イベントレポート後編『投資にも就活にも活きる10年後につぶれない企業の見極め方とは!? ~投資先を選定するプロ 野村アセットマネジメント河合さんに直撃~』
お話してくれるのはこの2人
野村アセットマネジメント株式会社 河合若葉さん
責任投資調査部
シニアESGスペシャリスト
国内の投信投資顧問会社、外資系アセットマネジメント会社を経て、2005年に野村アセットマネジメントに入社。2009年7月~2020年3月までシンガポール拠点にてアジア株の運用を担当。2020年4月より現職。
【野村グループの紹介】
世界30カ国・地域を超えるネットワークを持つグローバル金融サービス・グループ。営業、アセット・マネジメント、ホールセール、マーチャント・バンキングという4つの部門が連携し、国内外のお客様に付加価値の高い商品・サービスを提供しています。

インタビュアー 櫻庭 悠汰さん
株式会社Media Beats代表/国際教養大学在学中
大学3年から広告代理店でインターンを始め、多くのWeb事業を経験。その後、国際教養大学在学中に株式会社Media Beatsを起業。現在はWeb広告やメディアの制作、運用をワントップで行うWeb会社を経営。50種類以上のメディア制作、運用経験からクライアントにとって最適なコンテンツを制作、運用している。
目次
1.ESGの取り組みは企業の利益に直結するの?
2.ESG企業はどんな学生を採用したいと考えている?
ESGの取り組みは企業の利益に直結するの?
ESGの取り組みは企業の利益に直結するのですか?
はい。非財務情報は将来の企業の業績を生み出す元となっており、時間の経過と共に財務情報となっていきますので、企業の利益や価値向上にとっても非常に重要です。
ここで、野村アセットマネジメントのESG投資への取り組みについてご紹介します。
お客様からお預かりした資産の中長期的な成長と共に、投資の連鎖(インベストメント・チェーン)の好循環を目指しています。
まず個人投資家や年金基金などが運用会社などの機関投資家にお金を預けます。機関投資家はESGなどを考慮しながら企業へそのお金を投資します。
企業が持続可能性を重視した経営を推進し業績が改善すると、従業員や取引先などが経済的な価値を得ます。それと同時に企業は事業を通じて社会課題を解決し、安全・安心で豊かな社会を実現します。そして最終的には企業の株価上昇を通じて、投資者の投資リターンの向上につながるという、好循環が連鎖します。広範囲の関係者がWin Winの関係で結ばれることになります。
この投資の連鎖の好循環を支える上で、重要なのがESGです。私たちは、投資先企業にESGに配慮した経営を求め、ESG投資を推進することが、投資の連鎖を上手につなげ、持続可能で豊かな社会を実現することになると信じています。
2015年9月には、国連で2030年までに達成すべき世界の目標として「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されたこともあり、各企業がSDGsの目標達成に向けて、ビジネスチャンスをとらえようと動いている中、我々機関投資家も積極的な関与を求められています。
野村アセットマネジメントでは、独自のESG評価「ESGスコア」を算出しています。
ESGスコアは80以上の項目で評価していますが、大きく分類すると、環境、社会、ガバナンス、SDGs(持続可能な開発目標)の4つから構成されています。
ESGの評価では、リスクのみでなく、事業機会についての視点も大切です。
具体例として、環境のカテゴリーの中の、「気候変動への対応」の評価において、リスクと機会を評価するポイントをご紹介します。
気候変動のリスクには、大きく分けて、低炭素社会への移行に伴う「移行リスク」と自然災害等の影響がもたらす「物理リスク」があります。低炭素・脱炭素の動きの中で、企業の製品やサービスの需要が減少したり、コストが上昇したりするリスクが移行リスクです。
物理リスクの例としては、異常気象による台風や洪水などの自然災害によって企業のビルや工場がダメージを受けるリスクなどがあります。
我々は、リスク管理に関しての対話・評価だけでなく、企業が気候変動をどのように機会に転じるかについても重視しています。低炭素製品やサービスの開発は、売上の拡大やマーケットシェアの獲得の機会に繋がります。
野村アセットでは、このようなリスクと機会の両方の視点で投資先企業と対話し、ESGスコアという独自の基準で投資先企業を評価しております。このような対話を「エンゲージメント」といい、エンゲージメントを行う専門部署である責任投資調査部を設けております。責任投資調査部のESGスペシャリストと企業の調査・分析に当たるアナリスト、投資の意思決定を行うポートフォリオマネージャーとで東京のみで合計100名程がおり、業種・運用スタイル別に専門分野を担当しています。ESGスコアを共通言語として、ESGの評価を効率的に投資戦略に組み込んでいます。
「ESG」は抽象的なもののような気がしますが、それを数値化できるというのはすごいですね。
そうですね。我々のインナーオフィスでも行っておりますし、外部の情報機関にもESGレーティングというものを付けているところがあり、両方を見ながら総合的に判断しています。
企業価値の持続的な向上と投資の連鎖の好循環を目指して、私たちは、投資先企業にESGに配慮した経営を期待しています。
ポイントは4点です。
2. 自社にとって重要度の高いESG課題を選別すると共に、リスク管理をしっかりと行う
3. リスクを機会に転じる「持続可能な社会」を実現するための枠組みであるSDGsの目
標・ターゲットには多くのビジネスチャンスがある
4. これらの情報を開示や対話を通じて投資家に伝えて頂く
ESG企業はどんな学生を採用したいと考えている?
ESG投資に適した優良企業側からすると、学生時代にSDGsの活動に尽力した人のほうが採用したいと思われるのでしょうか?
まず、社会課題を身近に捉えて興味を持ち、よりよい未来の実現に貢献したいという熱意を持つことが大切だと思います。自分の関心のある分野を社会課題と関連付けながら深く掘り下げて勉強することで、課題への理解も高まります。
企業にとって、人的資本(人材)は最も重要な経営資源の一つであり、企業の持続的成長へのカギとなります。ESG課題に積極的に取り組んでいる企業は、自主性や成長意欲を持った人材の登用や育成に積極的です。
幅広い視野や知識、大局的な見地に立ち全体を俯瞰する能力に加えて、チームワークを組んで課題解決を推進できるコミュニケーション能力やリーダーシップなどが求められています。
企業でも、リーダーシップを発揮できて、課題解決ができるような人材を望んでいるからこそ、大学時代にいろんなことに挑戦したりできる人は、内定や就職に有利に働く可能性があるということですね。
▶Q&A編ではイベントで視聴者の方から届いた質問を櫻庭さんが代弁。はたして河合さんからはどのようなお話を聞き出せたのでしょう!?是非続けてご覧ください。