リアル「ひと狩りいこうぜ!」 東京大学狩人の会
近年、イノシシやシカといった野生動物の肉「ジビエ」が注目されていますが、実は東京大学に、そうした野生動物を狩る猟師たちのサークルがあるのをご存じでしょうか? その名も『東京大学狩人の会』です。
今回は、『東京大学狩人の会』の具体的な活動や、発足の経緯などを調べてみました!
※caution!この記事内には解体後の動物の皮の写真などが登場します。苦手な方はご注意ください。
リアルで「ひと狩りいこうぜ!」をしているサークル
『東京大学狩人の会』の代表・小林義信さんにお話を伺いました。
――『東京大学狩人の会』がどんなサークルなのか教えてください。
小林さん 『東京大学狩人の会』は、狩猟とそれに付随する活動を行うサークルです。私が1年生だった2016年の10月に設立しまして、もうすぐ丸3年を迎えます。
立ち上げ当初は4人でしたが、現在は学生のみで50~60人、OB・OGを含めると70人近い人数が参加しています。
――実際に鉄砲やわなを使って動物を捕っているのですか?
狩猟免許を持っているメンバーは、11月15日から2月15日までの猟期(猟をしてもいいと定められている期間)の間は、実際に狩猟を行っています。
私も猟隊に入って、狩りに参加しています。長期休暇中は、千葉にあるサークルの拠点に泊まり込んで、そこで「わな猟」を行うこともあります。
――捕った獲物の解体も自分たちで行うのですか?
はい。狩った獲物は自分たちで解体し、調理して食べています。とにかく無駄なく食べようということで、できるだけ全ての部位を食べるようにしています。
例えば、イノシシの頭は捨てられてしまうことが多いのですが、もったいないので「かぶと煮」にして食べてみました。口回りの肉がおいしかったですね。
メンバーにプロの料理人もいるので、解体した肉を使った料理はどれもおいしいですよ。
ジビエ肉を使ったさまざまな料理を楽しむ
――猟期以外はどんなことをしているのですか?
猟期以外の期間は、猟期の間に得た毛皮をなめしたり、骨などを加工してアクセサリーを作ったりしています。
また、千葉県にある空き家を改築してサークルの活動拠点にしていまして、その敷地にある休耕地を使って農業も行っています。
夏には昆虫を捕まえて食べる「セミ会」を行うなど、さまざまな活動を行っています。
皮なめしの模様
拠点では農業も実施。順調だそうです。
幼いころから自給自足の生活に興味があった
――小林さんは昔から狩猟に興味があったのですか?
小学生のころからサバイバルの本が好きで、その中に書かれている自給自足の生活に憧れがありました。ですから、本を読んで得た知識を基に、食べられる雑草を探したり、虫を食べたりしていましたね。
ただ、高校2年生のときに、自然に生きる哺乳類や鳥類を捕まえて食べるのには「狩猟免許」が必要だということを知ったのです。
狩猟免許取得が18歳から、鉄砲の所持免許が20歳からなので、「じゃあ大学に入ったら猟の免許を取ろう」と考えました。
――なぜサークルとして立ち上げたのでしょうか?
東大でシカを解体する授業があり、それに参加した学生の中に自分と同じように「狩猟がしたい」という人が何人かいました。
そこで、彼らと狩猟をするサークルを立ち上げようということになり、設立することになったのです。運良く狩猟について教えてくれる人がいたのも大きかったですね。
――狩猟免許があっても、ノウハウが何もなければ猟をするのは難しいですよね。
基本的なルールだけでなく、地域によって約束ごとが違いますから、いろいろと教えてくれる師匠が見つかったのは幸運でしたね。
後、私はもともと『東大うどん部』に入っていたのですが、実は立ち上げメンバー4人のうち、私を含めた3人が『東大うどん部』の部員なんです。
――『東大うどん部』がなければ『東京大学狩人の会』はなかったかもしれないのですね。
そうですね。『東京大学狩人の会』は『東大うどん部』が母体なんですよ(笑)。
狩猟に限らず幅広い活動が楽しめる
――このサークルの魅力は何ですか?
