“好き”を言える場所を、自分たちでつくった。学生が立ち上げたハンドボール大会『アルマカップ』の物語
こんにちは! ガクラボメンバーの 堀内です。
みなさんは、「好きなものを好きと言えていますか?」
そう問いかけるのは、学生主体のハンドボール大会「アルマカップ」(https://www.arumacup.com/)を運営する佐藤美咲さんです。
企画、広報、スポンサー集め、当日の運営——すべてを学生が担うこの大会で、佐藤さんは大会統括を務めています。資金不足や運営の不安に直面しながらも、「全員が主役になれる大会」を目指して挑戦を続けています。
学生主体の大会にはどんな想いが込められているのか。運営の裏側やハンドボールへの思いについて話を聞きました。
アルマカップとはどんな大会ですか?
大学生を対象にしたハンドボール大会ですが、他の大会と違う点がいくつかあります。勝敗のあるスポーツではありますが、「心でつながる」ことを大切にしたハンドボールができる大会です。
――なるほど。具体的にどのような点が異なるのか教えてください。
アルマカップには大きく2つの独自の仕掛けがあります。
1つ目は「タッグ制」です。
複数のチームをひとつの「タッグ」として編成し、総得失点で順位を決定します。自チームの勝敗だけでなく、タッグを組む他チームの結果も順位に関わるため、自然と「他チームを応援する」光景が生まれ、通常のリーグ戦にはない一体感が生まれます。
2つ目は「独自の表彰制度」です。試合結果だけでなく、控え選手やマネージャーなど、普段は目立ちにくい存在にも光が当たるよう表彰項目を設けています。第1回大会では、個性あふれる多彩な賞が登場しました。第2回も第1回と同様の表彰項目で行っています。具体的には、こんなにたくさんの賞があります。
<選手のみが対象の賞>
MVP
無双賞(得点ではなく、オフェンスで輝いた選手)
鉄壁賞(ディフェンスで輝いた選手)
守護神賞(キーパーとして輝いた選手)
超サプライズ賞(珍プレーをした選手)
<けが人・マネージャーのみが対象の賞>
舞台裏ヒーロー賞(チームを支えていた人)
<参加者全員が対象の賞>
笑顔の魔法賞(大会を心から楽しんでいた人)
チーム愛No.1で賞(チームのために行動していた人)
タッグ愛No.1で賞(タッグチームと交流が多かった人)※女子のみ
こうした制度の背景には、佐藤さんの経験があります。ハンドボール歴7年の中で度重なる怪我により、高校・大学ともに思うようにプレーできず、大学では4度の手術を経験。コートに立てない中でベンチワークや練習メニューの作成など、チームを支える役割を担ってきました。その経験から、試合に出る選手だけでなく、控え選手やマネージャーなど“支える人”もチームに欠かせない存在だと強く感じるようになったそうです。
アルマカップは学生だけで企画から運営まで行っていると伺いましたが、その中で大変だった点はありますか。
第1回大会では宣伝をすべて個人のInstagramで行っていた佐藤さん。しかし今回は公式Instagramやホームページを新たに作成し、情報発信の体制を整えました。
その一方で、公式として発信することの難しさも感じたといいます。 個人アカウントとは違い、「大会の公式」として何をどこまで見せるべきかの判断が難しく、安易な発言ができない責任もありました。
また、学生だけで大会を運営することにも苦労がありました。 運営メンバーそれぞれが授業や課題を抱えているため、「どれだけ仕事を任せてよいか」「どう役割を分担するか」の判断に悩んだと振り返ります。
様々な困難をどのように乗り越えていきましたか?
スタッフそれぞれの余裕が分からなかったので、迷ったらすぐ電話をかけていました(笑)
実はアルマカップでは、スタッフ全員が集まるミーティングを一度も行わず、佐藤さんがスタッフ一人ひとりと1対1で電話をしながら進捗を確認し、役割を調整していきました。 「今日の夜なら時間空けます」と言ってくれるメンバーも多く、本当に助けられました。
逆に、学生だからこそできたと感じたことはありますか?
