『スマホ失明』失明を加速させる2つの環境要因 #Z世代Pick
こんにちは。Z世代ブックピッカー・lunaです。
みなさんは1日に何時間スマホを使っていますか? 電車の中、ちょっとしたスキマ時間、寝る前・朝起きてすぐ布団の中で。いまや子供から大人まで、老若男女問わず、多くの人があらゆる場面でスマホを使っているかと思います。そんな現状に対して、眼科医の川本晃司氏は、ある光景が浮かんでいるそうです。
数年後、あるいは数十年後──……。元気だった小学生が大人になり、白い杖をついて点字ブロックの上を歩く姿。サラリーマンが年を取り、介助者に手を引かれて階段を昇り降りする姿。女性が、あるいは高齢者が、盲導犬に導かれて歩く姿。そう、彼らが視力を失った姿です。
なぜ、そんな姿が思い浮かんだのか? 川本氏はこう続けます。
実は今、私だけでなく、世界中の眼科医が、同じビジョンと恐れを共有しています。これから、「失明人口」が爆発的に増加する可能性が高いからです。
川本氏の著書『スマホ失明』では、スマホの使い過ぎが失明の可能性を高めると警鐘を鳴らしており、その理由と対策が書かれています。今回はそんな『スマホ失明』より一部抜粋してご紹介します。
※本記事は川本晃司著『スマホ失明』(かんき出版)より一部抜粋し、再編集したものです。
「失明パンデミック」を加速させる、二つの環境要因
では、近視人口の急増を引き起こし、失明パンデミックを加速させる、環境要因の変化とは何か。
一つは、「屋外活動時間の減少」です。
近年、近視の予防には「照度」、つまり身の回りの明るさが重要であることがわかってきました。近視進行予防の観点からすると、「1000ルクス以上の光」を、週に11時間以上浴びる必要があることがわかっています。
ちなみに、日中の屋外の照度はどれくらいかというと、日なたは数万ルクス、木陰でも数千ルクスあります。近視予防的には、十分な照度です。
対して、屋内の照度はどうかというと、一般的な屋内はたったの300ルクス程度、窓際でも800ルクス程度しかないとされています。つまり、一日中家の中にいると、近視を発症・進行しやすい環境にいることになるのです。
生活様式の変化により、人々が屋外で過ごす時間は年々減少しています。
こうしたことが、近視を進行させる、環境要因の一つと考えられています。
そしてもう一つ考えられる環境要因の変化が、「近業時間の増加」です。
近業とは、目と対象物との距離が近い状態で行う作業のこと。距離でいうと、30cm以内で行う作業のことです。
この近業が、近視を悪化させることがわかっています。
近業を続けると眼球そのものが伸びてしまい、その結果、遠くを見ようとしてもピントが合わなくなります。つまり、近視が進行するのです。
■実際に読んでみた感想
最近、私自身著しく視力が落ちていることに気づき、スマホやパソコンを絶え間なく見ていることが原因の一つだと考え、この本を手にしました。近年のスマホの普及により、「スマホ依存」が問題視されています。スマホ依存の弊害として、最も顕著に表れるものは近視の進行だと考えられています。筆者の川本氏によると、新型コロナウイルスの影響で、若者、特に小中高生の視力の悪化が目立っているようです。
スマホは、子供たちにとってはYouTubeを見たり、ゲームをしたりすることができる最高の遊びのツールですが、親たちにとっても、子供たちがそれに熱中していることで、おとなしくしてくれる「最高の子守り役」となっている事実に驚きました。スマホは、それ一つで様々なことができる便利なものですが、それと同時に失明する可能性を秘めているものでもあります。その事実を認識するとともに、我々はスマホ以外に時間を有意義に使えるような何かを見つける必要があると思いました。皆さんも「スマホ失明」を他人事と思わずに、ぜひ一度読んでみてください。(luna)
■著者からおわりに
「人間は行動した後悔より、行動しなかった後悔のほうが深く残る」これは、米国コーネル大学の心理学者である、トーマス・ギロビッチ博士の言葉です。私は近視対策についても、まったく同じことが言えると思っています。
人生の質(QOL)を大きく左右する目の健康に関して、その対処法を知っていたにもかかわらず、「何も行動しなかった」となれば、悔やんでも悔やみきれない後悔が必ず残ります。そして、その後悔は生涯つきまとうのです。
『スマホ失明』
定価 : 1,430円(税込)
頁数 : 220頁
ISBN : 978-4-7612-7643-0
発行日 : 2022年12月21日
■著者情報
川本 晃司(かわもと・こうじ)
眼科専門医(医学博士)・MBA(経営学修士) 1967年山口県生まれ。高校卒業後、産業廃棄物処理の日雇い労働をしていたが、一念発起して受験勉強を始め、28歳の時に山口大学医学部に入学。34歳で眼科医となり、44歳で眼科クリニック・かわもと眼科の院長となる。専門は角膜。2021年に北九州市立大学ビジネススクールでMBAを取得。現在は眼科専門医としての傍ら、北九州市立大学大学院で医療と認知心理学とを掛け合わせた学際的な研究を行っている。現在の研究テーマは「医療現『場』の行動経済学」と「医師と患者の認知心理学」。