へんてこアート入門 『はじめての古美術鑑賞-絵画のテーマ-』編

編集部:ゆう
2019/07/01
お出かけ・イベント
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美術鑑賞と聞くと「高度な専門知識がないと楽しめないのでは?」と思っている人が多いのではないでしょうか。ただ、各地の美術館で行われている展覧会の中には、初心者でも十分に楽しめる企画展がたくさんあります。

今回は、根津美術館の『はじめての古美術鑑賞-絵画のテーマ-』をご紹介します。

根津美術館

美術館初心者におすすめの企画展

『はじめての古美術鑑賞』について、根津美術館の学芸第二課長「本田諭さん」にお話を伺いました。

エントランスホール

エントランスホール

――今回の企画展の意図を教えてください。

本田さん 日本の古美術のイメージというと、西洋美術と違って地味で、しかもなんだかわかりにくい、と考える方が多くいらっしゃいます。もともと日本美術は、ルネサンス美術や印象派の絵画とは単純に比べられないものですが、そうしたイメージもあって、ハードルが高いと思われがちです。なので、この状況はなんとかならないものか……と当館ではずっと考えていました。

――確かに学生など若い世代では、美術鑑賞が難しいものだと思っている人が多いですね。

本田さん そうした人たちに向けて、3年前から始めたのが、『はじめての古美術鑑賞』シリーズです。この企画展は、古美術の鑑賞経験がない方に、その基礎を知っていただき、古美術鑑賞に興味を持つきっかけとなれば、という狙いで毎回内容を考えています。今回は、「絵画のテーマ」に絞った展示なのですが、もしあおり文句を付けるとしたら「解説を読まなくても主題(テーマ)がわかる!」といったところでしょうか。ともあれ、どなたでも構えず、気楽にご覧いただける内容になっていると思います。

重要美術品 周茂叔(しゅうもしゅく)愛(あい)蓮図(れんず)

重要美術品 周茂叔(しゅうもしゅく)愛(あい)蓮図(れんず) (部分) 伝小栗宗湛(おぐりそうたん)筆 1幅 日本・室町時代 15-16世紀 根津美術館蔵

――本企画展の見どころは?

本田さん 今回は水墨画を中心とした構成です。基本は当館の所蔵品中心ですが、個人の方などからも優品を幾つか拝借しています。これらは古美術ファンの方々でもあまり目にしたことのない作品だと思いますので、ぜひじっくりご覧いただければと思います。

また、単に絵のテーマを羅列するのではなく、各時代にどのような主題が流行していたのかという、時代ごとの画題の流行や変遷もわかるような展示構成になっています。ちなみに、次の企画展では「仏教美術」、秋には「花鳥画」の展示を予定しております。

知識がなくても楽しめるのが最大の魅力!

――「他の展覧会とはここが違う!」というポイントを教えてください。

本田さん 何といっても「予備知識も準備もなしで見に来て大丈夫」という点に尽きます。古美術の展覧会には、コアなファンの方々が多いものですが、この展覧会は、日本美術について全く何もご存じない外国の方々でも十分楽しめるものにしています。解説文も「短い言葉でわかりやすく」を念頭に置きながら書いていますので、どなたでもお楽しみいただけると思います。

――本田さんのお気に入りの展示は何ですか?

本田さん 気に入った作品ばかり出しておりますので選ぶのは難しいのですが、土佐光起(とさみつおき)の「源氏物語朝顔図」という作品は、細部にまでこだわって描かれた、おすすめの作品です。これは、『源氏物語』の第二十帖「朝顔」に登場する有名なシーンを描いた作品で、「光源氏の浮気性を知った紫の上の機嫌を取るため、側付きの童女たちに雪玉遊びをさせている図」です。

源氏物語朝顔図

源氏物語朝顔図(部分)土佐光起筆 1幅 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

本田さん 本作の下部に注目すると、オスのオシドリがメスに向かって必死にアピールをしている姿が描かれているのがわかります。本作のように「お約束のモチーフ」がテーマの作品は、お約束であるが故に、作者が自己の才能を発露するのに制約があるものです。しかし、江戸時代初期に名手として知られた光起は、物語の内容を十分に理解した上で、オシドリが必死にアピールする姿を盛り込むなど、自分なりの表現を行っていることがよく分かります。

――なるほど。そうした作り手の意図が分かれば、興味を持って鑑賞することができますね。

本田さん 本作は小さめの作品にもかかわらず、執拗なまでに細部を描き込んであるのが特徴です。これも光起の技量の高さを十分に知ることができるポイントです。また、細部までご覧いただくなら単眼鏡がおすすめです。ミュージアムショップで貸し出しをしていますので、ぜひご利用ください。意外と面白くてハマりますよ。

細部までじっくり見ることがより楽しむこつ

――企画展をより楽しむためには、どんな点を意識すればいいですか?

本田さん 先ほども述べたように、時間をかけて細部までじっくりと見ていただくことが、何よりも作品理解につながります。他にも、この展覧会では、画題(絵のテーマ)だけでなく、各作品の美しさ・面白さも感じてほしいと考えておりますので、例えば華やかな彩色や対比の妙、墨の微妙な濃淡や筆遣いのスムーズさなど、おのおのの作品の持つ魅力を発見していただきたいです。

――今回の企画展をより楽しむには、事前にどんな準備をしておくといいでしょうか。

本田さん 今回の企画展はどなたでも楽しめるというのがコンセプトですので、事前に学んでおく必要はありません。あえて一つだけ挙げるとすれば、「同じ作品でも見るたびに別の発見がある」ということを覚えておいてほしいです。以前に見たことのある作品があっても、「今回はいいや」と思ったりせずに鑑賞してください。本当に力のある作品というのは、見るたびに違う発見や感動があるものなのです。

――そうした「新たな発見」が新たな興味につながるかもしれませんね。

本田さん そうですね。この展覧会をきっかけに、これからもどんどん古美術の展覧会に足を運んでいただけたら、担当者として学芸員冥利に尽きるというものです。ぜひいろいろな展覧会に何度も足を運んでいただきたいと思います。

――最後に、美術館としての今後の展望を教えてください。

本田さん 根津美術館は、建築家・隈研吾氏設計による展示棟のリニューアルオープンから今秋で10周年を迎えます。これからも、展覧会をはじめとするさまざまな企画を通じて、古美術が持つ魅力を積極的に発信していきたいと思います。

――ありがとうございました。

『はじめての古美術鑑賞』は、専門知識のない初心者でも安心して楽しめる企画展です。古美術が好きな人でもめったに見られないような貴重な美術品も出展されていますから、この機会にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。日本の古美術に興味・関心を抱くよいきっかけになるはずですよ!

はじめての古美術鑑賞-絵画のテーマ-

『はじめての古美術鑑賞-絵画のテーマ-』
会場:根津美術館 展示室1・2
会期:2019年5月25日(土)~7月7日(日)
入館料:一般1,100円、学生800円、中学生以下無料
※20名以上の団体、障害者手帳提示者および同伴者は200円引き
※本企画展の入館料
開館時間:午前10:00~午後5:00(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日、展示替期間、年末年始。ただし月曜日が祝日の場合、翌火曜日
住所:東京都港区南青山6-5-1
http://www.nezu-muse.or.jp/


(中田ボンベ@dcp)

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家族との時間がなにより一番大事!!お酒と音楽とオーディオが大好きな、もうすぐアラフィフおじさん(気分はお兄さん)です。

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