100年以上愛され続ける理由とは? 国民的ドリンク「カルピス®」のマーケティングのお仕事【お仕事図鑑】

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白くて甘ずっぱい国民的ドリンク「カルピス®」。「子どもの頃に家族とよく飲んだ」「今も変わらず好き!」と感じている学生も多いのでは?

今回は子どもからお年寄りまで幅広い世代で愛され続けている、カルピス®のマーケティング担当者にインタビュー。

グループリーダーの山口真代さんに、カルピス®ブランドの魅力、長期に渡ってヒットさせる秘訣、マーケティング業務に必要なスキルなどを伺いました。

プロフィール

PROFILE

山口 真代

マーケティング本部 マーケティング二部 乳性グループ グループリーダー 2007年カルピス株式会社(2016年アサヒ飲料株式会社と経営統合)に新卒入社。入社後、研究職として商品開発研究所に配属。その後、乳性飲料や果汁飲料、サワーなどの商品の処方開発に従事。2011年からマーケティング部に異動し、乳性飲料を中心とした商品開発を担当。現在は乳性グループのグループリーダーとして、希釈タイプの「カルピス®」や「カルピスウォーター®」、「カルピスソーダ®」など「カルピス®」ブランド全体のブランド戦略の策定と遂行を担う。11名のグループメンバーとともに日々業務に邁進。


100年以上愛されるロングセラー!カルピス®ブランドの特徴

ーー現在担当している仕事について教えてください。

カルピス®ブランドに関するマーケティング業務を担当しています。「カルピス®」というブランドの価値をどのように高め、より多くのお客様に購入していただくか戦略を立案し、商品、広告、販促の内容を考え、関連する部署のメンバーと一緒に具体化する仕事を行っています。

ーー改めて、カルピス®ブランドの特徴について教えてください。

多くの人に愛され続けているロングセラーブランドであることです。1919年に日本初の乳酸菌飲料として発売されて以来、およそ100年以上親しまれています。日本での認知度も100%に近く、「直近1年以内に飲んだことがある」という経験がある人も50%ほど。非常に多くの方にご愛飲いただいていることが一番の特徴となります。

ーー100年以上とは驚きです!カルピス®の作り方は発売以来変わっていないのでしょうか?

大元となる「考え方」と「作り方」は100年以上守り続けています。

まずは「考え方」です。カルピス®は三島海雲(みしま かいうん)という人物が「おいしくてカラダにいい飲み物で、日本人の心身がより健やかになってほしい」という願いを持って作ったことが始まりです。この三島海雲が作った「カルピス®の四つの本質的価値」が発売から現在までずっと受け継がれています。 

四つの価値とは、一つ目が「おいしいこと 」、二つ目が「滋養になること」、三つ目が子どもからお年寄りまでが飲める「安心感があること」、四つ目が「経済的であること」です。 

もともとカルピス®は薄めて飲む希釈タイプからスタート。「薄めてたくさん飲めるため、経済的ですよ」という意味合いでした。現在は時代やニーズに合わせてさまざまな商品が生まれ、楽しみ方が広がった意味で「経済的」と伝えています。この四つの価値は創業当時から変わっていません。 

「作り方」については、技術の進化はありますが、根本的な作り方は変えていません。カルピス®は国産の牛乳を原料とし、乳酸菌と酵母で発酵して作っています。牛乳の脂肪分を取り除いて、その脱脂乳に乳酸菌と酵母の集合体である「カルピス菌」を入れて発酵させます。 

カルピス®は発酵過程が二回あることも特徴です。一回目は乳酸菌の発酵。カルピス®を飲んだときに酸味を感じるかと思うのですが、乳酸菌の発酵によって酸味が生まれています。その後、砂糖を加えて二回目の発酵を行います。酵母が活躍し、カルピス®の香り成分が生み出されることで、唯一無二のおいしさが作られています。

長期に渡り商品をヒットさせ続ける秘訣とは?

