「aoihr」アベシュンスケにインタビュー: 初音源「僕と春」の根源とこれからの音楽活動

吉河卓人

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こんにちは、法政大学3年の吉河卓人です。

「もしもMy Hair is Badが『マックのポテトが揚がる音』を演奏したら」などのオマージュ動画がSNSで話題となり、現在はソロプロジェクトaoihr名義での初音源集「僕と春」がディスクユニオンやiTunesなどで流通中の音楽家、アベシュンスケさん。

今回は、現役の青山学院大学4年生でもあるアベさんに、大学生活や音楽活動のことについてインタビューを行いました。加えて、新1年生のみなさまへ向けた心強いメッセージも頂いています。

「アベシュンスケ」の音楽活動と学生としての自分について



―アベさんは春から大学4年生とのことですが、今まで音楽活動と学生生活を両立するにあたって苦心したことなどはありますでしょうか。

あまりないかもしれません。自分は音楽制作にあたって作詞作曲、演奏や録音、映像作成などをすべて一人で行っているぶん、作業量自体は非常に多いのですが、外部に依頼していないのでスケジューリングにはさほど苦労していません。また、昨年度は「クマ財団」の奨学生としてクリエイター奨学金を受け取りながら活動していたので、学業と音楽活動の両方に集中することができました。

―なるほど。ちなみに、その「クマ財団」というのは学生クリエイターの育成を目的とした、給付型の奨学金機構であるとお聞きしています。このクリエイター奨学金について、どこでどのように知ったのか教えてください。

インターネットの広告で見かけて、「お金もらえたらいいなぁ」くらいの軽い気持ちで応募しました(笑)。でも、いざ受かってみると、いろいろな分野のクリエイターたちと交流する機会が増えたため、応募して本当によかったと思っています。また、機材の更新も行え、以前よりお仕事を頂ける機会も増えました。

―広告を見かけただけで、応募に踏み切れる勇気が素晴らしいと思います。先ほど、音楽の制作は全て一人で行っているとおっしゃっていましたが、なぜお一人で音楽活動を行っているのでしょうか。

自分が音楽制作を始めたきっかけとして、ニコニコ動画やボーカロイドの影響が大きかったこともあり、“音楽は一人で作るもの”という意識が自分の根底にあったのが大きいです。高校時代にはバンド活動にも取り組んだのですが、自分ひとりの「エゴ」を自由に表現したかったこともあり、ソロでの音楽活動に落ち着きました。

―アベさんは大学では英米文学科に所属し、長期の留学経験もあって英語に堪能であるにも関わらず、楽曲制作はほとんど日本語で行っていらっしゃいます。これについて何か理由などあればお聞かせください。

英語を用いた文学を学んでいるからこそ、日本語が持つ文脈の深みを生かし、日本語にしかできないアプローチを意識するようになりました。そのため、大学や留学で学んだことは、勉強と音楽活動の両方にいい影響を及ぼしているのではないかと思っています。

―少々話題は変わりますが、アベシュンスケさんのことを「マイヘアポテト」「ナンバガPPAP」などのオマージュ動画で知った方もいらっしゃると思います。これらの動画はどのようなきっかけで作成されたものなのでしょうか。




むしろ、動画を知っていて僕を知らない人のほうがずっと多いかもしれません(笑) 。「あの有名バンドがあの曲を演奏したらおもしろいだろうなぁ」というようなことはずっと考えていて、それを表現する手段が偶然手元にあっただけです。最初に作った「ナンバガPPAP」は、まさかこんなにバズるとは思いもしなかったのですが、その後の「マイヘアポテト」に関してはキャッチーなコンセプトを通して、自分の技術や活動を知ってもらいたいという下心が少しだけありました。「aoihr」には、そういったコミカルな面と真面目な制作活動を切り離すための側面もあります。

―なるほど、あの動画とアベさんの今回のプロジェクトには、そんな関係があったんですね。

全て一人で作り上げた「僕と春」、その根底にあるもの


―今回、初音源となる「僕と春」がリリースとなりましたが、現在の率直なお気持ちをお聞かせください。

ライブなどを積極的に行っていないにも関わらず、さまざまな人たちに注目してもらえてうれしい限りです。今作「僕と春」は、今までの自分の人生を追憶しながら制作したアルバムであるため、自分の人生へのフィードバックを見るような気持ちで全ての反響を見ています。こうしてインタビューを受けさせて頂いているのも本当に光栄です。

―先ほど作詞作曲、演奏や録音、映像作成など全てお一人で行っていると伺いましたが、これらのスキルはどこで、どのように身につけたのでしょうか。

中学2年生のころにDTM(デスクトップミュージック)を始めて、そこからはどの技術も見よう見まねの独学で習得していきました。中高生の頃はボカロPのゆよゆっぺ氏、164氏などの制作ライブ配信をかなり参考にしていましたが、具体的に先生や導師がいるということはないですね。

