#へんてこアート入門『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』編

美術展は、ただ美術品を見るだけでなく、作品を通して制作当時の時代背景を学んだり、作者の考えを知ったりできるのも魅力です。例えば江戸時代の絵の場合なら、絵を見ることで当時の生活の模様を知ることができますよね。そうした「学びが得やすい企画展」は、あまり美術に詳しくなくても楽しめるのがポイント。
そこで今回は、江戸時代の女性の生活の一端を知ることができる企画展『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』をご紹介します。
江戸時代の女性の生活に触れることができる企画展
『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』の担当学芸員である渋谷区立松濤美術館の清水緑さんに、今回の企画展の見どころやお薦めの展示を伺いました。

『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』展会場風景(B1展示室)
――今回の企画展のコンセプトを教えてください。
清水さん 浮世絵を中心に、当時実際に使われていた化粧道具や書籍などを展示し、「江戸時代の女性の暮らし」を紹介するものです。
――この企画展の見どころや、「ここが他の企画展とは違う!」というポイントは?
清水さん 浮世絵は当時の出版物です。そのため、江戸の町の華やかな女性が選ばれて描かれています。彼女たちの美しさを堪能できるのは見どころの一つでしょう。とはいえ、描かれているのは実像のほんの一部分にすぎません。そのことを考えながら、じっくりと当時の女性の暮らしの様相に向き合えるような展示になっています。
渓斎英泉 《時世美女競 東都芸子》 1825年頃 足立区立郷土博物館 5/3-26展示

歌川国貞(初代) 《洗濯する婦人》1811-44年頃 足立区立郷土博物館 5/3-26展示
清水さん また、今回は「春画」も展示しています。当時、春画は「地下出版」ではありましたが、江戸時代の人々にとって性は「もっとおおらかなもので楽しむもの」であり、「暮らしの一部」でした。そうしたことを、実際の作品をご覧いただきながら、感じてもらえるとうれしいです。
貴重な肉筆の浮世絵が楽しめる
――おすすめの展示を教えてください。
清水さん おすすめは『新板娘庭訓出世双六(しんぱんむすめていきんしゅっせすごろく)』です。当時の女性のさまざまな職業や身分が描かれているすごろくです。遊び方も楽しく、上がりは「万福長者極楽隠居」。「幸せな老後」が待っているということです。
渓斎英泉《新板娘庭訓出世双六》19世紀 東京都江戸東京博物館
――今回の企画展をより楽しむには、事前にどんな準備をしておくといいでしょうか。
清水さん 特に準備は必要なく、現代の私たちの暮らしと比較しながら気軽にご覧いただければいいと思います。あえてあらかじめ知っておくといいことを挙げるとすれば、浮世絵は大きく「肉筆」と「版画」に分けられるということですね。
今回の会場に展示されている掛け軸の浮世絵は肉筆で、額に入っているのは版画です。そのことを事前に知っておけば、版画の細い線や細かな模様が描いたものではなく、彫ったものだとわかって楽しめます。また、版画を作るための下絵、彫り、摺(す)りの技術の素晴らしさも実感しやすいと思います。
――なるほど。実際に会場で肉筆と版画がどう違うのか見比べてみると面白そうですね。
最後に今後の展望を教えてください。
清水さん 当館は2021年に開館40周年を迎え、建物も建築家・白井晟一の設計ということで注目を集めています。この特徴ある建物と共に、写真、版画、彫刻、工芸品などの所蔵品を、みなさまにご紹介していきたいと館員一同考えております。
――ありがとうございました。
『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』は、江戸時代の浮世絵や実際に使われていた道具を通して、当時の生活模様の一端を知ることができる展覧会です。たしかに、江戸時代の女性たちがどんな毎日を送っていたのかは気になりますね。
自分たちの生活とどう違うのか比べてみるとより楽しめるでしょう。会期は5月26日までなので、興味のある人はぜひお早めに!
●『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』
会場:渋谷区立松濤美術館
会期:2019年4月6日(土)~5月26日(日)
入場料:一般1,000(800)円、大学生800(640)円、高校生・60歳以上500(400)円、小・中学生100(80)円
※( )内は団体10名以上および渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日は小・中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障害者および付き添いの方1名は無料
※18歳未満の方(高校生を含む)がご覧になれない作品が一部含まれます。
開館時間:10:00~18:00(金曜日のみ20:00まで、最終入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日(祝休日は開館)、祝休日の翌日(土・日曜日に当たる場合は開館)、展示替え期間、年末年始(12月29日~1月3日)
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
https://shoto-museum.jp/
(中田ボンベ@dcp)