天才も失敗はする? スティーブ・ジョブズが肝いりで始めたけどうまくいかなかった企画
スティーブ・ジョブズはコンピューター業界で偉大な足跡を残した人物です。彼の先進的なビジョンはさまざまな製品、サービスを生み出しましたが、ジョブズの企画が全て成功を収めたわけではありません。うまくいかなかったものもあるのです。
●Lisa(リサ)
1983年に発表されたApple社のコンピューターです。「Lisa」という名前はジョブズの娘から取られたといわれています。それほど気合が入り、また愛着のあるプロジェクトだったわけです(ただし、このLisaプロジェクトのリーダーにはジョブズではなくジョン・カウチが据えられます。ジョブズはこの仇を1984年に登場するMacintoshでとることになるのです)。
●Apple Lisa
CPU:68000(5MHz)
ROM:16KB
RAM:1MB(2MBまで拡張可能)
フロッピードライブ×2基
HDD(外付け):5MB
OS:Lisa OS
モニター:720×360ドット(モノクロ)
このLisaは、モニターと本体が一体となった形状で、外部記憶装置であるフロッピードライブも本体に装備されています。何より画期的だったのは、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を備えていたことです。
*……ゼロックスのパロアルト研究所で作られた『Alto』(アルト)はLisaより先にGUI環境を実現していました。
そのためLisaにはキーボードと共に最初からマウスが付いていました。若い世代には信じられないかもしれませんが、パソコンにマウスが標準装備されているというのは画期的なことだったのです。また、ワープロ、表計算など、ビジネス用途のソフトがバンドルされていました。
非常に先進的なコンピューターだったLisaですが、9,995ドル(当時のレートで231万8,840円)と高価なことなどを理由に商業的にはうまくいきませんでした。しかし、このLisaでの試みは、1984年に登場するMacintoshに引き継がれます。
●NeXT(ネクスト)
アップルコンピュータを追い出されたジョブズが満を持して発表したコンピューターです。ジョブズは1985年に『NeXT』という会社を創業し、1988年に『NeXT cube』という新しいコンピューター(ワークステーション)を発表します。
●NeXT cube
CPU:68030(25MHz)/68040(25MHz)
メモリー:8MB/16MB/32MB(64MBまで拡張可能)
HDD:400MB/660MB
5インチMO(光磁気ディスク)ドライブ搭載
OS:NeXT step
モニター:17インチ/1,120×832ドット
立方体の本体、大型モニター、マウス、キーボードというセットで、非常に美しくデザインされていました。何より画期的だったのは『NeXT step』というOSです。いち早くオブジェクト指向の考え方を取り入れ、堅牢で、アプリケーションを開発しやすい環境を持ち、ユーザーインターフェースが優れていました。世界初のウェブブラウザー『WorldWideWeb』はこのNeXT step上で開発されたのです。
このような画期的な次世代を先取りした優れたコンピューターだったのですが、6,500ドル(当時のレートで約83万3,000円)もして高価だったこと、動作が遅かったことなどが理由で、残念なことに販売は不振でした。しかし、このNeXTで試みられたことは、アップルに復帰したジョブズによってMac上で花開くことになります。その意味では、偉大な試みだったといえるでしょう。
ジョブズのうまくいかなかった企画を二つご紹介しましたが、これはあくまでも商業的にうまくいかなかったという話であって、LisaもNeXTもコンピューター業界に大きなインパクトを与えました。やはりジョブズという人は確かな先見性の持ち主だったのです。
『Lisa』Photo(C)Stahlkocher
『NeXT cube』Photo(C)Rama & Musee Bolo
(高橋モータース@dcp)