ボラプの次はこれ! 音楽をテーマにした映画たち
2018年11月に日本公開された『ボヘミアン・ラプソディ』は異例ともいえるロングヒットを続けています。興行収入も日本だけで100億円を超える大ヒット作となりました。『ボヘミアン・ラプソディ』は伝説のバンド『クイーン』を率いたフレディ・マーキュリーの半生を描いていますが、音楽がテーマの映画は他にもたくさんあります。今回は「音楽をテーマにした映画」をご紹介します。
イギリスにあった知られざる音楽ムーブメント
『ノーザン・ソウル』(日本公開2019年)
2019年2月9日に日本公開されたイギリス映画で、1970年代のイギリス北部工業地帯を舞台に、若者たちが熱狂した音楽ムーブメント「ノーザン・ソウル」をテーマにした作品です。
ノーザン・ソウルは、あまり知られていないレアなソウル・ミュージックをクラブでかけて熱狂的に踊るというもので、工場などで働く労働階級の若者たちによって圧倒的な支持を受けました。このムーブメントの背景には、当時のイギリスの経済的な落ち込みがあります。不況が若者たちの生活にも暗い影を落としていたのです。
本作では、その閉塞(へいそく)感とそれを何とか打ち破りたいと願う若者の「あがき」が描かれています。この若者たちの苦闘が時代を超えて見る者の心を揺さぶるのです。
ひどい先生をジャズ・ドラマーが乗り越える話!?
『セッション』(日本公開2015年)
19歳のアンドリュー・ニーマンはジャズ・ドラマー。一流のミュージシャンになるためシェイファー音楽学校で学んでいますが、ある日、最高の指揮者と目されているテレンス・フレッチャーの目に留まります。
フレッチャー先生に見いだされたと喜んでいたニーマンですが、バンドのセッションに参加して度肝を抜かれます。フレッチャーは異常に厳しく、メンバーを罵倒、殴る、ものを投げ付けるなどを行うほどの鬼コーチだったのです。
ニーマンはフレッチャーを見返すため、彼のしごきに耐えますが……というストーリー。しごきの鬼を乗り越える……という感動作です。
ロックの魂を子供たちに伝授!
『スクール・オブ・ロック』(日本公開2004年)
デューイ・フィンはロックを心から愛するギタリストですが、あまりに熱があり過ぎて勝手なパフォーマンスを行うので、バンドをクビになります。シェアハウスからも放り出されそうになったデューイは、私立の名門「ホレス・グリーン学院」で臨時教師のアルバイトをすることに。厳格な学校でルールも厳しく、やる気のなさそうな子供たちでしたが、デューイは彼らに音楽の才能を見いだします。子供たちとバンドを組んでバンドバトルに出場しようとするのですが……というお話。
コメディー映画ですが、デューイの熱血指導、子供たちの成長していく姿に感動させられる作品となっています。
白人ラッパー・エミネムが負け犬を抜け出すまで
『8 Mile』(日本公開2003年)
ラップ界のカリスマ、エミネムの半生を描いた作品で、エミネムが自身を演じています。1995年、自動産業が衰退したデトロイトでは都市の荒廃が進んでいました。「8マイル・ロード」と呼ばれる道が、富裕層と貧困層、また白人と黒人層を分けており、貧しい人々はこの8マイル・ロードを越えたいと願っていたのです。本作の主人公ジミー・スミスJr.もそんな一人。彼の武器は「ラップ」です。しかし、「ラップは黒人のもの」という常識からMCバトルに出ても認められません。彼女の裏切り、家族をむしばむ貧困など、圧倒的な逆境の中、それでも彼は闘う……というストーリー。
絶対に勝ってここから抜け出す!という、エミネムの強い意志と行動が見る者を感動させずにはおきません。
音楽の神に愛された「天才」と愛されなかった「凡人」
『アマデウス』(日本公開1985年)
天才ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、優れた曲を生み出し大衆に愛されますが、オーストリア皇帝ヨーゼフ2世に仕える作曲家たちからは下品な性格などが疎まれ、嫌われていました。しかし、作曲家として高名なアントニオ・サリエリだけは、モーツァルトの天才を見抜き、畏怖の念を抱いていました。しかし、同時にサリエリはその天才をねたみ、憎んでもいたのです。サリエリはモーツァルトを殺そうとある計画を立てるのですが……。天才・モーツァルトと凡人・サリエリの対比が、凡人の私たちに強い印象を残します。
また、「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」など、モーツァルトの美しい楽曲が使われており、聞きどころに満ちているのも本作の大きな魅力です。
音楽ムーブメント、ジャズ、ロック、ラップ、クラシックとジャンルを変えて1作ずつご紹介しました。他にも音楽をテーマにする映画はたくさんありますが、このような映画のいいところは、作中で素晴らしい楽曲が聞けることです。音楽テーマの映画は、コンサートの一種といえるかもしれませんね。みなさんは、どんな「音楽がテーマの映画」が好きですか?
(高橋モータース@dcp)