『おっさんずラブ』Pが新人時代に『アメトーーク!』で学んだこと。希望の配属先じゃなくてもいい。

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8月23日公開『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』。本作のプロデューサー・貴島彩理さんに“人生での遠回り”をテーマにお話を聞きました。「私も学生時代にマイナビさんのサイトを見ていたので、恩返しができれば」と笑顔で話してくれた貴島さんが語ってくれた、入社後のお仕事から『おっさんずラブ』が生み出されるまでの道のりには、漠然とキャリアに悩むあなたのヒントになることがあるかも。

文:落合由希
写真:島田香
編集:学生の窓口編集部

バラエティ時代の文化が、『おっさんずラブ』に生きる。

ーー貴島さんは入社時、ドラマ制作志望だったのに、配属先はバラエティ部だったそうですが、どのようなマインドで過ごしていましたか?

どこの会社でもあることですが、「いちばんやりたい仕事」ではない部署に配属されたので、最初は少し凹みました。あまりバラエティ番組にも詳しくなかったので、番組をたくさん見て勉強したりして。でも「ドラマを作りたい」という夢は変わらず、毎年異動希望を出していました。

ただ「とにかく現場職をやりたい」という気持ちも強くあったので、そういう意味ではピッタリの部署だとワクワクもしました。正直、ドラマ部に行きたい気持ちを忘れるくらい楽しい3年間でした。実際、ドラマ部への異動辞令が出たときも、ものすごくうれしい気持ちと、すごくさみしい気持ちが半々ぐらいで、「まだこの番組にいたい!」って泣いて、先輩にウザがられるっていう……(笑)。そのぐらいバラエティにいた時間はすごく大事な時間でしたし、万が一今後ドラマ部をクビにされた場合は、バラエティに戻りたいと思うくらい、自分にとってバラエティは、大好きで大切な場所になりました。

ーー入社してすぐにドラマを作れるとは思っていなかったと思いますが、そのことは遠回りだとは思いませんでしたか?

結果論ですが、バラエティに行かせていただいて本当によかったと、心から思っています。それが今の自分のドラマづくりにも生かされているとも思います。ADという世に言う過酷な仕事についたことで、現場の隅々まで学ぶこともできたし、仲のいい友人もできました。

バラエティ部時代には、最終的にディレクター職までつかせていただいたのですが、それがすごく楽しくて。ドラマは基本的に決められた台本を映像化していくものであるのに対して、バラエティは「そこで起こったことを逃さないようにする」文化があるんです。本作の瑠東監督もバラエティ出身の方なのですが、現場で突然生まれたアドリブをいかに生かして料理してゆくか、というマインドがあったと思います。バラエティの現場での経験が、偶然にも『おっさんずラブ』にも生かされたのかな、と思います。

それからバラエティ番組は、一般人が行けないさまざまな場所に行くことができるのが魅力です。パン工場の裏側とか、歌舞伎町のホストの本当の生活とか、番組スタッフとして潜入させてもらわなければ知ることがなかった世界を、たくさん見せていただきました。それが今となって、脚本打ち合わせで生きてくることもあります。今年の1月に放送させていただいた『私のおじさん〜WATAOJI〜』は、バラエティ番組のADが主役のドラマだったのですが、ふんだんに体験談が盛り込まれておりました(笑)。

『アメトーーク!』加地Pの言葉を励みに

ーー希望の仕事をするために、「下積み」時代は必要だと思いますか?

私は遠回りはたくさんしたほうがいいんじゃないかなと思います。もちろん、遠回りしている最中は苦しいかもしれないですし、悩むこともあると思いますけど、つらければつらいほど後でネタになりますし。笑い話にならないことって、世の中にほとんどないと思うので。

入社した後の3週間、研修として『アメトーーク!』のADとして働かせて頂いたのですが、そのとき加地さん(『アメトーーク!』プロデューサー)に「つらいと思ったら、それは成長できる瞬間だから負けずに頑張れ」という言葉をいただきました。これは、入社してから8年目の今に至るまでずっと大切にしている言葉です。その言葉があったからAD時代も乗り越えられたのだと思います。

ーーバラエティ部時代から希望の道に進めるように努力していたことはありますか?

それが……私なんというか、抜けているというか……バラエティにいたときはなぜか“全力でバラエティ番組の企画書を出す”という奇行に出ていて(笑)。今考えたらドラマの企画をガンガン出してアピールをすればよかったのかもしれない……と思うのですが、当時は「まずはバラエティ番組でディレクターになって企画を立ち上げたい」と思ってしまって、バラエティの企画書をめちゃめちゃ書いてました。

ーーでも、バラエティに集中することが自分を成長させることにつながったのでは?

やりたくない仕事だからと放り投げて、自分がやりたいことだけに向けて頑張るのではなく、今いる場所でなにかひとつ極めてみることが、結果として夢につながることもあるのだと、異動して初めて感じています。たとえ思った場所と違う位置に立っていると思ったとしても、まずは今いる場所で頑張ってみる。それは決してムダなことではないと思います。

ーー貴島さんは大学では法学部だったそうですが、大学時代での経験が今の仕事につながっている、役に立っているなと思うことはありますか?

