【電通】「自分にしか書けない言葉」は、等身大の経験から生まれる。電通コピーライターの仕事 #先輩ロールモデル

編集部:ぜんや

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「将来の“なりたい自分”がまだわからない」という悩みを抱えるみなさんに、さまざまな企業で活躍する先輩たちの姿を通してロールモデルを見つけてもらう企画「#先輩ロールモデル」。

今回は【電通】でコピーライターとして働く先輩社会人にインタビュー。カンボジアの工科大学でITを学び、AIを「作る側」から言葉で課題を解決する側へと飛び込んだ神戸さんに、水族館の「ペンギンの相関図」の制作の裏側や、違う個性が集まるチームでの働き方、そして等身大の経験を武器にする就活の考え方まで、詳しくお話を伺いました!

プロフィール:神戸 弥宙さん

・クライアントの伝えたいことや商材の魅力を深掘りし、世の中に届けるための「言葉」をつくる仕事。
・飲料から水族館、ホテル、交通機関まで、多種多様な業界のプロジェクトを担当し、コピーライターとして活躍。カンボジアの工科大学で学んだ、ITのバックグラウンドを活かし、AIを用いて完成イメージをビジュアル化して提案するなど、従来の枠にとらわれない新しいクリエイティブのアプローチを実践している。

INDEX

電通について 具体的なお仕事内容 言葉の世界に飛び込むきっかけ 大切にしている「生活者目線」 カンボジアの大学時代の「ハエ問題」 水族館の「ペンギンの相関図」 モットーにしていること 学生時代編 学生へのメッセージ

会社説明

電通は、アイデアを武器に世の中や企業の課題を解決する会社です。広告会社というイメージがありますが、広告は課題解決の手段の一つにすぎません。ブランディング、街の公衆トイレ、AI、事業変革、エンタメ、スポーツなど、抽象度もジャンルも多様な課題が持ち込まれます。

中でも得意とするのは、コミュニケーションが核にある課題の解決です。例えば、若者向けブランディングは商品と若者の間の、事業変革は経営者と従業員の間にあるコミュニケーションの課題として捉えられます。最適な手段を模索した結果、CMなどの広告に行き着くこともあれば、映画、AI、街づくり、テクノロジーといった広告を超えた手段に行き着くこともあります。電通は広告を作るだけではなく、課題解決のパートナーなのです。

そのため事業領域も、広告事業から拡張し、経営・事業戦略、CRM・データテクノロジー、広告、クリエイティブ、コンテンツ・スポーツへと広がり続けています。新しい事業が生まれる可能性も十分あり、そういった「今ないもの」を歓迎する文化があります。パーパスは「An invitation to the never before.(まだ見ぬ世界へ、いざなう)」、採用コンセプトは「今、自分にないものを。まだ、世の中にないものを。」。かつてない未来を創造したいと願い、粘り強く課題を考え抜き、その力をチームのために発揮できる社員が多く集まっています。

社会人編

――まずは簡単な自己紹介と、コピーライターとして普段どのようなお仕事をされているかを教えてください。

電通でコピーライターをしています、神戸弥宙と申します。23卒で入社して今年(2026年9月取材時点)で4年目になります。

「コピーライターってどういう仕事ですか」とよく聞かれるのですが、クリエイティブ局にある職種の一つです。CM、ポスター、イベントなど、制作するものは何であれ、その言葉に関わる部分を担当し、クライアントの課題を解決していく仕事になります。私はいつも、「世に出る言葉すべてに責任を持つ仕事です」と説明しています。

――カンボジアの工科大学でITを学ばれていたそうですが、まったく異なる「言葉」の世界に飛び込もうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

就活当初はあまり広告に詳しくなかったので、もともと視野に入れていた業界ではありませんでした。ただ、あるとき広告の事例を目にする機会があったんです。それまで私は、大学でプログラミングをしてAIを「作る側」でした。でも、出来上がった技術を社会でどう使っていくか、その使い方を考える側も面白そうだなと思って。電通はテレビをはじめ、従来の広告領域に限らないアプローチで事業を展開しているという話を聞き、そこに惹かれて入社しました。

――実際のお仕事でも、まったく知らない業界や使ったことのない商品を担当されることがあるかと思います。そんなときは、まず何から手をつけるのでしょうか。

案件は基本的に、クライアントから「この商品のこういうところを訴求したい」「こういう層に届いていない気がするので、アプローチしたい」といったお話をいただくところから始まります。ただ、自分が体験したことのない商材の場合は、まず何も知らないままの自分でその商品を使ってみるようにしています。

