「無駄に過ごした時間も成長の糧になる」ストレイテナー・ホリエアツシが進化を続ける理由 #セルフライナーノーツ

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2020年12月2日に、2年7か月ぶり、通算11枚目となるオリジナルアルバムをリリースするストレイテナー。ストレイテナーといえば、1998年に結成し、20年以上のキャリアを持ちながらも、常に「進化」と「挑戦」を続けている印象があります。

実際、コロナウィルスという未曾有の事態に置かれた現在も「進化」が止まることはなく、9月には15年前にリリースしたアルバム「TITLE」を提げた、自身初の有料配信ライブを開催し話題となりました。常に現状に甘んじることなく、進化や挑戦を続ける原動力はどこにあるのか、ボーカルのホリエアツシさんにお話を伺いました。

文:於ありさ
  写真:友野雄(YU TOMONO)
編集:学生の窓口編集部

4人で演奏する楽しさとこれからの決意を表した新アルバム

――最新作のアルバム「Applause」は、日本語に訳すと「拍手」という意味でまさに3ヶ月連続リリースのラストを飾るのにふさわしいなと思いました。ずばりこのタイトルに込めた想いを教えてください。

ホリエアツシ:普段はアルバムのタイトルを決める時に、曲の歌詞からとることが多いんですけど、今回は際立ったタイトルの曲が多かったので、なかなか難しくて。

それで、どうしようかなと思った時に、9月に久しぶりにお客さんの前でライブをやれたときに印象的だったことを思い出したんですよ。

――どのようなことが印象的だったんですか?

お客さんが1曲1曲終わるごとに、すごい拍手をしてくれて、次の曲を始めるまで鳴り止まない。

今はリアクションに制限があって、歓声を上げられない中で、拍手で最大限の気持ちを表してくれているんだなって。すごく力をもらったので、このタイトルを思いつきました。

――なるほど。直近の体験がタイトルになったんですね。今回のアルバムを出すにあたって、前作を出した時とはかなり環境が変化したのではないかと思うのですが、ホリエさん自身、作詞・作曲に対するアプローチに変化はありましたか?

前作では、パーソナルというか、一対一の人間同士の感情にフォーカスを当てて、愛や感謝を込めた曲が多くて、自分たちの過去を回想するような歌詞が多かったんですけど、今作ではそこに踏ん切りをつけたかったんですよね。

だから、このアルバムは、初期の詞の書き方に立ち返って、最初から書くテーマを決めずに、音に導かれて言葉を乗せていくやり方に戻りました。

今の自分たちが作りたいものに素直に、自分たちが楽しいと思えるものを作れたなと思います。なんというか「何かを伝えたい」というよりも、「これからの自分たちがどういう音楽を作って、表現していくか」みたいな。

――ある一種の決意表明というか、ストレイテナーのあり方を示した感じなんですね。

そうですね。あとは、コロナ禍になってからバンドで集まる機会が少なくなったので、純粋に演奏する楽しさが出ているかなって。曲によって、ちょっとセッションっぽいというか肉体的なサウンドになっているかなと思いますね。

レコーディングでも、パワフルな曲は荒々しく、テクニカルな曲も上塗りして作り込むんじゃなくて、温度感を重視しているというか、一人一人が鳴らしている音がクリアに聴こえると思います。

――たしかにアルバムを聞かせていただいて、バンド感が強いというか「2020年にこういう雰囲気のストレイテナーが聞けるなんて」と良い意味で裏切られました。

メンバーからも「癒しにいくと見せかけて、自分で自分を奮い立たせるための曲が多いね」って言われました(笑)。

――どの曲も選び難いとは思うのですが、今回のアルバムに収録されている中で、ホリエさんが特にお気に入りの楽曲を教えてください。

シングルにもなった「さよならだけがおしえてくれた」は、僕の中で1番最後に完成した曲で、特に探求した曲ですね。もともとあった意味合いから、アレンジを重ねることによって、違う説得力を持っていったというか。

音の成り立ちもシンプルで音数少ない、でもそこに強さがある。サビの歌詞「さよならだけがおしえてくれた」をそのまま曲名にしたのもストレイテナーとしては珍しいですね。

――この曲を通してホリエさんが伝えたかったことってなんなんでしょうか?

「さよならだけがおしえてくれた」という歌詞を軸にして、いくつかの「さようなら」を経験したからこそ、今があって、今を生きている。過去になにがあったかとか、なにを経験したかということよりも、なんで今出会ったのか、今出会えたことに意味があるんだっていう。

過去への決別とまではいかないけど、過去を否定も肯定もせず、受け入れた今から、先に起こしていくことが大切なんだというような決心を表現した曲です。これからを生きていくというところに重きを置いていきたいなと。

15年以上前のアルバムで配信ライブを開催!「20代の頃の自分に共感できた」

――今年は例年以上にファンの方との物理的な距離が生まれてしまったと思うのですが、そんな中でもファンの方との結びつきを感じるたエピソードがあれば教えてください。

9月の配信ライブで、20周年のファン投票でも人気が高かった2005年のアルバム「TITLE」の全曲ライブをやったんですね。

2005年当時からのファンも観てくれたと思うし、後にファンになってくれた人たちの中でも、当時の生き急いでたストレイテナーのライブを観てみたいっていう気持ちもあったと思うし、いざやってみると、思っていた以上にリアクションが良かったし、視聴者数も期待以上で、このタイミングでこのアルバムを選んで良かったんだなって。

正直、僕らも配信ライブに対して完全に前向きというわけではなかったんですよ。できれば生で見てほしいし、僕らもお客さんの顔が見たいですから。でも、結果として、伝わったんだって思えてよかったなって。

――なるほど。ファンの方を喜ばせたいというのはもちろんあったと思うのですが、15年以上前のアルバムをライブすることに、ホリエさん自身はどんな意味を感じていたのでしょう?

