ライバル企業なのに同じトラック!? 「競争は商品で、物流は共同で」 F-LINEの挑戦 【連載『モノを運ぶ仕事最前線』第2回】

夏目幸明

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F-LINE株式会社
 代表取締役社長 坂本次郎氏

「まだ知名度が低いんです」……社長も人事もそう口をそろえる同社。しかしその実態は、日本の有名食品メーカー5社(味の素株式会社、ハウス食品グループ本社株式会社、カゴメ株式会社、株式会社日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループ株式会社)が出資して立ち上げた最新鋭の物流会社なのです。
「モノを運ぶ仕事最前線」の第2回は、共同配送と、それにともなうDXで業界の注目を集めるF-LINE株式会社の今までと今後を坂本次郎社長に聞きました。

モノはあるのに、運ぶトラックがない!?

きっかけは消費税が5%から8%に上がった2014年の春のことでした。増税前の駆け込み需要で急に荷物が増え、全国でトラックが足りなくなったのです。当時、味の素の執行役員だったF-LINEの坂本次郎社長が振り返ります。

「注文はある、商品も倉庫にある、なのに運ぶ車がない。業界の言葉で『欠車(けっしゃ)』と呼ばれる非常事態でした。これを受け、現在の株主の5社にMizkan(ミツカン) さんを加えた6社のトップが『将来は確実に“運べない時代”が来る。一緒に対策を考えましょう』と話し合ったのです」

それまでこれら企業の商品は、それぞれ別の運送会社、別のトラックで運ばれていました。しかし運ぶ先は問屋や小売業の物流センターなどで、多くが重なっています。そこで、今後は商品の共同配送ができないかを探ることになりました。

「商品は競争、配送は共同で、というわけです。その後、2015年にこの試みは『F-LINEプロジェクト』という名で立ち上がり、翌2016年、まずは北海道で2社の商品を同じ倉庫に集め、同じトラックで店に届けるようになりました」

「一緒に運ぶ」は、言うほど簡単じゃない

プロジェクト名は「Food Logistics Intelligent Network」、すなわち食品の知的な物流ネットワーク、という意味でした。ところが、トップ同士が握手をしても、現場はすぐには一緒に動けませんでした。坂本さんが話します。

「例えば各社、配送に使う伝票も、箱のサイズも異なります。ある会社は昔ながらの複写式(カーボン紙で写しを取る方式)の伝票、ある会社は別の書式、という具合です。さらに、箱に書かれている商品名や、それを機械に読み取らせる商品コードの位置もバラバラでした」

 現場の作業員は「A社の商品のコードはここ、B社は……」と、その都度目を移す必要があり、効率が悪い上に間違いの原因になる可能性もありました。

さらに困ったのは箱の大きさ。倉庫ではフォークリフトで荷物を一気に持ち上げられるように、段ボール箱を「パレット」というスノコのような板の上に積みます。大きさは1辺1.1メートルの「11型(いちいちがた)」が標準。ところが、箱の大きさがまちまちだと、この大きさに収まりきらないことがあります。

「トラックの中に箱がはみ出したパレットが1枚あるだけで、本当ならパレットを8枚積めるのに、7枚しか積めなくなってしまいます。つまり、すべてを統一する『標準化』が急務でした」

 一方、標準化の進行を待たず、まずは北海道で共同配送を始めてみると、各社バラバラだった配送拠点は4カ所から2カ所に、必要なトラックは75台から60台になりました。これが今、F-LINEが注目を集める理由の一つにもなっています。

共同配送により、日本の物流業界は一気に省力化が進むのではないか、というわけです。しかも、これは壮大な「エコ」にもなります。トラック75台が60台、すなわち2割減らせれば、燃料も、排出するCO2も、ドライバーが働く時間も2割減らすことができるはずです。

「このあと6社は、まず伝票を統一しました。今はすべてふつうのプリンターで出せる簡単な書式に揃えています。箱については、味の素が先につくっていた『11型パレットに合う箱のサイズはどうあるべきか』『作業者が見やすい表示の位置はどこか』というガイドをもとに、6社共通のガイドラインを作成しています。箱の大きさは中の商品で決まるので、もちろん一気には変えられません。しかし変えられるところから順次、今も効率化を進めているところです。」

研究者の「仮説と検証」は、倉庫でも通用する

実をいうと坂本さんは物流の専門家ではありませんでした。長崎県で生まれ、九州大学で食品の科学を学び、1985年に味の素へ入社。配属先は食品の研究開発でした。

「入社した時は、まさかこういうキャリアになるとは思っていませんでした(笑)。食べ物が好きで、それに関わりたくて味の素に入社しましたからね」

ここで坂本さんはすごい研究を成功させます。ごく簡単に言えば「お肉や魚肉をくっつける研究」です。ステーキとサイコロステーキを思い出してください。形が整っているお肉はステーキなど高い価値を持つ商品になりますが、余った端っこはおいしいのに価値が落ちます。そこで、これらを柔らかくくっつける――お肉ならサイコロステーキのような形にして、付加価値を高めつつ資源の無駄を減らそう、という世界初の試みでした。

その後、坂本さんが所属するチームは味も柔らかさも素晴らしいものを作り出します。
その後、坂本さんは国内での販売を担当し、「次は欧州だ」とドイツに5年駐在、技術とマーケティングの両方を受け持ち、その後も長く、海外向け食品の開発部長、米国駐在、食品研究所長などを歴任します。

 一方で、F-LINEプロジェクトは2018年に福岡にも物流センターを構え、2019年4月、株式会社化され、発展していきます。そして2024年、坂本さんはF-LINEの社長に就任しました。

