ヒップホップが生きる勇気をくれた。SKY-HIが語る葛藤と苦悩、そして自由とは #19才のプレイリスト

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人生はきっかけの連続だ。だからこそ、自分のやりたいことをどう選べばいいのかわからない。今何をするべきなのか迷ってしまうという大学生のために、「音楽」という道を選んだアーティストに直撃し、19才の頃に聴いていた楽曲を元に人生観を語っていただく連載『#19才のプレイリスト』。

第9回目となる今回は、SKY-HIさんが登場。レーベル非公認で、クラブやMCバトルに出入りし始めた頃のエピソードを中心に、お話を伺いました。自分自身を保つために、物事を成し遂げるために、必要な考え方とは?

文:蜂須賀ちなみ
 写真:友野雄(YU TOMONO)
編集:学生の窓口編集部

就活の一環としてオーディションに挑戦?

――過去のインタビュー記事に よると、「就職活動の一環として、高校生の頃にavexのオーディションを受けた」とのことですが。

SKY-HI:「就活の一環として」という言い方だとだいぶ省かれてはいるんだけど、正しいっちゃ正しくて。

avexって、松浦 勝人という人が、一代で築き上げたレーベルなんですよ。他のメジャーレーベルは外資の会社やどこかの子会社がほとんどだったので、こりゃスゲーなと思って。そこから、音楽ビジネスに興味を持ち始めました。

10代の頃は、目に映るすべてが好奇の対象だったので、「どんな感じなんだろう?」「この機会に見てみよう」という感覚でオーディションを受けてみました。最終的に(音楽業界で)働かないにしても、「どういう職種があって、どういう人が働いているんだろう?」というところに興味がありましたね。

――中高一貫で私立大附属 の高校だったんですよね。「将来のことは、大学に通いながら考えればいいか」とは思わなかったですか?

思わなかったですね。10代のうちに社会経験がほしかったから「大学卒業したときにはもう22才じゃん」と思っちゃったんですよ。というか、小学生の頃から、そういう考え方だったかもしれないです。

元々、その学校に入ったのも、やりたいことが出てきたときに、高校入試・大学入試に時間を取られるのが嫌だったからで。まあ、いざ高校に入ってみたら、音楽以外のことに興味がなくなっちゃったんですけどね。

――意識高いですよね。

いや、ただ好奇心があるだけですよ。何せ当時は、目に映るすべてが好奇の対象だったので(笑)。

普段、オーディションの様子を見る機会ってないじゃないですか。それをまんまと見ることができたのが楽しかったですね。だからそんなに深くは考えていなかったんだけど、気がついたらオーディションに合格し、演者側で話が転がっていって。

19才のプレイリスト

――日高さんが19才の頃といえば、SKY-HIという名前をもらい、レーベル非公認でクラブやMCバトルに出入りし始めた時期です。

ヒップホップ以外の音楽も好きだったんだけど、その頃から、日本のヒップホップがおもしろくなっちゃって。どうにもこうにもおもしろくて、リスナーでいるだけでは収まらなかったですね。衝動が止まらなくなってしまいました。19才の頃の自分は、「やってやるぞ」というモチベーションと「ただただ楽しい」という気持ちから、週5でクラブに通っていました。

――当時よく聴いていた音楽を紹介していただけますか。


2005~2006年は、後に残る名盤が連続してリリースされていた時期だったんですよ。その筆頭がSEEDAの『花と雨』。KEN THE 390の『プロローグ』や、TARO SOULの『SOUL SPITS』もそうですね。

「毎月何かしらおもしろいアルバムが出てくる」という状況は、今だったら珍しくないけど、当時の日本はCD文化でしたから。そう考えると、スゲー時代だったなぁと思います。

――19才の頃はどんなことで悩んでいましたか?

すべてにおいて「ギャップがある」と感じていました。

たとえば、世の中で聴かれている音楽と、自分が好んで聴く音楽との間のギャップもそう。自分が「すごいアルバムきた!」と思った作品のことを、レコード会社の人すらも知らない、みたいな。

仕事や身の回りに関することでも、「自分の価値観は、周りとあまりにもそぐわない」と感じることは多かったですね。周りの人たちのほうが正解なのだとしたら、正解以外のことを感じる自分のことを、正しいとは決して思えなかった。19才の頃は、そこに対して苦しんでいました。

当時は「まあ、世の中そういうもんだから」と思っていたし、ある種達観していたかもしれないですね。究極なまでに、エゴがなかった気がする。

――そうやって自己防衛していたんですかね。

いや、もうしょうがないというか。それ(周囲とのギャップ)は、自分で変えられるものではないので、最初から諦めてました。

逆に言うと、そこから20代前半にかけて、グラデーション的に「物わかりの悪い大人」になっていったのは、「どうにかなる」という可能性が出てきたからなんでしょうね。

――というと?

2008年ぐらいから、インターネットがおもしろくなり、CDが死んでいくことが目に見えてわかるようになったじゃないですか。そうなったときに、「世の中が変わるぞ」という実感があったんですよね。

「世の中が変わるぞ」と言うと、あまりにも大きなことに聞こえるかもしれないけど、ざっくり言うと、「いい感じの音楽が、いい感じに聴かれるようになることも、全然有り得るな」という感覚。

20代前半の頃はギラギラしていたし、一夜にして世界が変わるような夢を、毎晩のように見ていました。

傷ついたとき、ヒップホップが生きる勇気をくれた

――ヒップホップの世界だと、コンプレックスさえも武器にしてしまうか、いっそ最後まで隠し通すかの二択で、日高さんは、前者にあたる人だと個人的には認識しています。そのメンタリティは、ヒップホップをやっているうちに培われていったんですか?

