寝ているときの夢は、朝起きると忘れていることが多いのはなぜ? #もやもや解決ゼミ

編集部:すい
2020/09/30
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寝ているときに見る「夢」は、起きるとなぜかすぐに忘れてしまいますよね。インパクトの強い夢であっても、気がつくと内容が思い出せないことが多いのですが、これはなぜなのでしょうか?

寝ているときの夢は、朝起きると忘れていることが多いのはなぜ? #もやもや解決ゼミ

今回は、「夢の内容をすぐに忘れてしまう理由」について、名古屋大学環境医学研究所の山中章弘教授にお話を伺いました。山中先生は神経生理学を専門に研究をされており、2019年9月には「浅い眠りで記憶が消去される仕組み」を解明されたことでも注目されています。

そもそも夢ってなに?

そもそも、夢を見る理由やメカニズムは科学的に解明されていません。謎の多い分野なのです。しかし、最近の研究によってさまざまなことが分かってきました。

睡眠時の状態には、深い眠りの「ノンレム睡眠」と、浅い眠りの「レム睡眠」があります。夢を見るのは、レム睡眠時に起こる現象だと長年いわれていました。しかし、最近の研究では、ノンレム睡眠時でも夢を見ていることが分かりました。つまり、寝ているときは常に夢のようなものを見ている状態にあるということです。

ただし、それぞれの状態で見ている夢は特徴が異なります。ノンレム睡眠時の夢は不鮮明ですが、レム睡眠時に見る夢は鮮明なことが多く、起きたときに内容を覚えていることが多いのです。

これはなぜかというと、脳の活動状態に差があるためです。ノンレム睡眠時の脳は休んでいますが、レム睡眠時の脳は活発に動いており、起きているときに近い状態です。そのため、レム睡眠時に見る夢は色が鮮やかであったり、ストーリー性の高い夢だったりします。

また、人はレム睡眠の後に覚醒することが多いので、その内容も覚えていることが多いのです。

夢の役割とは?

夢を見る理由については先述のように明らかになっていませんが、一つは「記憶の整理に関係があるのでは」と推測されています。

例えば、みなさんが思い出を残しておきたいという理由で写真を撮るとします。その写真を友達に見せる場合、データがどのファイルにあるのか分からないと困りますよね。脳も同じで、記憶したことが整理されていない状態だと使い物にならないのです。そのため、人間は寝ているときに「必要な記憶と不要な記憶の整理」「記憶の関連付け」を行っていると考えられています。

特にノンレム睡眠のときに大事な記憶を固定していることが最近の研究で分かりました。「勉強した後にすぐに寝ると学習内容を覚えやすい」という話がありますが、これはノンレム睡眠時に記憶の固定をするので、このタイミングに寝るといいといわれているのです。

ただし、ノンレム睡眠時の記憶の固定は、あくまでも「大切な情報を忘れないようにするだけ」であって、先ほどの写真の例でいえば「撮影しただけ」の状態です。このデータを使いやすいように整理しないといけません。その整理を行っているのが「夢」だと推測されています。

例えば料理の記憶があり、その料理が「昔友達と食べたもの」だった場合、記憶を引っ張りやすいよう、単にその料理というだけでなく「昔の友達」とも脳がつなげようとします。そうすると、単に料理を食べているだけでなく、昔の友達と食べている夢になるというわけです。

このようにして、脳は関連する情報を次々につなげていき、1つのストーリーにまとめます。そのため、時にありもしない状況や不思議な内容の夢になることがあるのです。

脳が、夢を「覚えさせない」ようにしている

レム睡眠時に見た鮮明な夢であっても、起きてからしばらくすると「どんな夢だっけ?」とすぐに忘れてしまいます。それはわざと「忘れるようになっているから」です。

正確にいえば、夢は忘れるのではなく「覚えてはいけない」ようになっています。先ほどもお話ししたように、夢は記憶を固定し、整理するために大事なものです。しかし、非常に鮮明なため、そのまま覚えていては起きた後に「認知の障害」が起こる可能性があります。つまり、夢の内容が現実で起きたものだと勘違いしてしまうのです。

夢を覚えさせないようにする役割を担っているのが、脳にある「視床下部」という部分です。視床下部は自律機能の調整など、人間が生きる上で重要な役割を担っている器官です。この視床下部にはメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)と呼ばれる神経があります。私たちの研究で、この神経がレム睡眠中に活性化し、記憶をつかさどる海馬に「記憶ができないように働きかけていること」が分かりました。

したがって、夢の内容を記憶できないのは、このMCH神経のメカニズムによるものだと推測しています。

他記憶の強度がコントロールできるようになる……かも?

現在、さまざまな役割を持つ薬が作られていますが、「記憶」に影響を与える薬はできていない状況です。強いショックを受けたことによる心的外傷後ストレス障害や、記憶したことを忘れてしまうアルツハイマー型認知症など、記憶障害と呼ばれる症状は多くあります。

そのため、こうした症状に対する新しい薬の作用点に、私たちの研究がなればいいなと考えています。例えば、「記憶したことを忘れる、記憶する力を強くする」といった、記憶をコントロールできる薬が作られるようになるかもしれません。

夢を見るために睡眠をしっかりとろう

現在、若い世代のみなさんはスマートフォンの利用が当たり前になり、夜遅くまでスマホの画面を見ている人も多いと思います。その影響で、睡眠に問題を抱えている人が非常に多くなっています。

スマホの画面にはLEDが使われており、画面から出る光には青色の光(ブルーライト)が多く含まれています。生物がこれまで進化してきた38億年の間、夜間にこれほど明るい青色光に長期間さらされることはありませんでした。そのため、睡眠を削った生活を続けていると数十年後に脳にどんな影響が出るか分かりません。

デジタル機器は非常に便利で生活に不可欠なものですが、睡眠を研究する人間としては、若い人には睡眠をおろそかにしないようにして、本当の夢を多く見てもらいたいですね。

夢は脳の器官の働きによって「覚えないよう」になっているとのこと。起きても夢の内容自体が思い出せなかったり、しばらくすると内容がすっと頭から消えたりするのはこうした理由からなのです。ちなみに、たまにすごく覚えている夢があると思いますが、それはまだ夢を少し覚えている間の起きてすぐのうちに、夢の内容を頭の中で何度も再生するために、記憶することができるからなのだとか。起きているときに記憶するからそのまま覚えているだけであって、寝ている時点でその夢を記憶しているわけではないのだそうです。

イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp

教えてくれた先生

山中章弘 Profile

名古屋大学 環境医学研究所 ストレス受容・応答研究部門教授
1972年生まれ。2000年3月、筑波大学大学院 医学系研究科博士課程修了。2000年4月より筑波大学先端学際領域研究センター助手。2002年12月より筑波大学基礎医学系・講師。2006年6月より日本学術振興会 海外特別研究員としてイェール大学医学部客員研究員兼任。2008年2月より自然科学研究機構生理学研究所・准教授。2012年4月より現職。
⇒名古屋大学 環境医学研究所 神経系分野II 山中章弘研究室
http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/4/neuroscience2/nr/

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お笑いとK-POP好き。名前の由来は「すいすい物事がうまくいくように」「水のようにチームになくてはならない存在になるように」から。
★ほっとけない学生芸人GP(@gm_hottokenaigp)運営も兼任中。

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