僕自身は、新鮮な気持ちでできるかな、楽しめるかなと不安な部分もありました。でも、これだけライブをやれていないと、4人で一緒に音を鳴らすっていうことだけでもすごいワクワクしましたね。

あと、20代の頃に、人間的な経験も浅い自分が書いた言葉が、今になって、当時の自分はたぶん深い意味もなく何も考えてなかったと思うんですけど、逆に今だからリアルに共感できることも多くて。

15年の間に、知った痛みや悲しみがあって、当時とは違う気持ちの上で強く言葉が響いてくることに気付きました。何か自分が意図してたことじゃないんだけど、聞く人やタイミングによって違った意味で心を揺さぶられることがあるんだなって。

夢を叶える秘訣は覚悟と意志の強さ

――1つのことを継続している中で、なにもかもを投げ出したくなるようなことってあると思うのですが、ホリエさんはどのようにして乗り越えているのですか?

ライブで、ファンと向き合った時に、その表情から力をもらうことが多かったですね。もともとは自分たち本意というか、人の声に揺るがない音楽を作るというのを大切にしてきたバンドなんですけど、10年、15年、20年を超えて、素の自分たちを見せられるようになりました。

――もともとは素を見せないようにしていたんですね。

MCもせず、笑いもせず、苦しみ走りながら歌ってましたね(笑)。自分たちを追い込んでいる表情の方がかっこいいと思って。

でも、そういう表情をしてたからこそ、今は楽しい気持ちとか感謝を表すようになってますね。楽屋でくだらない話をしているそぶりなんて見せないようにしていたけど、今は気付いたらMC20分くらいやっているときもあるし。

昔は、「こういう風に見られたい」にこだわりすぎていたけど、かっこつけなくてもいいかって思えているんです。全てにおいて自分たちができることと、自分たちにしかできないことが明確ならいいのかなって。

――大学生の中には、夢はあるけど周りからの反対で諦めてしまうような人も多いです。

あー…僕も高校生の頃からバンドをやっていて、バンドのために上京したいから東京の大学を受けたんですね。そのことを両親は理解していたんですけど、いざ大学卒業を前にして「就職はせずにバンドをやる」といった時には、反対はされましたね。

――そういうとき、どのようにして強い意志を貫いてきましたか?

うーん…「バンドしかやりたくない」という確固たる気持ちがあったので揺らぐことはなかったんですよね。肯定はされなかったけど、絶対に意見を曲げないから、両親も負けてくれました。

――それはなぜなんでしょう?

なんでかわからないんですけど、自分では絶対「そうなる」っていう意志と自信がありました。大学を卒業した段階では「バンドでご飯を食べていく」みたいなところには全く達していなかったんですけどね。

もちろん音楽で食べていける人ってわずかなのは事実だと思うんですけど、自分の覚悟と意思が強い人ほど残っているんじゃないかな。たぶんですけど、反対されて辞めちゃうということは、「言われたからやめる」という口実にしているだけで、もしかしたら自分がすでにふるいにかけているのかもしれません。

――たしかに。口実にしちゃえば楽ですもんね。最後にホリエさんが学生時代に「これだけはやっておけばよかった!」ということがあれば教えてください。

もっといろんなことを経験すればよかったなと思います。大学のときは、サークルにも入らず、誘われてもほとんど遊びにもいかず、自分だけの無駄な時間を過ごしているが多かったので。

僕、音楽を通じて出会う人には人見知りしないんですけど、もともとはこだわりが強いし、相手の内面を見てしまうから結構めんどくさがりで、本当に仲良い友だち数人としか関わっていなかったんですよ。きっと同級生からは謎な存在だったと思います。

でも、そう思う一方で、当時の自分を否定する気は全くなくって、無駄な時間を過ごしたことも今に繋がってると思いますね。

――どういうことでしょう?

無駄な時間の悶々とした気持ちが、今の音楽につながっている感じがするんですよね。反動って大事だと思うんですよ。ずっと真面目なこと考えてて、そのまま真面目なまんまっていう人よりも、「学生時代、あんなに遊んじゃったから、ちゃんと働かなきゃ!」って思える人もいると思うんです。

今の若い人たちってすごいしゃべれるというか、質問に対して答えがちゃんとあるなと感心するんですよね。僕、なんも答えれないタイプでしたから。それでも、今こうやって好きなことができているのだから、時には余白を楽しんでみても良いのかなと思います。

編集部:ゆう

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