まさにそうだと思います。ここで言うヒップホップは、「音楽ジャンルとしてのヒップホップ」というよりかは「精神性としてのヒップホップ」なんですけど……自分はヒップホップのそういうところに救われている気がしますね。

19才の頃はまだ、自分をかたどる要素が大してなかったし、「あいつ、avexで音楽やっているらしいぜ」みたいなことを言われることもなかったんですよ。だけど、20代前半から、心ない言葉が矢のように飛んでくるようになって。さらに、J-POPの文化のなかでは「ラップは間奏にちょこっと入ってくるもの」という認識が当たり前にあり、そこに対してモヤモヤする気持ちもあったんですね。

それで20代中盤から、閉鎖的な環境を抜け出したくてロックフェスに行ったら、それはそれで、別の戦いがあるし……。

――常に何かしらと戦っていたと。

そういった各種偏見・色眼鏡と向き合うことは、今や日常なんですけど、何せ20代前半の頃は、そういった痛みに触れるのが初めてだったので。

……傷つきましたよね。そういうときに、生きたり戦ったりするための勇気をくれるものが、ヒップホップだった。それは間違いないと思います。

それに、ずっと変わらず楽しかったんですよね。ヒップホップはテンプレートがなくて、音楽として常にフレッシュなので。

――ヒップホップの精神性から、わたしたちが学べることもある気がして。「結局は自分の信じたことを成し遂げるのが大事」というのはわかるんですけど、とはいえ、外から飛んできた声によって、心が折れそうになること、惑わされることもあるじゃないですか。

あぁ~、そうですよね。

――そういうとき、自分をどう保てばいいと思いますか?

それは、数年後の状態を明確に想像するしかないですね。

たとえば「ムキムキになりたい」と思ったときに、ふんわりそう思っているだけだと、多分どうにもならないんですよ。だけど、筋肉の具体的な造形や、その筋肉を以ってして着たい服、その姿で生きている毎日が想像できれば、自ずと「今日食べるごはん」や「明日やるべき運動」も決まってくるはずで。

だから、イメージが具体的で明確であるほど、成し遂げられるようになるんじゃないかと思います。逆に言うと、具体的に想像できないのであれば、それを成し遂げるのは、なかなか難しいかもしれない。

周りの人が「そんなの無理だよ」と言ってくることってあるじゃないですか。それはすごく無責任に聞こえるし、傷つくかもしれないけど、理がないとは限らないというか。ひょっとしたら、その人なりのやさしさから、そう言ってくれているのかもしれないですよね。

――確かに。

「やらない後悔よりやった後悔」ってよく言うけど、逆に、「やってみて、それでも後悔した場合はどうすればいいんだろう?」とも思うわけですよ。「無理だよ」と言われたときにやめたことによって、幸せになれた人も少なくないだろうし。

つまり、どんな言葉にも絶対的な正義は存在しないんです。

だからこそ、「自分で責任を負えるかどうか」という話になってくるんですけど、具体的に想像できるところまでいけば、きっと、責任は負えると思うので。そうしたら初めて、自由が手に入るんです。

人生の振り返り、次章への布石としての『SKY-HI's THE BEST』

――日高さんもそうやってここまで歩んできたと。

そうですね。さっきも話したように、20代前半のときに「どうにかなる」、「どう考えてもなんとかなる」と思ったんですけど、そう思えるようになるとやっぱり、やらずにはいられなくなるじゃないですか。

そういう好循環が生まれると、心をいくら乱されようとも、大筋が変わることはないんですよね。ふとした瞬間に泣きたくなることはいまだにありますけど(笑)、そうやってなんとか、2020年9月まで生きてこられたので、ベストアルバムを出せました。

――『SKY-HI's THE BEST』はCDで言うと3枚組で、計46曲を収録。初収録の新曲が5曲もありますし、既出曲は全曲リマスタリングされています。再録もかなり多いですね。

再録に関しては、予算の許す限りというか。「2曲分の予算がある」「ということは、家で録ればもっと(再録の)曲数増やせるかな?」みたいな感じで、できるだけ多く、録り直したり、サウンドを作り直したりしています。

原曲は原曲でリスペクトしているんですけど、昔の曲を聴くと、「ボーカルプロダクトが甘い」とか「サウンドの鳴りがちょっと弱い」とか、気になることが非常に多いんですよ。このタイミングでそこを調整できたのはすごくうれしいことです。

今回ベストアルバムをリリースすることにした理由は、主に二つあるんですけど、一つが、今話したことで。もう一つの理由はというと、このタイミングで、活動の流れに一度区切りをつけたかったんですよね。

――区切りをつけたくなったのは、次に向かうべき場所が明確になったからですか? というか、その辺りについて、今訊けたりしますか?

それはね、訊けたりしないんですよね……(笑)。

――!!! 気になります。

ははは、そうですよね! でもまぁ、今日話したような、葛藤や苦悩と一緒に歩いてきたこれまでの人生が詰まった、ベストアルバムになったんじゃないですかね!

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< New Release >

BEST ALBUM『SKY-HI’s THE BEST』

2020/09/23 on sale

・EC STORE

  https://avex.lnk.to/SKY-HIs_THE_BEST

・配信LINK

https://SKY-HI.lnk.to/best_al

<#SKYHI実家ワンマン -Family Homesession->

2020/09/26 18:00〜

SKYHICHANNEL

Guest : STAMP, Reddy (HI-LITE RECORDS)他

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編集部:ゆう

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学生に「一歩踏み出す勇気」を持っていただけるような記事を届けたいです。

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