もちろん、広告の形にしていく中で、クライアントや商品について深く知るプロセスは欠かせません。でも、それより前に実際に使ってみたときの第一印象は、一般の生活者の感覚にかなり近いと考えているので、そこをとても大事にしています。

――神戸さんは「生活者目線」を非常に大事にされていると伺いました。それが良いアイデアにつながったエピソードはありますか。

体験しないと、どうしても想像だけで言葉を書くことになってしまいます。例えば「鉄道の旅を訴求する言葉を書いてください」と依頼をいただいたとき、その提供価値を伝える言葉を書きたいと思って、実際に自分で鉄道の旅をしてみました。

すると、机の上では絶対に見られない景色に出会える。「月がついてきているみたいだな」とか、本当にふとした瞬間の感覚をメモしておくんです。そこから出てくる言葉は、これまでにないものや、自分らしい言葉になっていくのではないかと思っています。言葉を書く上ではとても大事なことなので、常に意識しています。

――一人の生活者として「普通に感じること」を大切にするために、普段の生活で意識されていることはありますか。

先ほどの話と重なる部分もありますが、生活の中で「これって何だろう」と思ったことは調べる、「アイデアになるかも」と思ったことはメモしておく、ということをしています。手元に残しておくと、別の案件が来たときに「そういえば、ああいうことがあったな。掛け合わせたら新しいものになるかも」と思い出せるので、常に意識して情報収集するようにしています。

あとは、SNSなどでも、「この表現は新しくて面白いな」と思ったらブックマークをつけたりして、日々集めることを大事にしていますね。

――カンボジアの大学時代に、食堂の「ハエ問題」を解決したエピソードがあると伺いました。詳しく教えてください。

私が通っていたのは全寮制の大学で、そこで暮らす学生が皆で利用する食堂がありました。環境的な事情もあって、その食堂にはハエがものすごく多かったんです。「これじゃあご飯を食べたくないな」と、学生の間でも不満が募り、問題になっていました。これを何とかできないかと思ったのが、取り組みの始まりです。

「ハエが飛んでいる」という一つの現象でも、解決の切り口はいろいろあります。そもそもハエを増やさない、つまり卵を産ませないことなのか。あるいは、生まれてもいいから料理に近づけないことなのか。そんなふうに一つずつ検証していきました。

――最終的に、ハエはどうやって退治できたのでしょうか。

食堂は皆がご飯を食べる場所なので、薬剤はあまり使いたくないという話になりました。お金もまったくなかったので、薬剤も電力もお金もほとんど使わない方法をひたすら試したんです。

透明な袋に水を入れると、向こう側のものが膨らんで見えますよね。コップ越しに顔をのぞくと大きく歪んで見える、あの原理です。それを生かして、水を入れた透明な袋を天井にたくさんぶら下げました。ハエは、自分より大きな敵がいると思うと近寄らなくなると言われています。物理的でアナログなアイデアですが、地域の方からも知恵をお借りしながら試したところ、実際にハエが減りました。

――食堂のシェフから意見をもらったりもしたのですか。

はい。ハエが発生するということは、食材の管理方法や、余った料理の処理方法にも原因があります。ですから、まずはシェフの意識を変えるところが出発点ではないか、という話になったんです。

それでシェフにも話を聞きに行ったのですが、最初はまったく取り合ってもらえず、「帰れ」と言われるような状況でした。なぜだろうと思って話を聞いていくと、シェフとしては「ハエが寄ってくるのは、俺の料理がうまいからだろう」と本気で考えていたようなんです。

そのときハッとしました。皆が皆、ハエを退治したいと思っているわけではないんだ、と。同じ現象でも人によって受け止め方がまるで違う。そこはとても勉強になりました。そこから「シェフにとっても納得できる解決策は何だろう」と考えた結果が、先ほどの案だったんです。この経験から、仕事においても多角的に考えることや、皆にとっての良いソリューションは何かということを意識するように心がけています。

――神戸さんが手がけられたお仕事の中に、水族館の「ペンギンの相関図」があるかと思います。「水族館は癒しの場所」という常識にとらわれず、あえてペンギン同士の関係を広告にされていますが、現場のユニークなリアルを面白がり、言葉にしていくために大切にされた視点を教えてください。

そもそもペンギンは、多くの水族館で見られる生き物です。一般の方から見ると水族館ごとの違いが分かりにくい、という課題があって、「どうすればこの水族館に来たいと思ってもらえるか」というところから始まった案件でした。

