自分の持っているスーツは一着だけだ。一張羅っていうやつか。大学の入学時に買ってもらった黒のスーツ。…|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:勝負服
エッセイキーワード:勝負服
エッセイタイトル:『一張羅』/著者:じん さん
570文字/2分くらいで読み終わります。
自分の持っているスーツは一着だけだ。一張羅っていうやつか。大学の入学時に買ってもらった黒のスーツ。就活にも使えるし礼服にも使える厳密にはリクルートスーツでもないし、礼服でもないのかもしれないが、大学生のフォーマル服にあれこれ言ってくる人はいないだろう。言ってくる人がいたとしても、どうしようもないからしょうがないだろうと開き直っている。
自分にはお金がない。
東京の家賃は高い。と言われている。他の地域の相場を知らないからそうらしいとしか言いようがないが、1ルーム4万6千円の家賃は自分にとって楽ではない。アルバイトはしているがギリギリだ。無給のインターンは時間に空きができるときの1dayしか選択肢に入らなかった。
ガクチカは、バイトの経験からひねり出すしかない。頑張ったと言えるほどの勉学もサークルもやってない。手持ちのカードは貧弱だ。
それでも闘えるんだろうか。キラキラした経験を語り、場が始まるやいなやイキイキとしゃべりだすようなやつらと。
正直不安と引け目しか感じないが、それでもチャンスがあるなら闘うしかない。「素のあなたを見せてください」っていう企業が、輝いてるとは言い難い素の自分を拾ってくれると望みを託して。自転車のチェーンに巻き込んで裾がほつれたスーツで。直すのも新しいものを買うのも難しい、ぼろぼろの勝負服こそが素の自分なのだから。
著者:じん さん |
学校・学年:日本大学 3年 |
著者コメント:ちょっとでも生活の足しになったら嬉しいです! |
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