ーー長期に渡りブランドをヒットさせ続けるための秘訣を教えてください。

ブランドの価値を踏まえ、継続的に向上させていく取り組みを行うことです。

例えば自動販売機が登場した頃、カルピス®ブランドも危機に陥った経験があります。当初は希釈タイプが主流だったため、家の中で薄めて飲むのが基本でした。

ですが自動販売機の登場によって、外で飲み物が飲みたいときに買えるようになりました。その結果、希釈タイプは手間がかかり「面倒くさい」「外で飲みたいときに飲めない」というイメージに変化したんです。このままではカルピス®を手にとってもらえないと、外でも楽しめるように商品を変えようと作られたのが、カルピスソーダ®やカルピスウォーター®です。価値はそのままに、商品の形態を変える工夫を積極的に取り組んで、危機を脱出できました。

商品形態だけではなく、品質の価値向上も大切です。例えば15年ほど前、社員の中では、カルピス®は牛乳から作られ、乳酸菌を使って発酵させているため、「安心できる健やかな飲み物」だと認知されていました。

しかしお客様への調査を行ったところ、単なる「甘い飲み物」という認識のみを抱いている方が多かったんです。お客様に伝えたい価値があるのに、全く伝わっていないことに気がつきました。そこで、国産の牛乳から作られていることや、乳酸菌と酵母を使った発酵食品であることなど、品質・製法の良さを伝える活動を行っていきました。結果的に品質の高いイメージや健康的なイメージが上がり、購買に繋がりましたね。

  先ほどお話した四つの価値だけですと“守り”になってしまいます。お客様に喜んでいただくためには、価値を強化する観点を忘れず、世の中の環境変化に合わせて形態や新たな商品を提案したり、お客様が知らない価値について伝えたりすることが、長く愛され続けるための秘訣だと思います。

ーーブランド戦略において、一番大切なことは何でしょうか?

「守り」と「攻め」のバランスです。カルピス®はロングセラーブランドなため、守るべき資産が多くあります。先代たちが作り上げてきた資産を守るだけですと楽ですし安全です。しかし、時代の変化とともに、守ることだけではお客様に飽きられてしまったり、お客様の価値観とあわなくなってきてしまいます。

  いつまでも喜んでいただくために、いい意味でどこまで攻められるか。攻めすぎると長く愛し続けていただいているお客様が多い分、「前のほうが良かった」といったご指摘をいただくこともあります。カルピス®ブランドの魅力を維持するためには、この「守り」と「攻め」のバランスは非常に重要ですね。

「“発想力”と“論理的思考”が大切」マーケティングを目指す学生が今できること

ーー山口さんは研究職からマーケティング部へ異動されています。マーケティング部へ異動が決まったときはどのような心境でしたか?

もともと研究職だったため、自分自身がマーケティングの部署に異動するとは思っておらず驚きました。「私にはできないだろう」と感じていたため、最初は不安でしたね。

とはいえ、研究職でもマーケティングの方々と一緒に仕事をする機会が多かったため、なんとなく仕事内容は知っているつもりでした。ですが、いざ仕事をしてみると、非常に幅広い業務を担当し、慣れていないこともあり「もういやだ」と思ってしまう日もありましたね(笑)。少しずつ慣れていき、研究職で培った論理的思考もマーケティング業務に役立つと感じるようになりました。

ーーマーケティングのお仕事で、大変なことを教えてください。

「100%上手くいく手段がわからないこと」です。

例えばA・B・Cと案があった場合、どれが一番お客様にとって満足していただけるかを見極めるのは非常に難しいです。

以前、期間限定で販売してヒットした「夏のこく甘『カルピス®』」のリニューアル品を出す仕事を担当しました。夏限定の商品でコクがあり、甘さが強いカルピス®です。一般的には「夏のこく甘『カルピス®』」で売れたため、踏襲して販売したほうがいいと考えます。

しかし、購入したお客様に対して実施した調査結果を見たときに、正式名称で呼んでいるお客様はほとんどおらず「濃いカルピス®だ!嬉しい」といった声が多かったんです。「コク甘」という味の表現が評価されていたわけではなく、「小さい頃に親に隠れて飲んだ、濃いめに作ったカルピス®のような味だ」という点が評価されていると分かりました。

