日本人はなんで遅刻には厳しいのに、残業には寛容なの? #もやもや解決ゼミ

編集部:ゆう
2020/11/27
学生トレンド
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日常に潜む「お悩み・ギモン」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ

遅刻はよくないことですが、時には必要以上に怒られてしまい「そこまで厳しくなくてもいいのに……」と思う人もいるのではないでしょうか? その一方で、残業に関してはなぜか遅刻ほど厳しい目でみられていません。これはなぜなのでしょうか?

「日本人が遅刻に厳しく、残業には寛容な理由」を、千葉商科大学国際教養学部准教授で働き方評論家の常見陽平先生に伺いました。

精神論だけでなく日本の雇用システムにも原因が

「日本人が遅刻に厳しく、残業には寛容な理由」として、まずは「現在の社会システムの問題」が挙げられると考えています。

もし学生が友人に「君のお父さんは何をしている人?」と質問した場合、どう答えるでしょうか? 具体的な仕事内容ではなく「〇〇という会社に勤めています」と、所属を伝えるケースが多いのではないでしょうか。日本では「就職」ではなく「就社」。「会社に入る社会」という文化があるのです。

加えて、仕事の内容も多岐にわたり、同時に複数の業務を行うことも珍しくはありません。従業員には、いろいろなスキルを覚えてもらい、さまざまな仕事をマルチタスクで行ってもらうのです。また異動や昇進・昇格もあり、仕事の中身がおおきく変わることもあります。

つまり、日本の場合は一人の社員が複数の異なる仕事を任される環境にあるということです。企業は、新たな取り組みを始める場合、専任の人を雇うのではなく、すでにいる社員に仕事を割り振ることで対応しようとします。これも残業の発生原因の一つです。繁忙期に人を雇って対応するのではなく、残業によって業務を乗り切ろうとするのです。

また、よく言われる「同調圧力」もあるでしょう。みんなで一緒に働いているからこそ会社には仲間意識が生まれます。そのため、一体となって働こうという考えや流れに乗らない人、つまり遅刻する人には厳しい評価が下されます。

例えば皆さんが学園祭の準備をするとき、「他よりいいものを作りたい」という気持ちをみんなで共有して作業を行うと思います。それなのに集合時間に来ない人がいれば「なぜこの人は遅刻するのだろう」と不満に思うはずです。また、いいものを作りたいという気持ちがあれば、遅くまで残って作業をすることもいとわないでしょう。

「遅刻に厳しく、残業には寛容な理由」は会社も同じです。しかし、環境が異なるため「納得いかない」と感じる人が多いのだと考えられます。

変化する社会を楽しみながら働くことも大事

日本は顧客に対して丁寧かつ豊富なサービスを提供しており、その点が高く評価されています。しかし、一方で「神対応」と呼ばれるように、その丁寧すぎるサービスが企業を苦しめています。

ひたすら便利さを換金化することで成り立ってきた日本ですが、それも限界に来ています。

わたしはコンビニの24時間営業問題や、ネット通販のトラフィックが増え、物流業界の過労が問題となった2010年代後半くらいが「安くて便利な日本のサービス」の終わりだと思っていますが、次のもうけ方が見つからないので、いまだに人と時間を使うことしかできません。もっともうかる手段があれば、企業にも余裕ができ、遅刻や残業に関する考え方も変わってくるのではないかと思います。

また、働き方改革で早く帰りましょうという考えが広まっていますが、結局は仕事する時間が圧縮され、残業せざるを得なくなっています。

「いつでもどこでも誰とでも働ける仕組みが必要」といわれていますが、新型コロナウイルスの影響でテレワーク環境を導入する企業が増え、その仕組みが成り立ちつつあります。しかし、柔軟なようで硬直した働き方になる矛盾をはらんでいます。

つまり、自由に働いていいといいつつも、結局は他の人の働き方・時間に合わせないといけなくなったり、仕事とプライベートの境目があいまいになったことで、結果的に普段よりも遅い時間まで働かないといけなくなったりするのです。

欧米のようにしゃくし定規でサービスを提供したり、仕事の中身を明確に定義し雇用契約を結ぶジョブ型に移行する可能性もありますが、それが必ずしも正しいとはいえません。分業化も一体感やチームワークが失われたり、その人が辞めると代わりがいなくなったりと問題もあります。他の会社でも通用するスキルの獲得が大事だと叫ばれますが、その機会をどう設けるかも課題です。

とはいえ、今回のコロナ騒動によって人と会わずに仕事ができる仕組みができるなど、世の中の情勢によって新しい働き方が生まれるものです。この先も新しい働き方が生み出されていき、「遅刻に厳しく、残業には寛容」という考えも大きく変わるかもしれません。それがよいものかは分かりませんが、これから社会に出る皆さんは、そうした「変化」も楽しみながら働いてほしいですね。

日本の社会が「遅刻に厳しく、残業には寛容」であるのは、精神論だけでなく、現在の日本社会、日本企業の仕組みにも原因があるとのことでした。今後、日本企業が新たなもうける手段、新たな付加価値を見いだすことができ、社会の仕組みが変わると、こうした考えは変わる可能性はあります。これからどのような変化が起こるのか、それがよいものとなるのかあしきものとなるのか、注目したいところです。

イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp

教えてくれた先生

常見陽平 Profile

千葉商科大学国際教養学部准教授、いしかわUIターン応援団長、働き方評論家、社会格闘家。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師(現:准教授)。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。平成29年参議院国民生活・経済に関する調査会参考人、平成30年参議院経済産業委員会参考人、厚生労働省「多様な選考・採用機会の拡大に向けた検討会」参考人、「今後の若年者雇用に関する研究会」委員、第56回関西財界セミナー問題提起者などを務め、政策に関する提言も行っている。ラジオ番組bayfm『POWER BAY MORNING』レギュラーコメンテーター。

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家族との時間がなにより一番大事!!お酒と音楽とオーディオが大好きな、アラフィフ(気分はお兄さん)です。

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