「確かに、最初に聞いた時はまったく別の仕事のように思えましたよ(笑)。しかし意外なことに、食品を研究していた頃の経験が非常に役立っています。サイエンスは、仮説を作って、検証していくこと。物流の現場も同じなんです」

 F-LINEの挑戦は、箱、伝票といったアナログなものだけではありません。
例えば機械化。倉庫には物の運搬や仕分けを機械で行う「マテハン(マテリアルハンドリング機器)」を導入し、人の作業を大きく減らそうとしています。

さらには自動運転。2025年11月、F-LINEは自動運転トラックによる高速道路での商用運行に参画し、神奈川の川崎物流センターと兵庫の西宮物流センターの間で、東京~大阪とほぼ同じ約510キロに、6社の商品を載せた定期便の運行を開始しました。

「『こうすればもっと効率が上がるはず』という仮説を立て、それを実証していく。この流れはどちらも同じだったんですよ」

「社長、聞いてよ」――現場の改善意識が将来のカギ

坂本さんはさらに興味深いことを話します。企業が効率を高めていくためには現場に身を置くことが大切、さらには「社内の風通しを良くすることが欠かせない」と言います。なぜでしょうか?

「『ここを改善したほうがいい』ということは、私でなく現場にいる方たちが感じることなんです。例えば細かいことですが……ある物流センターで、翌日が休みの方たちと懇親会を開いたら、『物流センターの奥にある休憩室のトイレが和式なんですよね』という声がありました。また別の方からも『防寒服の洗い替えが欲しい』という声も上がったんですね」

和式だとつらい人もいますし、時間がかかってしまうかもしれません。防寒服に替えがあれば、社員さんにより快適な環境を届けられるはずです。そして、こうして社長に提案できる機会を増やしていくことで、社内の風通しがよくなっていくと言います。

「現場の方たちは『社長が来たよ、面倒くせえな』と思っているかもしれませんが(笑)、実は意味があります。

心理的安全性(何を言っても大丈夫だと感じられる職場の状態)が高まるんです。日本人って、言いたいことがあっても沈黙しがちなんですよ。しかも『何でも喋ってください』と言うだけではあまり効果がありません。だから、自分から場を設定し、現場に行き、話を聞きに行っているんです。すると社員のエンゲージメント(会社への愛着や貢献したい気持ち)も高まり、どんどん意見が集まってきます」

斬新な改善も次々と始まっています。例えば「重いものとかさばるものの組み合わせ」。トラックの積み荷には「重さの上限」と「体積の上限」があります。飲料のような重い荷物は、満載だと重さの上限にあたってしまう。逆にスナック菓子などかさばるものは重さに余裕があっても荷台がいっぱいになってしまいます。

過去の事例となりますが、ハウス食品のスナック菓子と大手酒類メーカーの商品を同じトラックに積む共同輸送が行われました。重さで見た積載率は約98%になり、体積で見た積載率も約13%向上。北関東と大阪の間を往復させることで、排出されるCO2が年間約18トン削減される成果を上げました(F-LINEは、運行計画を立てる実運送会社として参加)。

また、カゴメと日清製粉ウェルナの取り組みでも、関東方面から来たトラックと中部方面から来たトラックが新東名高速道路の清水パーキングエリアで待ち合わせをし、ドライバーを入れ替えて運行する実証が行われました。これにより、ドライバーが別の都市に泊まることなく自宅に帰れる仕組みが実現されました。

ちなみに同社には「IP運動」(IPはImprove Performance、つまり現場の改善活動)という名の運動があり、日々、社員からの改善提案を受け付けているそうです。また、年に1回、全国大会を開き、素晴らしい提案をしてくれた社員を表彰していると言います。

「どんどん改善提案してほしい」――そんなトップの思いが社員に伝わっていることが目に見えるようです。

求めているのは「変化をリードする人」

こうしてF-LINEは発展を続けていますが、坂本さんは今も危機感を抱いています。

「今後はますます人手が不足します。高速道路での自動運転が実現しても、それだけではトラック全体の数パーセントに過ぎません。もっと効率化を進め、さらには外国人ドライバーの雇用も検討していく必要があります」

さらに坂本さんは、現在、商品を運んでいる6社以外の現状にも危機感を抱いています。日本各地には、その土地ならではの調味料や加工品をつくる中小食品メーカーが無数にあり、こうした会社の健闘が日本の食文化を支えています。しかし今のままでは、運送会社に「もう運べません」と言われた瞬間、商品が食卓に届かなくなってしまいます。

「地方の中小メーカーさんが大事につくった商品を届けることは、日本の食文化を守るという意味でも、我々の社会的使命の一つだと思っています。今、我々の持続的なプラットフォームは既に様々な荷主様に使って頂いていますが、今後はこれをもっと多くの企業に広げていきたいですね」

今はもう「ウチの会社は大丈夫」などと考えている時代ではない、そんな坂本さんの思いや志が伝わってきます。
坂本さんは最後にこんな話をします。

「ほしいのは『変化をリードする人材』です。専攻は問いません。
私はこんなことに気づいた、そしてこう変えた、そんな経験を持った方に、ぜひ仲間になってほしいですね。
そして、今度はその力を日本の食文化や物流業を変えることに生かしていただきたいな、と」


取材・文:夏目幸明
編集:学生の窓口編集部 降旗靖夫
協力:F-LINE株式会社  https://www.f-line.tokyo.jp/

夏目幸明

夏目幸明

早稲田大学卒業後、広告代理店勤務を経て現職。ヒット商品の開発者、起業家、大手企業の社長などを精力的に取材。『週刊現代』の「社長の風景」、『ダイヤモンドオンライン』の「ヒット商品開発の舞台裏」等も連載。大学での就活の講義実績も多数。YouTube「就活総研」 www.youtube.com/@syuukatsu_so-ken

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