でしたら、「ストレートに商品名を『濃いめのカルピス®』にしてはどうだろう?」と考えました。社内で話してみたところ「変えないほうがいい」という意見も。この場合、どちらも間違いではないんですよね。正解は世の中に出してみないと分からないからこそ、お客様の声を聞き柔軟に発想するとともに、論理的に整理してどのようなアウトプットが一番お客様に魅力的に感じてもらえるかを判断することが難しさだと感じます。

※現在は終売しています

ーーこの仕事のやりがいを教えてください。

商品を生み出せることにやりがいを感じます。今の時代は、自分が一生懸命作った商品を「美味しかった」「すごい」などとSNSでコメントをつけてくれる人たちが大勢います。喜んでいただいている様子を目の当たりにできるのが、非常に嬉しくやりがいに繋がっています。 

マーケティングの仕事を12年していますが、この気持ちはいつまでも色褪せることはありません。ロングセラーブランドを担当していると、より多くのお客様に生み出したものを届けられて、その声を聞くことができます。非常に魅力のあるお仕事ですよ!

ーーマーケティング業務で求められるスキルを教えてください。スキルを磨くために学生のうちからできることはありますか?

前提としてマーケティングの知識は入社してから学べるので安心してください。あくまで私個人の意見になりますが……発想力と論理的思考力ではないでしょうか。

発想力は新しい商品を生み出す上で必要です。何かものを見たときに「これはどのように作ったのかな」「私だったらこう作る」といったように、今ある事実を見るだけではなく、それ以外に思考を巡らせられたりすると発想力が豊かになります。普段からコンビニやスーパーで商品を手に取り、「この商品はどのような狙いで発売したのだろう」と考えてみるといいですね。

論理的思考力は、浮かんだアイデアを具体化するときに役立ちます。論理的な思考ができないと、アイデアを説得力のある内容にまとめるのは難しいです。整理できて初めて商品が作れると思いますので、自分の思いを論理的にまとめ、一つの案として成立させる力は併せ持てるといいですね。

カルピス®の仕事は、飲み物を通して“日常の中にある幸せ”を提供できる

ーー山口さんがアサヒ飲料(※カルピス株式会社に入社後、現在は統合)に入社を決めたきっかけを教えてください。

日常生活の中にある、小さな思い出や幸せを提供できるところに魅力を感じたためです。

理系だったこともあり、卒業後は飲料や食品、化粧品、薬品などの研究がしたいと考えていました。就職活動でさまざまな業界の方のお話を聞く中で、身近にある「飲みもの」を通して、多くのお客様と接することができる仕事に魅力を感じ、飲料業界を目指すようになりました。

特にカルピス®は、子どもからお年寄りまで幅広い世代に親しまれていて、単純に「おいしいから」だけではなく、一人一人の中に思い出があることが他の飲料とは違うと感じたんです。

カルピス®の話になると、「そういえば夏休みでおばあちゃんの家に遊びに行くと、いつも冷蔵庫に入っていた」や「家族みんなで濃く作っていた」など、おいしい・おいしくない話だけではなく、一人ひとりの思い出にカルピス®が紐づいていると知りました。

  大きな思い出とまではいきませんが、身近にある商品を通して、日常の中にある小さな思い出や幸せを提供できるところに魅力を感じ、この会社を選びました。

ーーありがとうございます!最後に今後のカルピス®ブランドの展望について教えてください。

攻めの姿勢を忘れずに挑戦し続けたいです。「カルピス®ってこんなこともするんだ」「飲んでみたい」と新しい一面を感じてもらえるような活動を、今後も継続的に行っていきたいですね。「まだまだカルピス®はこんなものじゃない!」と、新しい魅力を見せていけたらと思います!

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文:田中青紗
編集:学生の窓口編集部
取材協力:アサヒ飲料株式会社

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活字中毒の中年編集者です。暇さえあれば本やウェブコンテンツを読み漁っています。 文章や言葉で読者を楽しませたり、悩みに寄り添い勇気づけられるよう、日々悪戦苦闘しながら言葉を紡いでいます。

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