中途半端は見抜かれる。俳優・溝端淳平の「仮面」をかぶらない生き方

編集部:すい

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あなたは、ふだん「仮面」をかぶって過ごしていることに気づいていますか? 友達相手に、恋人相手に、SNS上の投稿で、面接で……、その時々で違った「仮面」をかぶって過ごしているはず。同様に、俳優という仕事も日々「仮面」をかぶって人前に出なければならない仕事です。

では、自分たちの“本当の姿”とは、そもそも何なのか……。

今回は、ドラマ『仮面同窓会』で5年ぶりに民放ドラマの主演を務めることになった溝端淳平さんに、「仮面をかぶって生きる」というテーマで、溝端さんの“仮面”に対する考え方を伺ってきました。

文:落合由希
写真:為広麻里
編集:マイナビ学生の窓口編集部

【INDEX】
1.「溝端淳平」としての仮面をはがす
2.就活で仮面をかぶるのは当然。でも……
3.SNS上はみんな「仮面の姿」
4.蜷川幸雄が教えてくれた本当の自分
5.互いに仮面を外して現場作りを
6.チェキプレゼント情報

まず相手に抱かれる「溝端淳平」としての仮面をはがす

――溝端さんは、日常で「仮面をかぶってしまう瞬間」はありますか?

仕事柄、自分とは違う人を演じるという意味では毎日仮面をかぶっているようなもの。なので、なるべくそれ以外のところでは仮面をかぶらないようにしてます。

人によって違うんでしょうけど、僕の周りはあまり取り繕わないタイプの人が多いし、僕もふだんありのままで人と接している感じですね。もともと腹を割って話さないと人づきあいができないタイプなので。でも、若い女性にはついおじさんぽいことを言ってしまったりして……(笑)。

――おじさんの仮面をかぶってしまう?

若い女性といっても年齢的にはそんなに変わらなかったりするんですけど、なんかすごくお父さんみたいな感覚で話してしまうことがあるというか。なんていうか……ちょっと照れ隠しというか……そういう意味ではどこかで仮面をかぶってるのかなぁ。「優しそう」とか「下ネタとか言わなそう」とか言われるんですけど、そんなこともないので(笑)。

――パブリックイメージと実際のご本人との間にギャップがあるんですね(笑)。

そうなんです。あと自分が仮面をかぶってなくても、相手から仮面ありきで話しかけられることがあるので難しいですね。僕にとっては初めて会った人でも、相手は自分に対してあらかじめ「こういう人なんだろうな」っていうイメージを持って接されるので、どちらかというと人がつけてくれたその仮面をはがすことのほうが多いかもしれないです。

就活で仮面をかぶるのは当然。でも大人は見抜く

――大学生の場合だと、就活面接のときに自分をよく見せようとしたり、大きく見せたくて「仮面をかぶってしまう」ということも多いのですが、共感する部分はありますか?

就活では全員仮面をかぶるじゃないですか。ウソつきがちですよね、みなさん。

――そうかもしれないですね(笑)。

きっと就活生も「こう言わなきゃいけない」と思って、言ってると思うんですよね。「なんとなく楽しそうだから来ました〜」なんて面接で言う人、ひとりもいないでしょう?

――そんなこと言ったら落とされそうですもんね。

だから、就活においても仮面をかぶるのは大事なことだと思います。僕らの仕事もそうです。世間にはいろんな受け取り方をされる方がいるので、やっぱり不特定多数の人に届くメディアに出る側の人間も、全員ある種の仮面を持っていなくてはいけないと思います。

仮面の塗装が完璧な人は、逆に素晴らしいなと思うんです。完璧だと相手にとってはそれが「真実」だし。でもたまに、塗装がつぎはぎになってたり、ところどころはがれてたりする人っているじゃないですか。そういう人には「なんでそんな仮面かぶるんだろうなぁ」って思っちゃいます。だから、就活の面接でも、なかなかはずれない仮面ならかぶってもいいと思うけど、付け焼き刃でかぶるような仮面は「大人はすぐ見抜くんじゃないかな?」と思いますね。

――自分ではバレてないと思ってたりしますよね。

そうそう。役を演じているときも、人と接しているときもそうなんですけど、自分がこう見せたいって思ってつける仮面と、自分の中にいくつかある人格像のうちのひとつとが、うまくマッチしていればいいんじゃないかなと思いますね。まったく自分にないものからできた仮面を無理やり付けてもやっぱりバレちゃうと思うので。

SNS上はみんな「仮面の姿」

――SNS上で自分をよく見せようとして“盛る”というのも、ある意味仮面をかぶっていると言えるかもしれないですよね。

それは捉え方の問題かな……。たとえばインスタグラムですごく加工してキレイだなって思って、そのあとに実物を見て「全然違うじゃないか!」って怒る人もいるかもしれない。でも、「それはあくまで“インスタグラムの〇〇”であって、実際の〇〇とは違うんだよ?」っていう捉え方ができれば全然いいわけで。

それは僕らも同じようなもので、たとえばすごく明るい役をやっている時期に、たまたま出会った人から「なんか暗くない?」って言われることがあるんですけど、それはあくまでドラマの中で演じている役のイメージだし、実際の僕とは違うんだということをみんながわかってくれるといいなと思います。