―では、「僕と春」はどのような想いから作られているのでしょうか。

ここ数年のエンタメ作品やCMなどで、「青春」という言葉や概念が安売りされてることに違和感を覚えていました。制服や男女の恋愛とセットで規格化されたものではなくて、若者のもっと根底にある孤独を浮き彫りにしたいと考えていたんです。それを今回の音源のような形で表現することによって、「孤独の先にあるもの」を受け手のみなさんと一緒に探していきたいという想いがあります。そういう意味では“青い春”という言葉の意味そのものを皮肉っていて、誰かの背中を押そうとか、何かを伝えようとかは、あまり考えていないのかもしれません。

―“青い春”の言葉の価値そのものに問いかけをしている、ということでしょうか。

そういう部分は確実にあります。青春ものが嫌いなわけではなくて、『桐島、部活辞めるってよ』や『君の名は。』などは何度も観ました。「俺はこういう手段で表現するぞ、お前らはどう思う?」という問いかけですね。反骨精神に近いです。



これからの活動と将来の夢

―そんなアベシュンスケさんですが、大学4年生ということで就活の時期でもあると思います。aoihrもあわせ、これからどのように活動していくつもりでしょうか。

自分が仕事をしつつ、好きな音楽を続けていられる方法を模索中です。ES作成や説明会と並行してオーディションなども受けているので、自分としては就職活動というより人生設計を行っている、という気持ちで行動しています。音楽活動については、なるようになればいいなと思っています(笑)。というのも、自分や世間の変化を受け入れていかないと、絶対に感性が枯れてしまうと考えているんです。結局、音楽というのは生活からしか生まれないものなので、生活や自分の考え方の変化はむしろ積極的に受け入れていきたいと思っていますね。

―ちなみに、これからの活動にあたって夢や目標などはありますでしょうか。長期的なものでも短期的なものでも構いませんので、あればお聞かせください。

自分が就職するにしろ、しないにしろ、自分の作品がたくさんの人の目に触れるようにしたいと考えています。具体的に言えば地上波とかにも出たいです(笑)。

―アベさんが「ミュージックステーション」など地上波の音楽番組に出るのを今から楽しみにしています(笑)。そんなアベさんの音楽を聴いている方々へのメッセージなどをお願いします。

自分の音楽は具体的なシチュエーションが出てくる、ドメスティックなものが多いんですが、表現している気持ちはいたって普遍的なものなので、自分の音楽を聴いていろいろなことを考えてくれたらうれしく思います。

―では最後に、これから大学生活をスタートする新1年生に向けたエールなどがあればお願いします。

大学という新しい環境に踏み出すと、みな「何者かになりたい」という気持ちが芽生えてくると思います。そこで、いわゆる「イケイケの大学生」になるために「これをやるとダサいだろう」とか「これは大学生らしくない」という気持ちが先行して、やりたいことや好きなことができずに、無理をしてしまう人が出てくるんじゃないかとも思います。でも、本当は大学生というのはやりたいことをやるのに絶好の時機なので、大学生のうちくらいは好きなことをやったほうが絶対にいいですよ。大学生のうちにずっと続けられる好きなものを見つけたり、あるいはそれに取り組んだりしてみてください。

―本日はありがとうございました!

【あとがき】
セルフマネジメント力が高く、表現に対して非常に真摯なアベシュンスケさん。取材中もその思慮深さが感じられ、また音楽に対する造詣の深さにも大変驚かされました。それでいてユーモアと笑いも忘れないアベさんは、まさに理想の大学生と言えるのではないでしょうか。これからもアベさんの音楽を楽しみにしています。

アベシュンスケ
横浜隼人高校国際語科卒。現在は青山学院大学文学部英米文学科の4年生として英米文学を学ぶかたわら、フリーランスの音楽家として活動し、『もしもナンバーガールが再結成して「PPAP」を演奏したら』や『もしもMy Hair is Badが「マックのポテトが揚がる音」を演奏したら』などのオマージュ動画を投稿してSNSで話題を集めた。3月24日に初の音源となるEP「僕と春」を自身が立ち上げた音楽プロジェクト「aoihr」からリリースしており、現在ディスクユニオン、iTunesなどから入手可能。

【アベシュンスケTwitter】https://twitter.com/abesuke0604
【aoihr Twitter】https://twitter.com/aoihr_official
【YouTube】https://www.youtube.com/channel/UCmZsQZZjI5yKZcx-TbVb5VQ
【ディスクユニオン】http://diskunion.net/jp/ct/detail/1007622673


取材・写真・文:吉河卓人

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