッセージは、私の顔を綻ばせた。
それでも私は本来の真顔に戻り、PCに向かう。今日も会社では3言しか発さないままタスクを終わらせ、退社をするのだ。
著者:井上 智尋 さん |
学校・学年:慶應義塾大学 3年 |
Twitter:@chihiro_logical |
著者コメント:皆さんはどのような状況で飲むお酒が一番美味しいと感じますか? 私は仕事を終えた時です。そしてエッセイを書き終わった今も…今日もみんなで「SAKE★PARTY」 |
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