秋になると葉の色が、決まって「赤」「黄色」に変わるのはなぜ? #もやもや解決ゼミ

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秋になると少しずつ木々の葉が色づきます。こうした葉が色づく現象を「紅葉」といいますが、そもそもなぜ葉の色が変わるのでしょうか?

秋になると葉の色が、決まって「赤」「黄色」に変わるのはなぜ? #もやもや解決ゼミ

今回は、「紅葉のメカニズム」について、山口大学 教育学部 理科教育の柴田勝准教授にお話を伺いました。柴田先生は植物生態生理学、森林科学が専門で、「樹木の生理現象」について研究されています。

葉の色が「赤色」に変化するのはなぜ?

秋になると、樹木の葉が「赤色」や「黄色」に変化しますが、実は「色が変わるメカニズム」はそれぞれ異なります。

秋から冬にかけて、夜間の気温が8~10℃を下回る(※)と、葉柄(葉身と茎をつなぐ柄)の付け根に「離層」と呼ばれるコルク層が形成されます。離層ができると、光合成によって作られた糖が葉の外に移動(転流)できずに葉内に蓄積し、これを基質(生合成するための材料)として、「アントシアニン」と呼ばれる赤色の色素が合成されます。

また、気温が低下すると、葉の中にあるクロロフィルという「緑色の成分」が分解される現象(クロロフィル分解)も起こるので、葉の色が緑色から赤色に変化するのです。

(※地域により多少異なります。)

葉の色が「黄色」に変化するのはなぜ?

一方で、葉の色が黄色に変化する場合は、仕組みが異なります。

そもそも葉には「カロチノイド」という黄色の色素が含まれています。しかし、緑色の成分であるクロロフィルのほうが多いため、普段は黄色が目立つことはありません。ところが、低温や離層形成によりクロロフィル分解が起こり、緑色の成分が薄くなると、今まで目立たたなかったカロチノイド色素が強調されます。その結果、葉の色が緑から黄色に変化します。

葉が赤色になる木と黄色になる木がありますし、同じ木でも葉が赤色と黄色に分かれる場合があります。この違いは赤い色素が合成されるかどうかです。気温低下や離層形成などにより緑の色素が分解された際、アントシアニンが合成されれば赤色に変わり、合成されなければ黄色になるということです。

春に紅葉する木もある?

葉の色が変わる現象といえば「秋に起こるもの」と考えている人が多いのではないでしょうか? しかし、秋の紅葉ほど顕著ではありませんが、春の新芽のときにもアントシアニンによって葉の色が赤色に変わります。これはカエデやツツジなどの身近な樹木でも起こります。

樹木の新芽は、光合成を行うための準備ができていないため、強い太陽光が直接当たると枯れてしまいます。そのため、葉の表面の柵状組織の細胞に、アントシアニンを蓄積させて、葉の内部に強い光が入らないようにするのです。アントシアニンは、植物の光合成に必要な光とよく似た波長の光を吸収することができるため、組織内部に日陰を作る日傘の役割をします。

その後、葉の成長と共にアントシアニンがなくなり、緑色に変化。赤色の葉が緑色に変わるという、秋の紅葉とは反対の現象が起こります。

他の色ではなく、「赤色」や「黄色」になるのはなぜ?

緑色から黄色への変化は、先述のようにクロロフィルが分解したために、緑色で隠されていたカロチノイドの黄色が出てきたことによります。このため、「黄色でなければならない」という積極的な理由は見つけにくく、カロチノイドが黄色であったために黄葉となった、という理由以外を考えるのは難しいでしょう。

一方、赤色への変化ですが、なぜわざわざ大切な光合成産物の糖を用いてアントシアニンを合成するのでしょうか? 要因の一つとして、春の紅葉と似た理由が挙げられます。

光合成は、繊細なバランスを保ちながら維持されています。そのため、気温が急激に低下するとバランスが崩れ、光合成の活性が低下。受けた光を十分に利用することができなくなります。そのため、光合成に利用できなくなった光は過剰なエネルギーとなり、葉の枯死を誘発するのです。

樹木は、葉が落葉するときまで光合成を続けているので、ここでアントシアニンを合成し、葉の内部に入ってくる光の強さを減らします。つまり、葉が赤色になる理由は、最後まで光合成を行うためだと考えられます。 同じ樹木でも光が強く当たる南側とあまり当たらない北側では、紅葉の色が異なる例が見られるのは、こうした光合成の観点から説明できます。

美しく紅葉する条件

きれいな紅(黄)葉になるには、離層の形成、光合成による糖の蓄積、クロロフィルの分解などの促進、急激な葉の枯死・落葉の抑制などが起きる必要があります。そのため、「日中と夜間の気温差が大きく、明け方に急激に冷え込むこと」「山の斜面全体を照らす十分な日射「適度な湿度」が重要となります。しかし、秋に夜の気温が低下せず、曇天が続く年は、十分に紅葉することなく落葉してしまうこともあるのです。

秋の風物詩でもある紅葉ですが、緑色の色素が分解された上で、赤色の色素が生成されると葉が赤色に。一方、赤色の色素が生み出されなかった場合は、隠れていた黄色の色素が目立ち、葉も黄色になるとのこと。それぞれ別のメカニズムであることを知らなかったという人も多いでしょう。この秋に紅葉を見に行く際は、今回柴田先生に教えてもらった情報を覚えておくと、より楽しめるかもしれませんよ。

イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp


教えてくれた先生

柴田勝 Profile

山口大学 教育学部 理科教育選修 准教授
1997年、九州大学農学研究科博士後期課程、2012年山口大学教育学部准教授。草にはない木に特異的な機能を光合成や色素の視点から研究を行っている。専門は樹木生態生理学。
⇒山口大学 教育学部・教育学研究科 理科教育
http://edu.yamaguchi-u.ac.jp/staffs/staffs/Undergraduate/Science/Science.html#SubAdrR47C1

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お笑いとK-POP好き。名前の由来は「すいすい物事がうまくいくように」「水のようにチームになくてはならない存在になるように」から。
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