「セミ→夏だなあ」「鈴虫→秋だなあ」意外! 虫の鳴き声に季節を感じるのは日本人だけ?
暑い夏がやってまいりました。今原稿を書いている最中にも窓越しにミンミンミ~ンと聞こえてきます。このセミの鳴き声、筆者は「日本の夏」という感じで好きです。毎年、ミンミンミ~ンと聞こえてくると、夏が来た! と感じます。
先日も日本人の仕事仲間と一緒に「セミのミンミンって、やっぱり日本の夏って感じよね~」なんて他愛ない話をしていたのですが、そこへやってきたドイツ人が「まったくもってセミはうるさい。なんとかならないものかね。窓越しでもあんなにうるさいから、セミの騒音レベルはどれぐらいかと色々調べてみたら、セミを耳の横に持ってくると、セミの鳴き声が原因で耳が聞こえなくなることもあるらしい。よってセミの鳴き声の騒音レベルは、他に比較ができないぐらい云々云々~」と、「いかにセミがうるさいか」を力説していました。
はい、どうもセミに「夏」を感じるのは日本人、または日本に長く住み日本人的な感覚を持ち合わせている人だけのようです。セミが元々いない国、セミの鳴き声がしない国で育った人のほとんどは、日本で過ごす初めての夏、セミの鳴き声を「うるさい」と感じるようです。
もっとも日本人にもセミの鳴き声を「暑苦しい」と感じる人はいるようですですが、この場合、暑苦しさの中にも「夏」を感じているのですね。(一部の)欧米人の「セミは気持ち悪い」「鳴き声がうるさい」という感じ方とはだいぶ違う気がします。
筆者も日本に来た当時はセミの鳴き声には慣れませんでした。ただし、ほかの面で日本に慣れることに精一杯でしたので、セミのミンミンミンはとくに気にしていませんでした。当然、セミに「夏」を感じることもありませんでした。でも日本に住み始めて何年が経ったころ、屋外プールで泳いでいたら、息継ぎの際に「ミンミンミ~ン」と聞こえてきて、「あ!日本の夏だ!」と幸せを感じました(笑)
そして鈴虫の鳴き声が聞こえてくると「もう秋なんだなあ~」と少し切ない気持ちになるのでした。
この「鈴虫に秋を感じる」という話、何人かの欧米人にしてみたのですが、たいしてリアクションはありませんでした。やっぱり虫によって夏を感じたり秋を感じたりと「虫によって季節を感じる」という感じ方自体が彼らには不思議にうつるみたいです。
ヨーロッパ、とくにヨーロッパの北のほうで育った人には「虫によって季節を感じる」という感覚がそれほどないのですね。やっぱりセミや鈴虫によって夏や秋を感じるのは日本特有の感覚なのかもしれません。
あ! でも夏だからといって、「蚊」に刺されて夏だー! とうれしくなったりはしません。
でも蚊取り線香や、蚊取り線香のにおいには「日本の夏」を感じますね。逆にいうと、蚊がいなくては蚊取り線香もないわけなので、蚊に感謝しないといけないのかもしれません。
セミがいて、蚊がいて…蚊取り線香があっての日本の夏なのですね(笑)
もちろん人によって感じ方は違いますので、筆者は「日本人はこのような感じ方をする」、「外国人はこのような感じ方をする」というふうに断定してしまうのは好きではないのですが、その上であえて言わせていただくと、「セミのミンミンミン」に「夏」を感じることができたら本当の意味での日本人なのかもしれません。
※もっとも鈴虫に関しては「秋」のイメージがありますが、実際には比較的暑い時期から鳴き始めるようです。
サンドラ・ヘフェリン
プロフィール/ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴17年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフといじめ問題」「バイリンガル教育について」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。