『スマホ失明』ビルゲイツは子供にスマホを使わせない!? #Z世代Pick
こんにちは。Z世代ブックピッカー・lunaです。
みなさんは1日に何時間スマホを使っていますか? 電車の中、ちょっとしたスキマ時間、寝る前・朝起きてすぐ布団の中で。いまや子供から大人まで、老若男女問わず、多くの人があらゆる場面でスマホを使っているかと思います。そんな現状に対して、眼科医の川本晃司氏は、ある光景が浮かんでいるそうです。
数年後、あるいは数十年後──……。元気だった小学生が大人になり、白い杖をついて点字ブロックの上を歩く姿。サラリーマンが年を取り、介助者に手を引かれて階段を昇り降りする姿。女性が、あるいは高齢者が、盲導犬に導かれて歩く姿。そう、彼らが視力を失った姿です。
なぜ、そんな姿が思い浮かんだのか? 川本氏はこう続けます。
実は今、私だけでなく、世界中の眼科医が、同じビジョンと恐れを共有しています。これから、「失明人口」が爆発的に増加する可能性が高いからです。
川本氏の著書『スマホ失明』では、スマホの使い過ぎが失明の可能性を高めると警鐘を鳴らしており、その理由と対策が書かれています。今回はそんな『スマホ失明』より一部抜粋してご紹介します。
※本記事は川本晃司著『スマホ失明』(かんき出版)より一部抜粋し、再編集したものです。
シリコンバレーの重鎮は、子どもにスマホを使わせない
現在、仕事ではパソコンを使うのが当たり前、勉強ではタブレットを使うのが当たり前、人とのコミュニケーションや娯楽、そして日常生活の管理にはスマホを使うのが当たり前……というのが、日本では一般的になってきました。
総務省が2021年度に調査した、スマホの世帯所有率は88.6%。携帯電話やPHSなどのモバイル端末を含めると、その数は97.3%にも上ります。つまり、日本のほとんどすべての家庭に、少なくとも1台はデジタルデバイスがあるということです。もはやデジタルデバイスは、生活に組み込まれたアイテムであることがわかります。
お子さんをお持ちの親御さんの中には、インターネットやSNSが子どもに及ぼす悪影響を懸念して、こうした世の中の流れを危惧する方々も多いでしょう。
子どもの将来のためには、デジタルデバイスの使用を制限したい── そう思う親御さんは多いと思いますが、お子さんに「友達はみんな持ってるし、持ってないと仲間外れにされる」と言われると、なかなか制限しきれないこともあるでしょう。こうなると、デジタルデバイス使用時間の長時間化の流れに逆らうのは、なかなか難しそうな気がします。
しかし一方で、こうした流れに毅然と逆らっている人たちがいることも、事実です。
例えば、ウィンドウズの生みの親である、ビル・ゲイツ氏。
彼の3人の子どもたちが14歳になるまでスマホを持たせてもらえなかったという話は、とても有名なので、ご存じの方も多いでしょう。彼はそれ以降も、夕食の席では子どもたちにスマホを触らせず、日々のスクリーンタイムも制限していました。
ちなみに、ゲイツ氏はおそらく、強い近視の持ち主だと思います。どの程度の近視なのかまではわかりませんが、彼が使っているメガネを、写真や映像で見ると、中等度以上の強い近視があるのではないかと予想されます。
実際、ゲイツ氏はあるインタビューの中で「自分にとってのハンディキャップは、メガネがないと普通の人のように見えないことです」と述べています。彼は自分の近視をハンディキャップと考えていたようです。ゲイツ氏が、子どもたちに自分と同じハンディキャップを背負わせたくないと考えていたとしても、不思議ではないでしょう。
■実際に読んでみた感想
最近、私自身著しく視力が落ちていることに気づき、スマホやパソコンを絶え間なく見ていることが原因の一つだと考え、この本を手にしました。近年のスマホの普及により、「スマホ依存」が問題視されています。スマホ依存の弊害として、最も顕著に表れるものは近視の進行だと考えられています。筆者の川本氏によると、新型コロナウイルスの影響で、若者、特に小中高生の視力の悪化が目立っているようです。
スマホは、子供たちにとってはYouTubeを見たり、ゲームをしたりすることができる最高の遊びのツールですが、親たちにとっても、子供たちがそれに熱中していることで、おとなしくしてくれる「最高の子守り役」となっている事実に驚きました。スマホは、それ一つで様々なことができる便利なものですが、それと同時に失明する可能性を秘めているものでもあります。その事実を認識するとともに、我々はスマホ以外に時間を有意義に使えるような何かを見つける必要があると思いました。皆さんも「スマホ失明」を他人事と思わずに、ぜひ一度読んでみてください。(luna)
■著者からおわりに
「人間は行動した後悔より、行動しなかった後悔のほうが深く残る」これは、米国コーネル大学の心理学者である、トーマス・ギロビッチ博士の言葉です。私は近視対策についても、まったく同じことが言えると思っています。
人生の質(QOL)を大きく左右する目の健康に関して、その対処法を知っていたにもかかわらず、「何も行動しなかった」となれば、悔やんでも悔やみきれない後悔が必ず残ります。そして、その後悔は生涯つきまとうのです。

『スマホ失明』
定価 : 1,430円(税込)
頁数 : 220頁
ISBN : 978-4-7612-7643-0
発行日 : 2022年12月21日
■著者情報
川本 晃司(かわもと・こうじ)
眼科専門医(医学博士)・MBA(経営学修士) 1967年山口県生まれ。高校卒業後、産業廃棄物処理の日雇い労働をしていたが、一念発起して受験勉強を始め、28歳の時に山口大学医学部に入学。34歳で眼科医となり、44歳で眼科クリニック・かわもと眼科の院長となる。専門は角膜。2021年に北九州市立大学ビジネススクールでMBAを取得。現在は眼科専門医としての傍ら、北九州市立大学大学院で医療と認知心理学とを掛け合わせた学際的な研究を行っている。現在の研究テーマは「医療現『場』の行動経済学」と「医師と患者の認知心理学」。