「ヘタクソ。」蜷川幸雄が教えてくれた本当の自分

――今回、久しぶりの連続ドラマ主演ですよね。

10代の頃にジュノン・スーパーボーイ・コンテストがきっかけでデビューして、当時は身の丈に合わないような大きな仕事をさせていただいてたように感じます。芝居の楽しさもノウハウもわからないままやっていて、世間から見られている自分と実際の自分との間にすごくギャップがあったんです。いい作品に出られて、大きな役をいただいているんだけど、実力が追いついてない。そんな自分がすごく歯がゆくて。

本当に悔しくて悩んでたときに、背負いこんでたものとか、いろんなものをはぎ取ってくれたのが演出家の蜷川幸雄さんでした。舞台稽古では毎日ボロカスに言われて、「ヘタクソ。おまえなんかやめちまえ! おまえなんか向いてないよ、バカヤロウ」って罵声を浴びて……。

――晩年は丸くなられたとお聞きしていましたが、そうじゃなかったんですね。

丸くなられていた時期もあったと思うんです。けれど、『ヴェローナの二紳士』(‘15)でご一緒させていただいたときには、車イスで呼吸器をつけながら演出されていました。そこからの蜷川さんは本当に命を削りながら稽古場にいたという感じでした。その蜷川さんに全否定をされたときに、ある意味すがすがしい気持ちになったんです。

自分では実力が足りないとわかっていても、人から、それも“世界の蜷川”から言われたときには、もちろん落ち込みました。でも、「だったらもう、凡人は凡人なりにやることがある」って、本当の自分と向き合えるようになったというか。

蜷川さんと出会ってからは、ドラマや映画などの映像よりも舞台で活動するようになりました。シェイクスピアだったりハロルド・ピンターだったり、寺山修司だったり、演劇としてはすごくハードルの高いものを選んで、この5年間芝居と向き合ってきました。

「30歳になった頃に、一皮むけた姿を映像でも見せられたら」という話を5〜6年前から事務所の社長ともしていたので、このタイミングで素晴らしいお話をいただけたと思います。「願えば叶う」じゃないですけど、5年間続けてきたことが報われはじめてきているんじゃないかな。あとは自分がここからどれだけ頑張れるかだなと思ってます。

――では今は予定通りというか、理想的な活動ができているんですね。

以前ドラマの主演をやらせていただいていた頃とは、考え方やお芝居へのアプローチもまったく変わっているので、本当にゼロからまたスタートするっていう感じです。

共演者とも、互いに仮面を外して現場作りを

――溝端さんが新たなスタートを切られる今回の作品。演じられている新谷洋輔は、過去にトラウマを持つという複雑な内面をもったキャラクターですが、演じてみていかがでしたか?

リハーサルでは、足し算より引き算の演出のほうが多かった印象があります。「こういうキャラクターだからこういうふうにやっていこう」って思っていたことでも、現場ではそぎ落とす作業があります。もちろん、現場で新たに生まれるものや足していくものもあるのですが。

監督も30代半ばと若いですし、自分たちの意見を素直に聞きながら導いてくださる方なので、これからの撮影が非常に楽しみです。現場では、変なしがらみとか仮面は外して、みんなで意見を出し合って作っていける現場だろうなと思います。

――役作りをする上で心がけていることがあれば教えてください。

いちばん難しいことなんですけど、なるべく普通にやれたらなと思ってます。どうしても普通の役というのが役者はいちばん難しいので。普通じゃないから役者やってるんですよね、みんな。

普通の人間にわざわざお金払って、舞台を観に行こうと思わないじゃないですか。スタイルがいいとか、顔がきれいだとか、歌がうまい、感性が豊か、セリフ回しがうまい……っていうものを持ってるからこそ、みんな観に来たいと思ってくれるわけです。だから、普通に見えながらもどうやってこの物語に視聴者を引き込むような人物にするかというところはまだ手探りの状態です。

――洋輔は軽い気持ちでやったことから思わぬ事態に巻き込まれてしまいますが、溝端さんにも、軽い気持ちでやったことが思わぬ結果になってしまった経験はありますか?

しょっちゅうですよ。冗談っぽく言ったつもりでも、あんまり冗談と取られてないことが多くて(笑)。あと、よかれと思って人に言ったことが、結果その人を傷つけちゃったなと反省することはよくあります。

僕自身は、自分の意見を自分で噛み砕いて言うのが得意なほうなんですね。でも自分の意見が言えない人っているじゃないですか。言えない人に対して、「なんで言えないんだろう? 思ってれば言えるじゃん」って、つい自分のモノサシで人を測っちゃう。

僕自身は人と関わり合いたいし、ちゃんと向き合いたい人間なんですけど、「向き合いたくない人間もいる」って思ったときに「じゃあどうやって人間関係を構築していけばいいんだ」と思って悩むことはあります。

――最後に、ドラマの見どころを教えてください。

同窓会という、誰もが経験したことがあるようなことから始まるストーリーです。嘘や友情、人間の表と裏の部分が入り混じるとてもスリリングなクライムサスペンスで、毎回いい意味で、見ている人を裏切るような話になっていると思います。放送は深夜の時間帯なんですが、見終わった後に緊張感で眠れなくなるようなものをお届けしたいですね。

文:落合由希
写真:為広麻里
編集:マイナビ学生の窓口編集部

<放送情報>
6月1日スタート
オトナの土ドラ『仮面同窓会』(東海テレビ・フジテレビ系)
毎週土曜日 深夜11:40〜0:35

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編集部:すい

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お笑いとK-POP好き。名前の由来は「すいすい物事がうまくいくように」「水のようにチームになくてはならない存在になるように」から。
★ほっとけない学生芸人GP(@gm_hottokenaigp)運営も兼任中。

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