飼育スタッフの方にお話を伺う中で驚いたのが、その観察眼の鋭さです。たくさんいるペンギンを見ただけで名前が分かり、「最近あの子はこういう行動をしていて」と細かく教えてくださる。その眼差しはまさに愛情そのもので、それこそがこの水族館の価値なのではないかと思いました。それなら飼育スタッフの皆さんにヒアリングをすれば、非常にユニークなペンギンの相関図が描けるのではないか。そうして「ペンギン相関図」が生まれました。とてもユニークな相関図になっていますので、ご興味いただける方はぜひ調べて見ていただけたらと思います。

――取材やインタビューを重ねて作られているのですね。

そうですね。毎年十分な時間をかけてヒアリングし、それを全部書き起こします。そこからコピーチームで「このペンギンを一言で言うなら、こういう言葉だよね」と考えていきます。

取材をしていると、仲の良いペンギンはもちろん、驚くほど人間らしい関係も見えてくるんです。三角関係だったり、もともとカップルだった二羽が数年ぶりに復縁したり、親なのに子どもにべったりだったり。良い関係もあれば、少し複雑な関係もある。そこがとても面白くユニークなポイントで、毎年、多くのファンに支持される施策になっています。

――電通のチームは「みんなの飛び出た部分=個性や得意分野で支えられている」と伺っています。まったく違う個性を持つ人たちが、ぶつからずに一つのクリエイティブへ向かっていくために、チーム内で工夫されているコミュニケーションはありますか。

正直、ぶつかること自体はよくあります。ただ、一人ひとりが意見を持つ根本には「少しでも良いものを作りたい」という共通の思いがあり、それをチーム内で理解し合えているからこそ、意見を言いやすい場になっているのだと思います。誰一人の意見も取りこぼさず、「確かにそうだね」「いや、私はそうは思わなかったな」と言い合える。そういうチームがとても多いですね。

――アイデアが出ないときや壁にぶつかったとき、チームの空気を前向きに保ち、皆が自分らしく挑戦し続けられるように意識されていることはありますか。

アイデアが出ないときは、もちろんあります。チームでディスカッションをする前に、まずは各自で考えてアイデアを持ち寄る会があるのですが、そこに出す自分の案が浮かばない、ということも起こります。

そんなときこそ、普段から書きためているメモを開いてみたり、少しでもチームの刺激になりそうなリファレンスを持っていったり、会議で積極的に発言したりするようにしています。一つのものを私だけでなくチーム全体で作っているので、「チームが前進するために自分は何ができるか」を考えるようにしていますね。

それに、悩んでいるのは自分一人ではありません。私が悩んでいるということは、チームをまとめてくださっているクリエイティブディレクターの先輩もきっと悩んでいる。「みんな一緒だ」と前向きに捉えて頑張っています。

――神戸さんのモットーである「応援される人になる」。社内外を問わず「この人と一緒に創りたい、応援したい」と思われるために、日々の仕事で心がけている行動やスタンスを教えてください。

いろいろありますが、例えば、分からないことは「分かりません」とちゃんと言う。強がらずに先輩を頼ってみる。そうした素直さは、とても大事にしています。嬉しかったことは「嬉しかった」と伝えますし、「なぜこうなるんだろう」と思ったら普通に聞く。答えていただいたら「ありがとうございます」と伝える。当たり前のことですが、意識しています。

先ほどの話とも重なりますが、この会社に一人で完結する仕事はほとんどありません。みんなそれぞれ悩みながら仕事をしています。だからこそ、自分が困っていることを相談すると、先輩や周りの方が本当に親身になってくださる。いつも助けられています。

――では次に、モチベーショングラフに移ります。まずは社会人になってからの時期です。社会人1年目の頃に「新しい作業にワクワクした」「尊敬できる先輩方のもとで働けて嬉しかった」とありますが、当時どんな仕事や先輩との出来事が印象に残っていますか。

私はコピーライターとして配属されたのですが、それまで言葉を書いた経験がほとんどありませんでした。日記も3日と続いたことがなく、「これからどうなるんだろう」と思いながらのスタートでした。

それでも、担当させていただく仕事は、撮影も、CMの編集も、言葉を書くことも、一つひとつが新鮮で、常に勉強の連続でした。そのすべてがとても面白かったですね。

私たちのクリエイティブ局では、入社すると1年間トレーナーの先輩がついて、一緒に仕事をします。先輩が出す案は本当に圧倒されるほどで、それは今も変わりません。そうした方々に刺激を受け、アドバイスをいただきながら進める日々は、「頑張るぞ」ととても前向きな気持ちでした。

――その後、「思うように案が通らない」「考える難しさを痛感した」という時期がありますが、そのときはどのように気持ちを切り替え、モチベーションを保っていたのでしょうか。