一般的な大会では協会や連盟が主催し、多くの承認が必要です。しかしアルマカップは学生主体のため、その場で柔軟に判断できる強みがあります。
私が現場にいれば、その場で「やろう」「やめよう」と判断できるんです。このスピード感は学生だからこそだと思います。実際に大会当日、男子の部の昼休憩中にコートが空き、参加者から「もう1試合できませんか?」という声が上がりました。 「じゃあやりましょうか」という感じでその場で試合を組むことに。タイムスケジュールはずれたものの、参加者の「やりたい」をすぐ形にできました。
佐藤さんは、アルマカップを「人の挑戦の場」と捉え、「誰かがやりたいと言ったら、できるように調整していく」という姿勢で運営しています。参加者の声をすぐ反映できる柔軟さも、アルマカップの魅力のひとつです。
最も開催してよかったと感じた瞬間について教えてください。

この大会を最後にハンドボールを辞めようと思っていた学生が何人かいたんですが、その一人がプレー後に「やっぱりハンドボールって楽しいですね」「もう少し続けてみようかな」と話してくれて。 逆に本当に辞めた学生も「最後に楽しく終われました」と言ってくれました。アルマカップがその人の競技人生の一区切りになれたのかなと思うと、やってよかったなって思います。
佐藤さんにとってアルマカップは、勝敗を競うだけでなく、ハンドボールを通して“自分の気持ちと向き合う場”でもあります。
不安や挫折を感じた瞬間はありましたか?
不安も挫折もたくさんありました。前回は“1回きりの大会”として開催しましたが、今回は継続開催になったことで判断が難しい場面が増えました。
特に苦労したのは資金面でした。スポンサー集めや企業への趣旨説明に悩み、今回の大会は、最終的に10万円程度の赤字だったといいます。
お金が足りないから景品を減らすことも考えましたが、クオリティは絶対に落としたくないと思って。1回目を超える大会にするために、覚悟を決めました。
また、前回の大会が好評だったことも大きなプレッシャーでした。 それを乗り越えられたのは、周りの大人の方々のおかげです。いろんな方に相談して、たくさん助けてもらいました。自分一人ではできなかったと思います。
スポーツや教育、コミュニティづくりなどを含めて、将来の理想像や展望はありますか?
日本人は自分の課題を見つけるのは得意ですが、自分を褒めたり認めたりすることが苦手な人が多いと感じています。謙遜は大切ですが、やりすぎる必要はありません。
だからこそ、スポーツやコミュニティを通して、お互いを認め合い、褒め合える環境をつくりたいです。頑張っている人が「ダサい」ではなく「かっこいい」と思われる価値観を広げていきたいです。
全国の大学生に、これだけは伝えたいというメッセージはありますか?
みなさんは、自分の夢や希望を声に出していますか? 小さい頃は「将来プリキュアになりたい」など、大きな夢を自然と言えていたと思います。でも大人になるにつれて「現実を見ないと」と感じ、口に出しにくくなることも多いのではないでしょうか。
でも私は、やりたいことや挑戦したいことはどんどん口に出していいと思っています。学生か大人かは関係ありません。頑張っている姿は必ず誰かが見ていますし、思っている以上に人は一人ではありません。
夢や希望を語るのは勇気がいるかもしれません。でも口に出した瞬間、味方は増えていくと私は思います。 私自身まだ挑戦の途中ですが、やりたいことにはどんどん挑戦してほしいです。学生だからこそ、失敗しても「学生だから」と次に活かせます。成功すれば自信になり、失敗しても次につながる経験になります。だからこそ、学生のうちにたくさん挑戦してほしいと思います。
取材を通して感じたこと
アルマカップは、勝敗を競うだけの大会ではなく、「誰かの挑戦を応援する空気」や「好きなことにまっすぐ向き合う姿」が感じられる大会だと感じました。
学生主体で大会をつくり上げることは決して簡単ではありません。資金の不安や運営の難しさなど、多くの壁を感じつつも挑戦を続ける佐藤さんの姿を見て、私自身「やりたい」という思いを形にする大切さを学びました。
「夢や挑戦は口に出していい」という言葉もとても印象的でした。
やりたいことを声に出すことは時に勇気が必要ですが、
その一歩が新しいつながりや可能性を生むのだと感じました。
◆information◆
アルマカップ 大学生ハンドボール
【Instagram】アルマカップ公式Instagram
https://www.instagram.com/aruma.cup?igsh=YmpldW55ZnVlZDU1&utm_source=qr
【アルマカップ ご支援フォーム】
https://forms.gle/txnTxmBwaaH73Zfw7
●2026年大会の詳細
日程:男子3月2日(月)、女子3月16日(月)
場所:プロシードアリーナ彦根
詳細:https://www.arumacup.com/2026%E5%B9%B4%E5%A4%A7%E4%BC%9
取材・文:堀内 愛菜(ガクラボメンバー)
編集:マイナビ学生の窓口編集部
取材協力:アルマカップ運営事務局 https://www.arumacup.com
