「いろいろなことができる」のが魅力ですね。
自分だけでなく立ち上げメンバー全員が「自給自足の生活がしたい」という思いを持っていたので、最初は純粋に狩りをして、自給自足の生活を楽しむことがメインでした。
しかし、人数が増えた今は、拠点の敷地を使った農業など、狩猟をベースにいろんなことにチャレンジしています。自給自足の幅が広がっているなと感じます。
――肉と野菜は買わなくても手に入る環境になりつつありますね。
拠点がある地域の夏祭りに参加するなどして地域交流も行っているので、ときには顔なじみの人から食べ切れないほどの野菜をもらうこともあります。
本当に何も買わなくても食べていける、完全自給自足生活の環境ができつつありますよ。
――田舎暮らしが満喫できるサークルでもありますね。
実際に体験できるフィールドが用意されているのもうちの魅力です。
田舎の祖父母の家が獣害に遭っていて、その対策を学ぶために入ったという人もいれば、狩猟文化の研究の一環で入ったという人もいますが、実際に狩猟がどんなものなのか経験して学べるのは大きいと思います。
――解体を見て引いてしまう人はいませんか?
今のところいないですね。普段の生活で動物の解体はまず経験できないですから、みんな興味深く参加してくれています。
――小林さんが代表としてこだわっていることは何ですか?
「安全第一」ですね。狩猟は危険と隣り合わせのものなので、その点は最も注意しています。
とにかく無事故無違反で安全第一がモットーです。
興味がある人なら誰でも歓迎
――狩猟が活動のベースということですから、狩猟免許を持っているか、または今後取得するつもりでないと入会できないのですか?
いえ、そんなことはありません。もちろん免許があれば活動の幅が広がるので取得を推奨してはいますが、皮なめしがしたい、おいしい料理が食べたい、ジビエに興味がある、といったことでも大丈夫です。
貴重な経験ができるサークル
――どんな人に入ってもらいたいですか?
免許の有無や取得の意思に関係なく、興味がある人なら誰でも歓迎です。
さっきもお話ししたように、いろんなことにチャレンジできるサークルなので、何か変わったことがしたいという人には、特におすすめです。
また、一応インカレなので、他の大学の人や、大学生でなくても大丈夫です。実際に「皮なめしに興味がある」という中学生もいますよ。
――かつての小林さんのように、自給自足生活に憧れている中学生や高校生にもいいかもしれませんね。
獣害の被害減少を目指す
――サークルの今後の展望を教えてください。
本当になんでもできる環境が整っているので、メンバーたちと相談していろんなことにチャレンジしてみたいですね。
今はピザ窯造りに着手していますが、次は露天風呂を造ろうと思っています。
手製のピザ窯
――自家栽培の野菜とジビエ料理が味わえて、手製の露天風呂が楽しめる……どこかの高級宿泊施設みたいですね。
確かにそういう考え方もありですね(笑)。
――今後の活動予定は?
昨年から各地のイベントに招待されることが多くなったので、これからもどんどん参加していきたいですね。
他にも、獣害の現状を伝えるワークショップを小学校で行いたいとも考えています。将来的には『東京大学狩人の会』のOB・OGたちで連携して、問題解決に取り組みたいですね。
――獣害は年々ひどくなっていますが、小林さんたちの活動が実を結んで、少しでも獣害に困る人が減るといいですね。ありがとうございました。
まとめ
『東京大学狩人の会』は、狩猟をベースに自給自足の生活を楽しむ、まさに人間の狩猟本能を刺激する魅力あるサークルでした。
狩猟以外にも皮や骨の加工や農業、田舎暮らしの実践など幅広い活動を行っているので、狩猟免許を取らなくても楽しめるようです。
いつでも入会可能なので、一度Twitterなどにアップされている活動風景や活動報告を見てみるといいですね。
ちなみに、小林さんがこれまで食べてきた中では「アナグマ」が一番おいしかったそうです。脂が甘くてとてもおいしかったとのこと。
ジビエの中でも隠れた人気を誇る食材だそうで、ジビエ肉を扱う通販サイトなどでまれに買うことができます。興味のある人はこちらもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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(中田ボンベ@dcp)