案が通らないことも、考える難しさも、正直に言えば今もずっと続いています。ただ、人に話を聞いてもらうことで「自分だけじゃないんだ」と思えたり、「なぜ通らないんだろう」と少し俯瞰して考えてみたり。それに、通らない中でも採用される案はあるので、「見方を変えれば、それが自分のアイデアの個性なのかもしれない」と捉え直すことで、モチベーションを上げていきました。あとは、まだ1年目で案件数も多くなかったので、とにかく数をこなそうともしていましたね。

――実際に仕事をする中で、「コピーライターになってよかった」と特に感じるのはどんな瞬間ですか。

コピーライターに限らないかもしれませんが、「CM見たよ」と家族や友達に言ってもらえると、とても嬉しいです。自分の書いた言葉が街中に大きく掲出されるのも、やはり嬉しい瞬間ですね。

――反対に、「ここは大変だ」と感じる瞬間はありますか。

考えること自体の難しさもありますが、最近はAIの存在も大きいですね。「AIでも書けるんじゃないの」といろいろな方から聞かれます。その中で、どう自分の個性を出すのか、自分にしか書けないコピーとは何なのか。社内にもコピーライターがたくさんいる中で、「神戸さんにお願いしたい」と思っていただけるようになるには、どう腕を磨けばいいのか。そこを考えるのが難しく、もっと頑張らなければと感じているところです。

学生時代編

――次に、学生時代のモチベーショングラフに移ります。就活当初は「自己分析がうまくできなかった」とのことですが、そこから「自分が伝えるべきことや強みが整理できた」きっかけは何だったのでしょうか。

転機は、周りの人に相談したことでした。カンボジアの大学で、日本の大学のような偏差値による情報もなく、海外の名門校というわけでもありません。相手に「それはどこ?」という顔をされることも多く、どう伝えればいいのか分からずにいました。

でも、そのことを先輩など周りの人に話してみたら、「いや、でもこういうことをやっていたじゃない」「それって神戸さんにしか言えないことなんじゃないの」と言ってもらえて。「型にはまらなくていいんだ」と気づけたんです。そこからは何かを真似するのではなく、自分にしか書けないものを書いてみようと思いESに向き合うようになりました。その切り替えが転機だったと思います。

――「就活がうまくいき始めて楽しめるようになった」とありますが、そこから就活に対する考え方や行動はどのように変わりましたか。

おそらく、自分に自信が持てるようになったのだと思います。面接もたくさんありますが、「この人は私の話を聞きたがってくれているんだ」と思い込むことにして、面接は会話を楽しむ時間だと捉えて臨んでいました。そう考えるようになってから、いろいろなことが良い方向に循環していった気がします。

――ESを書く際、「これは自分にしか書けない」というエピソードを出すのはとても難しいと思うのですが、どのような視点で過去の経験を掘り下げていましたか。

大事だと思ったのは、エピソードが他の人と違うかどうかよりも、その経験に対して自分がどう感じ、どう対処したかという部分です。差がつくのはそこだと思っています。

私はたまたまカンボジアの大学に通ったり、ハエ退治をしたりと、人とは違う経験をしていました。でも、エピソードそのものが優れている必要はまったくないと思うんです。「売上を伸ばした」といった華々しい成功体験でなくてもいい。そこから自分がどう動いたのかをきちんと言語化できることのほうが、企業の方は知りたいはずですし、自分らしさもそこに表れると思っています。

会員登録もしくは会員ログインをするとインタビュー動画&神戸さんのESのポイントをご覧になれます。

――最後に、「すごい経歴や完璧なガクチカがない」とプレッシャーを感じている学生へ向けて、自分自身の感性や等身大の経験を武器にして社会に飛び込んでいくためのメッセージをお願いします。

すごいことを語ろうとしたり、無理に作ろうとしたりする必要はないと考えています。すでに経験されたことの中に、「自分らしい考え方をしたな」「自分らしい行動を取ったな」と思えるものがきっと見つかるので、ぜひ自信を持って就活に臨んでいただきたいと思います。

私自身、ガクチカでは失敗した話も素直に話していました。必ず成功体験を探さなければ、飛び抜けたエピソードを作らなければ、と思う必要はありません。皆さんらしいものは、すでにきっとあるはずです。

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取材:渡部 優理絵(ガクラボメンバー) 
執筆:田中 妃音(ガクラボメンバー) 
編集:学生の窓口編集部 
取材協力:電通

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活字中毒の中年編集者です。暇さえあれば本やウェブコンテンツを読み漁っています。 文章や言葉で読者を楽しませたり、悩みに寄り添い勇気づけられるよう、日々悪戦苦闘しながら言葉を紡いでいます。

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