理系ライターが行く!vol.8『マンションは人がつくるもの、その作業の確かさを支えるリケジョの思い』#大学生の社会見学

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理系ライターXがすべての大学生に贈る、企業見学レポート連載! 持ち前の「理系知識」を駆使し、様々な企業に取材! 企業の知られざる一面や、想像もしなかった"あたらしい働き方"が見つかるかもしれないぞ。

長谷工コーポレーションに取材してきたぞ

現代の住まい、特に都市部で重要な選択肢となるマンション。その建設現場にはもちろん、さまざまな最新設備が導入されています。

しかし、それらの機械、例えば吊り上げられた鉄筋を設計図書に定められたとおりに設置するのは人の手によって行われているのです。さらに、人によって施工された結果が、定められたとおりになっているかを確認するのも人の仕事です。

今回は、マンション設計施工日本一のシェアを持つ長谷工コーポレーションで、施工管理業務を担当する中里さんに、リケジョ(理系女子)として働くおもしろさや仕事のきびしさと、それ故のやりがいなどについて伺いました。

まっさらな土地に、幸せな住まいを建ちあげる

中里さんは現在、都内のマンション建設現場で働いている。ここは地下鉄の駅から徒歩2分の場所、15階建てのマンションが完成すれば、約100世帯が入居できる。  

「このマンションの立地は地下鉄のすぐそば、正確には敷地の一部分の下を地下鉄が通っています。だから万全の振動対策を行うため、地下を掘削して全面にビーズ法加橋ポリエチレンフォーム(発砲ポリエチレンフォーム)を敷き、その上にコンクリートを打つといった特殊な工法を採用しています」と、中里さんは話を切り出した。  

土地を仕入れて設計から施工までの提案を行い、不動産会社から『特命受注(※)』し事業を展開する。これが日本最大のマンション設計施工実績を誇る、長谷工コーポレーションの仕事の進め方だ。  

※特命受注:自ら仕入れた土地情報を事業者に持ち込み、プランとともに提案営業する長谷工独自のビジネスモデル。近隣との折衝・行政協議や販売・管理業務を含めた全てを担う。

入社3年目の中里さんにとっては、ここが2つめの現場となる。最初に配属されたのも都内のマンション建設現場だった。

初めて現地を訪れたときの印象を「更地って本当に何もないところ。そこに文字通りゼロからマンション、つまり人の暮らしの場をつくりあげていくんだ。そう思うとすごくやりがいを感じました」と振り返る。現場で実際に仕事をするようになり、マンション建設についての考え方が大きく変わったという。  

「マンション建設については、何となく建設機械が組みあげていくイメージを抱いていました。けれども、それは大まちがい。確かに鉄筋などの運搬・揚重には機械を使いますが、作業現場で組み上げた鉄筋を下ろして、定められた位置に設置する作業は、すべて職人さんたちが受け持っています」  

実際の作業の大半を、人が汗水を流して取り組んでいる。その結果として一棟のマンションが完成する。内装工事などをすべて終えて、初めて灯りが点けられマンションがぱっと明るくなった。そのときの深い感動を今でもはっきりと覚えているという。

現在、中里さんが携わっているマンションの完成予想図。これだけ大きな建物でも、ミリ単位での精度が求められる。

ミリ単位の精度が暮らしを守る

中里さんの担当業務は、施工管理業務の一つ品質管理だ。これは設計図書や仕様書通りに建設が行われているかを、作業ごとに定められた品質検査を行って確認する業務である。一つ工程が完了するたびに現場をきめ細かく見て回り、施工状況を綿密に確認していく。現場を確認するために、建設中ゆえ遮るものがなく強風が吹きつける高層階や手すりが完成していない屋上にあがることもある。  

「もちろん万全の体制で安全は確保されていますが、なかなかスリリングな職場ともいえます(笑)。担当の鉄筋工事については鉄筋に関する知識などがあれば、検査自体はそれほど難しいものではありません。ただし、慎重さと注意深さが絶対条件です。具体的には鉄筋や型枠が組まれたときに、図面通りに収まっているかどうかをスケールで計測して確認します。測定にはミリ単位の精度が求められます」  

マンション全体のスケール感からすれば、ミリ単位の誤差などほんのわずかなものと思える。ところが、そのレベルでの完成度を確実に100%にしておかないと、何十年にわたって人が安心して暮らせる住まいとはならないのだ。品質管理の責任は重大である。職場は現場事務所と建設現場を何度も往復するが、もちろん建設中の現場には空調は設置されていない。  

「夏場は暑いし、冬は寒い。そういう仕事だと覚悟はしていました。とはいえ最近はテクノロジーが進歩したおかげで、夏は超小型扇風機の内蔵された作業服がありますし、冬はウルトラライトダウンを中に着込んだりできます。以前と比べれば、仕事をする環境は段違いに改善されていると思います」  

