日本郵船の機関士が見た海の世界とは?海上職と陸上職の経験をもとに語る仕事のやりがいとチャレンジ

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今回は「日本郵船」で働く先輩社会人にインタビュー。二等機関士、そして人事グループ採用育成チームで働く川原光二郎さんに、日々の仕事内容や苦労した経験、会社の魅力などについてお話を伺いました!

PROFILE

川原 光二郎

二等機関士として、300mを超える巨大船の保守・整備を行い、日本郵船のビジネスを止めないために船を動かし続けている。現在は陸上勤務で海上職の採用担当として、採用イベントの計画、イベントへの登壇、その他各学校との連携など、採用に関する幅広い業務に携わっている。

海上職と陸上職を経験した機関士が語る、海運業界の魅力

――自己紹介をお願いします。

2017年に入社した川原光二郎と申します。海上職の二等機関士です。海上職と言っても、ずっと船に乗っているわけではなく、海上勤務と陸上勤務を交互にしています。入社してから6年間は、船に乗って海運の最前線で技術者として働いていました。昨年の4月から、人事グループの採用育成チームで陸上勤務をしています。

――お仕事内容について詳しく教えてください。

人事グループの採用育成チームでは、学生さんに向けて採用イベントを準備したり、実際に登壇したりしています。海上勤務中の機関士の働き方は、実はほぼサラリーマンと変わりません。大体8時に業務を開始して、17時に終了します。業務内容としては、船のエンジンルーム内で保守・整備を行います。実際に行った作業のレポートを作成したり、メーカーと不具合についてやり取りしたりもします。

船は24時間動き続けているので、3日に1回、当直という形で夜間の担当を持ち回りします。夜中にエンジンルームや機関室で警報やアラームが鳴れば対応します。警報やアラームが鳴らなければ、そのままゆっくり休んでいます。航海士の方は、24時間、3人当直体制で交代して見張りをしているので、航海士とは働き方が違うところが面白い点ですね。

――航海士と機関士の役割の違いを教えてください。

航海士は基本的に船を運航するポジションです。船の安全と貨物の管理を担当します。自動車船やコンテナ船では、貨物に傷が付いたりしないように状態をチェックします。さらに、船体がサビたり傷ついたりしないように整備も行います。

一方、機関士は「船を止めないために必要な仕事」をします。海運業界では、船が動いて当たり前というところがありますが、その当たり前を支えているのが機関士です。プロペラを回し続けるために点検や整備をします。海運業界自体が「インフラのインフラ」と呼ばれていますが、その根幹をさらに支えているのが機関士の役割なのかなと思います。

――川原さんが機関士という職業を選択した理由や決め手を教えてください。

もともと就職活動時代の軸として、「技術者」に対する憧れがありました。あるとき、海運業界の方から、「船は職場でもあり、人が生活をする場でもあるので、人が生活していく上で必要な機械がすべて船の上に積まれている。だから、船の上のエンジニアである機関士の知識や技術が身に付けば、同時に航空や自動車も網羅できる」という話を聞きました。これを聞いて、機関士を目指したいと思うようになりました。

海上勤務にとって必要な覚悟とは?

――これまでで最も印象に残った仕事に関するエピソードについて教えてください。

はじめて大型船に乗ったときのことが強く印象に残っています。実際に船に乗って、港に近づいたとき、陸の方で明かりが見えます。そういった電気なども、「海上職や海運業界が資源を運んでいるからこそ成り立っている」ということを目の前で感じられたことは、入社当初の驚きとしてかなり大きかったですね。

――苦労したことや壁にぶつかった経験はありますか?

海上勤務中は、わからないことだらけでした。いざ不具合が起こったときに、どのようにアプローチして解決していくか、7年目になってようやくわかってきたと感じています。

300mを超えるような巨大船に対して、乗組員は25名から30名ほどです。チームで問題を解決していくところもやりがいの1つです。一人一人に負担や大変な部分はありますが、その分、知識や技術は間違いなく付いていくと思います。

――お仕事をする上で気をつけていることがあれば教えてください。

海上勤務中は「嘘をつかない」ことを心がけていました。大規模な船を少人数で動かしているので、わからないことをそのままにして業務を進めてしまうと、トラブルの原因にもなります。だから、「わからないことはわからないとちゃんと伝える」ことを、海上勤務中に意識していました。

あとは「準備する」ことが本当に大事だと思います。自分が分解した機器をちゃんと戻せるのか、頭の中でイメージできるまで予習をしますし、圧力や温度などの問題がないか、常に意識しながら準備をしていました。それは陸上勤務中の今も変わらない点だと思います。今は採用広報という立場なので、学生さんにはいい話ばかりではなく、大変な話や職務の内容をありのまま話すことを意識しています。

――船での生活において、覚悟をしておいた方がいいことはありますか?

船員というと、ロマンがあったり、世界中を回ることができたりという、楽しみや魅力をイメージしがちだと思うのですが、それだけではありません。実際に船でトラブルが起きて、電気が全部落ちて漂流してしまうようなこともあります。

また、結婚するとパートナーにも理解してもらう必要がありますし、親族の行事などに全て立ち会えるわけではないという面があります。でも、今は船員の人数も多くなっているので、フォローしてくれる体制が整っている点は非常にいいところだと思いますね。

――機関士に向いている人物像や必要なスキルなどはありますか?

やはり探求心がある方が向いていると個人的には思います。海運業界自体が、入社してから学ぶことが多いので、わからないことも楽しみながら取り組めて、かつ、探求心を持って最後まで突き詰められるというところは大事になってくると思います。

弊社には、入社してゼロから海技士免許を取得するコースがあります。自社養成コースは2006年から始まった制度で、他社に先駆けて実施しています。今では、弊社の船舶職員の5人に1人が自社養成コース出身で、機関長や船長も誕生しています。ぜひ、こちらにも興味を持っていただきたいですね。

「温室効果ガスの排出をゼロに」海運業界の未来とチャレンジ

――川原さんが最終的に日本郵船に入社を決めた理由や、働いているからこそ感じる会社の魅力を教えてください。

就職活動のときは海運業界をいろいろ見ていたのですが、実際に社員さんの話を聞いて、ありのままの姿で話しているなという印象がありました。あとは、愛社精神があって、「この会社のために!」と考えている方が多かったですね。実際に会社を訪れて、社員さんの話を聞いて、そういった雰囲気が自分に合っていると思いました。

また、実際に働いてみて思う日本郵船の魅力は、一人一人の社員をよく見ていただいているということです。社員に対して、希望を聞いたり、発信する場が設けられたりしている点は、入社してよかったなと思うところですね。

――今後、どのようなチャレンジをしていきたいと考えていますか?

弊社では、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするという目標を定めています。今までは重油で船を動かしていたのですが、この目標を達成するために、この先、水素やアンモニアなどのCO2を排出しないエネルギーで船を動かすというところに力を入れています。そこには、専門的な知識や技術が必要になってくるため、今まで船に乗ってきた経験を生かして携わりたいと思っています。


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取材:清水 碧
執筆:田中 妃音
編集:学生の窓口編集部
取材協力:日本郵船株式会社

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活字中毒の中年編集者です。暇さえあれば本やウェブコンテンツを読み漁っています。 文章や言葉で読者を楽しませたり、悩みに寄り添い勇気づけられるよう、日々悪戦苦闘しながら言葉を紡いでいます。

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