ありますね。そもそも法学部を選んだのは、ドラマを作りたかったからなんです。基本的に勉強とか……あんまりしたくないタイプだったので(笑)。自分は何にだったら興味があるかなと考えたとき、「歴史か法律の話だったら、なんだかドラマみたいで面白いかも」と思ったんです。法学部の授業なら、弁護士ドラマや刑事ドラマ、遺産相続で揉めるホームドラマを見てるみたいと思えるし、歴史の授業なら、終始大河ドラマを想起しながら4年間過ごせそう……それって幸せじゃないかって思って。そんな謎の理由で文学部と法学部をめざしていました……(笑)。
おかげで、いつか大学時代への恩返しとして法律モノのドラマも作りたいなという野望もできました!

「王道の恋愛ドラマをつくりたい」スタンスは変わらない

ーー『おっさんずラブ』の映画化が決まったときの心境をお聞かせください。

元々は単発の深夜ドラマから始まって、連続ドラマになったのですが、「映画化なんて夢物語だ」と思っていたので、それがまさかと。こんな奇跡があるのか、という驚きと喜びが強かったです。

ーー映画版の新しいキャラクターに、沢村一樹さんと志尊淳さんを起用した決め手はなんですか?

沢村さんも志尊さんも、純粋に人としても俳優さんとしてもすごくお仕事をしてみたい方だったというのがいちばん大きな理由ですね。ありがたいことに、お二方とも連続ドラマを見ていてくださっていて「おもしろかった」「好きだった」と言ってくださり、今回ご一緒することができて、とても贅沢な座組となりました。

ーードラマのころからいるメンバーと、新キャラクター2人の化学反応はどうでしたか?

まるで1年前から一緒にいたみたいな感じで、思った以上にチームになるのがすごく速かったように思いました。ただ、新メンバーが入ることでみんなに負けず嫌いな熱い気持ちが芽生えたり、新メンバーのお二方も自分が入ることでなにか化学反応を起こせたら……という気合いがあったように見えました。

ーードラマでは、春田と牧はかなり遠回りをしてやっと一緒になりますが、貴島さんご自身は、恋愛においての遠回りは避けられないと思いますか?

そうですね……何事も近道はないと思います。春田において言えば、遠回りをしたというよりは、そもそも「好き」が何かもわからないポンコツアラサーが一歩成長しました、というお話。つまり、牧のことが好きだと気づいて気持ちを伝えようという段階までに7話かかってしまった(笑)。人ってそんな簡単に成長しないと思いますし、大人になればなるほど成長する機会は失われると思うので、むしろ春田は7話で済んでよかったなぁと思います(笑)。

……と語っておりますが、実は私自身も春田みたいなポンコツダメ野郎でして。現場で“さりたん”とイジられることも。道もわからない、日焼け止め塗り忘れて衣装さんに塗ってもらう、ちょっと一口ちょうだいっていう、改札に引っかかる……。「はるたんの悪いところ10個」というのが連続ドラマで出てくるのですが、その10個が「ほぼ貴島」と言われています……。なのでそんな私が恋愛に助言は難しいです……(笑)。

ーー映画化にあたって、ドラマから引き続き出演するみなさんにはどんなことを期待されていましたか?

キャストのみなさんの、お芝居や作品との向き合い方に対しては信頼しかないので、「私たちは変わらない」という思いをただお伝えしました。「舞台が映画になったり、スケールが大きくなるかもしれないけれど、王道の恋愛ドラマであることに変わりはない。“人を好きになるってどういうことなのか”というのがおっさんずラブのテーマであり、そこに対してブレたつもりはないので、脚本を読んでみてください」と。

ーー貴島さん的にキュンとくるイチオシシーンをひとつ教えてください!

金子大地くん演じる麻呂(栗林歌麻呂)と、大塚寧々さん演じる蝶子さんの花火大会のシーンです。麻呂が蝶子さんにあることを伝えようとするのですが、その前に花火を見上げる蝶子さんの横顔を、そっと見ている金子くんの表情が本当に素敵で。台本上そこにセリフはないのですが「蝶子さん、きれいだな」という声が聞こえるようで。ドキドキしました。

ーー貴島さんはこの映画を、特にどんな方にいちばん観ていただきたいですか?

映画のテーマは「夢と家族」。この夏、家族みんなで一緒に観たり、大切な人を誘う口実としても選んで頂けるような“デートムービー”“ファミリームービー”であったらいいなと思います。もちろんお友達とワイワイでも、ひとりで元気をもらいに来ていただいても、どんな形も大歓迎です。

タイトルの印象からなのか、「家族では観に行けない」「旦那さんを誘ったら断られた」という声を聞くこともあって……。でも、この作品は子どもから大人まで、おじいちゃんもおばあちゃんも、誰でも笑って泣けるお祭り映画。ぜひ「みんなで観たい作品」となって、日本中で楽しんでいただけることを願っています。

『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』


8月23日(金)ロードショー
Ⓒ2019「劇場版おっさんずラブ」製作委員会

公式サイト:https://ossanslove-the-movie.com/
公式Twitter:@ossans_love

編集部:すい

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お笑いとK-POP好き。名前の由来は「すいすい物事がうまくいくように」「水のようにチームになくてはならない存在になるように」から。
★ほっとけない学生芸人GP(@gm_hottokenaigp)運営も兼任中。

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