ただし、昔から変わらないものが一つある。現場で作業してくれる職人さんとの関係づくりの大切さだ。機械の操作を含めて、現場での作業はすべて職人さんに任せることになる。  

「だから、万が一、私たちのミスで職人さんの手間が増えるときなども、何とかお願いしてやってもらう必要があります。そんなとき、気分良く引き受けていただくには、やはり普段からのコミュニケーションが大切です。人がつくるマンションでは、最後に頼れるのも人しかいませんから」

ものづくりの現場にあこがれて

中里さんは、小学生の頃から戸建ての家やマンションに興味を持っていた。自宅の新聞に折り込まれるマンションのチラシなどを集めるのが大好きだったという。  

「チラシを見て、間取りを想像してみたり、図面とパースを比べるのが大好きでした。ちょっと変わった女の子だったかもしれません」  

高校時代には建築学科のある大学に進学すると決める。願いどおりに合格した後、1~2年生で建築の基礎を学び、就活時期を迎え改めて自分の進路を考えた。  

「建築関係の仕事は多様です。意匠系、つまり建築設計をめざす人も多いなかで、私はデスクワークより現場で働きたいと思いました。強堅な鉄筋がどんなふうに建てられていくのか、型枠がどのように組み立てられていくのか。そんな光景を目の前で見ることができたら、きっとすごい!そう思うとワクワクして、今の施工管理業務を選んだのです」  

そして実際に仕事に携わるようになり、想像をはるかに超えるきめ細かな品質管理に感動する。決められたルールが完璧に守られる。だからこそ、そのマンションに住む人々の暮らしの安心が、将来に渡って保証される。  

「自分の関わった仕事が、未来にまで確実につながっている。そう思うと、少し大げさかもしれませんが、建てられたマンションの一つひとつが、私の生きた証になるようにも思えるのです」

女性の活躍を後押しする仕組み

建築系の仕事を探すなかで、今の会社を就職先に選んだ理由は何だったのだろうか。  

「就職先選びに関しては、条件を2つ考えていました。第1は住まいづくりに携われること、第2は、街づくりのようにスケールの大きな仕事にも関わりたいと思いました。そうなるとマンションデベロッパーやゼネコンが選択肢となります。その意味で長谷工は、日本一のマンション設計施工実績があるのですから、2つの条件を完全に満たしています。その上、当社には女性の活躍を支援してくれる仕組みがきっちりと整えられていました」 

長谷工では女性社員、通称「ハセジョ」たちが、施工現場だけでなく、マンションライフに関わるすべてのフィールドで活躍している。数ある現場の中には、女性の管理者だけで建設管理すべてを担当した案件もある。尚、この物件は現場だけではなく、事業企画から開発推進、設計、施工、インテリア内装、販売そして管理まで、全部門に女性が起用された。  

「現場には『なでしこルーム』と呼ばれる、女性専用のスペースが確保されています。もちろんトイレも女性用が設置されます。社内制度としては、産休はもとより育児休暇も確実に取れます。私の先輩方も今は産休を取られていますが、子育てが落ち着いたら復帰される予定です」  

そんな中里さんの目標が現場所長だ。そこまで到達するには、かなりの年数がかかる。けれども、いずれは自分も所長としてバリバリやってみたいというのが、将来の夢だ。  

「当社も最近はDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。おかげで今では現場に出るときも、タブロイド式の携帯端末を一つ持っていけば、それ以外の資料類などはほとんど不要です」  

まだ少し先の話になるだろうが、建設現場で働くロボットも開発が進められている。ひょっとすると10年後には、VRやARなどの進歩により、自宅にいながら現場を確認したり作業指示を出して、現場で作業をするのは建築ロボット。そんな近未来像も描けそうだ。そのとき建設現場を取り巻く環境は今と一転しているだろう。  

「今のところは現場仕事は体力が必要なので、男性がメインと思われています。とはいえマンションづくりに欠かせない施工管理に関しては、体力は関係なく男女も問われません。むしろチェックのきめ細かさなどには、女性が向いているともいえます。ぜひ、これから先の働く場所として、建設現場も視野に入れてくれる女性が増えることを期待します」

株式会社 長谷工コーポレーション
建設部門 第一施工統括部
中里 愛莉奈(なかざと えりな)

首都大学東京 都市環境学部 都市環境学科卒業、材料系の研究室に所属し、2020年には一級建築士試験に合格。入社以来、ずっと建設現場での仕事に携わっている。

※記事内容及び社員の所属は取材当時のものです。

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文:竹林篤実
イラスト:TOA
編集:学生の窓口編集部

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