話し上手になるための8つのステップ ~良い会話をするには知性を身につける~【世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力】 #Z世代Pick
こんにちは。Z世代ブックピッカー・まえれなです。
みなさんは話し上手になりたい!と思ったことはありませんか?
初対面の人と話す時や、プレゼンで大勢の前で話す時など、「もっと上手に話せたらいいのに」と感じる人は多いのではないでしょうか? 様々な実用書を読んで実践してみても、それでもなかなか上達しない....なんてことはありませんか?
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』の著者であるシン・ドヒョン氏は、話し上手になるということはどういうことか、以下のように述べています。
「話し上手」とは、単に話術に長けているというより、絶えず自分を省みて成長し、他人に関心を傾けて理解し、その場の状況を読み取る目を備えた、総合的な力を指す。つまり、「言葉の勉強」というのは、その境地に至ろうとして努力する過程のことだと言っていい。
話術に関する本はすでにたくさん出回っているが、そのほとんどは実用書だ。そのため、どうしても中身は単調になる。話し上手になるための努力の過程をすっ飛ばして、名スピーチの実例やテクニックの紹介に終始し、ただ言い回しの問題にとらわれているために、どんな意味を言葉に込めるのかという、最も肝心な点を見逃している場合が多い。
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』では、話し上手になるために必要な自分磨きのための8つのプロセスを紹介しています。ここではそのうちの1つを一部抜粋してお届けします。
第三章『知性』
人々は言う。感覚が重要だと。
しかし、感覚よりも大切なのは心である。
さらに心よりも重要なのが知性であり、
知性よりも重要なのが自我である。
----------バガヴァッド・ギーター
『バガヴァッド・ギーター』。古代インドの経典で、インド思想が凝縮された哲学的詩集。短縮して『ギーター』とも言う。作者未詳で、執筆年代は推定で紀元前2世紀から紀元後5世紀までと幅広い。マハトマ・ガンジーは、『ギーター』を自分の「人生の案内人」であり「行動の辞典」と評した。
----------引用文出典:『バガヴァッド・ギーター』
普通、古代の哲学では心が重視されるが、興味深いことに『バガヴァッド・ギーター』では、それよりも知性を優位としている。現代でも、「すべては心構えにかかっている」とか、「心根がいい」などという言葉をよく使う。このように多くの場合、心は意志や道徳的なものと関連づけられている。
教科書や「大人」たちは、容姿や経歴、物質的な背景よりも、強固な意志と善良な心のほうが大切であり、それこそが人を評価する基準になるべきだと強調する。だから私たちは、容姿や経歴などを重視しながらも、一方では心こそが最も価値のあるものだということも忘れないよう努めている。
しかし、心だけでは何も為しえないことを、私たちは知っている。善良で強固な意志を持っていても、それを支える知性がなければ何にもならない。善意の行動でも、知性が伴わなければむしろ悪い結果をもたらすこともある。
『バガヴァッド・ギーター』が心よりも知性を重んじたのも、このような背景からだ。良い会話をしたいという気持ちだけでは、良い会話をするのは難しい。相手について知らなければならず、相手が何を望んでいるかを読み取らなければならない。ときには相手の悩みをうまく解決できるよう、適切な助言をしてあげる必要もあるだろう。
だから、良い会話をするためには知性を身につけなければならない。読書と経験を通じて「関係」を学び、相手の話に耳を傾けながら相手を理解すべきだ。これが知性を広げる道である。
『バガヴァッド・ギーター』は自我を最も重視したが、これは当然の結論だ。「自分」があってこそ、知性も、心も、感覚も存在するのだから。また自我があってこそ、他人や世界とのコミュニケーションも可能になるのだ。
■実際に読んでみた感想
「一つの言葉には、語り手と聞き手の両方の人生が込められている」という本文に入る前の著者の言葉で私はこの本に出会えたことに感謝した。私達は日々、どんな時でも言葉を使って暮らしている。人々とコミュニケーションをとるとき、何か書類を提出する時などさまざまな環境状況において言葉を使わずに生活することはまずないだろう。
そんな時私達はいつの間にか何も考えず言葉を発していないだろうか。誰かと話をする時必ず語り手と聞き手という立場が発生する。その時にどういった解釈をするのかは人それぞれである。語り手の話す内容を必ずしも聞き手が肯定することはできないとしても理解することはできる。
そうしたことを改めて意識して賢者の知恵から学ぶことができるのがこの本である。今本屋に出ている話術に関する本はたくさんあるが、言葉の使い方を根本から変える方法を提示してくれる本は他に見たことがない。この本を読むことで、自分の言葉の使い方をふりかえり、自分と世の中を変えるために言葉を手段として使えるようになりたいと思う。(まえれな)
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』
定価 : 1,650円(税込)
頁数 : 224頁
ISBN : 978-4-7612-7488-7
発行日 : 2020年4月15日
■著者情報
シン・ドヒョン
人文学者。大学で哲学と国文学を専攻。幼いころから哲学を学び、東西の古典に親しんできた。世の中を変える勉強と自分を変える勉強は同時に進めるべきで、そうしてこそ本当の変化がもたらされると信じる。その第一歩として、“言葉の勉強”をはじめ、その成果を本書にまとめた。
ユン・ナル
ソウルで高校の国語教師を勤めながら、哲学をはじめとして人文学の勉強にもいそしみ、エッセイを執筆・発表している。他人の視線にとらわれず、新しく深みのある文章を書くために、日々努力している。
米津 篤八
朝鮮語・英語翻訳家。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に勤務。退職後、ソウル大学大学院で朝鮮韓国現代史を学び、現在は一橋大学大学院博士課程在学中。翻訳書に『言葉の品格』『言葉の温度』(光文社)、共訳書に『チェ・ゲバラ名言集』(原書房)などがある。