ハロウィンがここまで日本に根付いた理由って? 渋谷ハロウィン流行の原因を調査! #もやもや解決ゼミ
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10月31日はハロウィンですね! もともとは秋の収穫を祝い、悪霊を遠ざけるための海外の行事でしたが、現在ではカボチャをくり抜いた「ジャック・オー・ランタン」を飾るなど、主にアメリカのイベントとして定着しています。
近年日本では、仮装して渋谷のスクランブル交差点など街を練り歩くイベントとしていつの間にか定着しましたが、などうしてここ数年でこれほどまでに根付き、拡大したのでしょうか?
ハロウィンが根付いた理由について、明治大学情報コミュニケーション学部の南後由和准教授に答えてもらいました!
日本では1970年代からハロウィンイベントが行われていた
学生の中には、日本におけるハロウィンは最近になって急に普及したと思っている人もいるかもしれませんが、実はそうではなく、日本でも30年以上の歴史があります。
日本では、古くからクリスマスやバレンタインデーなどの海外文化を商業活動に取り入れ、「外来文化の年中行事のイベント化」を行ってきました。ハロウィンも同様で、1970年代に洋菓子店などがハロウィンを販売促進のために取り入れたのが最初だといわれています。
その後、1980年代にはホラーブームの後押しもあって、洋菓子店以外でもハロウィン関連のグッズを取り扱うようになりました。しかし、1990年代にアメリカでハロウィンパーティーに参加しようとした日本人留学生が射殺される事件がおこります。
この事件の影響もあって日本におけるハロウィンはいったん低調になりますが、テーマパークでハロウィンのイベントが行われるようになったことで再び注目され、さらに広がりを見せるようになりました。
この辺りの流れは、消費文化の研究者の方々がすでに指摘していることです。
仮装することと日本人の気質がマッチした
ここまでハロウィンが定着した背景には「日本人の気質」も影響していると思います。日本人は「外」ではあまり自分を出せないといいますか、感情を素直に表現することが苦手です。
しかし、仮装というワンクッションを挟むことで、自分を素直に出せたり、初対面の人ともコミュニケーションが取れたりします。仮装することで「普段とは違う自分になれる」という変身願望が満たされ、日常の中で「非日常」を感じる解放感も味わえるのです。
また日本では1990年代前後からコスプレ文化が広がり、現在ではかなり一般化しました。こうしたコスプレ文化と仮装をするハロウィンとの相性がよかったことも、近年になってハロウィンイベントが受け入れられるようになった背景の一つだと思います。
SNSの普及で広く情報が拡散し、参加者が増えた
スマートフォンやSNSなどソーシャルメディアの普及が、ハロウィンの拡大化に拍車をかけたともいえます。
例えば、ハロウィンの日になると毎年のように多くの人が渋谷などに仮装して集まります。この模様は、マスメディアやソーシャルメディアを通じて拡散されますから、実際にそこに行ったことがない人にも、その盛り上がりは伝わります。そうすることで「次回は参加してみよう!」と思う人が新たに出てくるわけです。
特に渋谷スクランブル交差点周辺は、群衆で埋め尽くされています。実際に訪れてそこに身を置いてみると、情動や熱狂といった、リアルの場だからこそ体験できるものがあります。また現場では、他の参加者とその場かぎりの広く浅いコミュニケーションを楽しみつつ、そこで撮影した写真をSNSにアップするなど、情報空間上でも集団的体験を共有できるのです。
こうした情報が「物理的な都市空間」と「ソーシャルメディア」の間でループを繰り返すことで、自らも参加して体験を共有したいという人がさらに増え、特に渋谷など都市部でのハロウィンが拡大したのではないでしょうか。
渋谷の街のハロウィンが流行した理由とは?
渋谷の街の中でも、特にスクランブル交差点はイベントがあるたびに多くの人が集まって騒ぐスポットとして、広く知られています。この傾向は1999年年末の「ミレニアムカウントダウン」から始まり、2002年の日韓ワールドカップ辺りから、群衆の規模の大小はありますが、恒例行事のようになりました。
実は、スクランブル交差点は空間的形態として、すり鉢状の地形の底に位置し、建物によって囲まれた、劇場やスタジアムのアリーナのような形状になっています。
そのため「QFRONT」や「渋谷マークシティ」など、多方面からスクランブル交差点を見下ろすことができ、スクランブル交差点を行き交う人が役者で、見下ろす人が観客といった「見る・見られる」の構造になっているのです。
こうした渋谷スクランブル交差点の空間的条件も、マスメディアの映像やモバイルメディアの写真との相性がよく、渋谷でのハロウィンの拡大化に影響したのではないでしょうか。
日本では1970年代からハロウィンの文化が広まっていたものの、昨今のように街に仮装した多くの人が集まり大騒ぎするというのは、「SNSの普及」が大きく影響しているとのこと。
また、仮装することで解放感を味わい非日常が感じられるのも、参加してみようという人が増えた要因。こうした複数の理由が重なりあって、ハロウィンは日本に根付いたようですね!
ただ、あまりにも盛り上がりすぎるため、渋谷ではゴミの投棄などさまざまな問題が起きており、今後さらに規制が設けられたり、ハロウィンイベントの禁止といった最悪のケースになったりする可能性もあります。
仮装して盛り上がるのはいいですが、周りに迷惑をかけないようしたいですね。
イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp
教えてくれた先生
南後 由和
明治大学情報コミュニケーション学部准教授。社会学、都市・建築論。1979年大阪府生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。主な著書に『ひとり空間の都市論』(ちくま新書、筑摩書房、2018年)、『商業空間は何の夢を見たか』(共著、平凡社、2016年)、『建築の際』(編、平凡社、2015年)、『文化人とは何か?』(共編、東京書籍、2010)がある。
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