【連載】人気企業のインターンシップと大学生向けキャリア支援の現状レポート Vol.2 株式会社博報堂/株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
就職活動が本格化するのは3年生の冬以降ですが、大学1、2年生のうちから早めに取り組みを始める人も最近では増えていますよね。今後、インターンシップの参加は就活生において不可欠な活動の一つになるかもしれません。そこで本企画では、人気企業の人事担当者にインタビューし、インターンシップの取り組みや、大学1、2年生も対象とする大学生向けのキャリア支援の取り組みなどについて語ってもらいます。今回は、「株式会社博報堂・株式会社博報堂DYメディアパートナーズ」人事局人事部の西本さん。博報堂が実施するインターンシップとは!? 今の大学生に企業は何を求めているのか!?
Q、貴社のインターンシップの取り組みについて聞かせてください。
当社では「生活者発想合宿」と「クリエイティブ・サマーキャンプ」という2種類のインターンシップを用意しています。「生活者発想合宿」は通い講義と合宿の2本立てで、当社フィロソフィーである「生活者発想」を起点に、まだ見ぬワクワクを発明するための、アイデア発想のアプローチを学ぶプログラムです。前半3日は赤坂の本社ビルにて講義形式、後半3日は軽井沢にて合宿をしながらワークショップを行います。
「クリエイティブ・サマーキャンプ」は「コピーライター」「アートディレクター」「インタラクティブプラナー」の3コースから構成されており、当社クリエイターによる講義を受けたのち演習にとりくむことで、第一線で活躍するための実践的なエッセンスを学べる5日間になっています。
Q、日程と受入人数を教えていただけますか?
2016年でいうと「生活者発想合宿」は、8月15日~17日の3日間が通い講義で、後半2チームに分かれてAチームが8月21日~23日、Bチームが29日~31日に、それぞれ3日間ずつ合宿を行いました。参加者は60名です。「クリエイティブ・サマーキャンプ」のほうは、8月19日~25日の平日5日間、参加者数十名で赤坂にて開催しました。
Q、それぞれ目的はどこにあるのでしょう?
「生活者発想合宿」では「生活者発想」のプロセスを体感してもらうことで、ひとつの課題に向き合い考え抜く楽しさや、“世の中を動かすような力のあるアイデア"が生まれた瞬間のワクワク感、高揚感を味わってもらうことを目的にしています。
「クリエイティブ・サマーキャンプ」はクリエイターをめざす学生のために、クリエイティブのプロセスを学んでもらうプログラムです。博報堂クリエイティブのエッセンスの濃密なところだけを取り出し、5日間にギュッと凝縮しています。
Q、このインターンシップの狙いを教えてください。
「生活者発想合宿」に関していうと、広告業界を志望する学生のみならず、近い将来、社会に出て行く学生に対して広く「生活者発想」を学んでもらい、広く役立ててほしいという狙いがあります。
学校の授業や試験のような“正解探し"ではなく、“正解のない問い"に対してチームで向き合っていく楽しさ、喜びを味わってもらうことで、広告業界で働くおもしろさを知っていただきたいですね。
Q、インターンシップでの記憶に残るエピソードがあればお話しください。
「生活者発想合宿」のワークショップでは共通の課題にチャレンジしてもらうのですが、各チームに現役社員がチューターとしてプログラムに参加します。
最終日にはプレゼンテーションをおこないますが、達成感からうれし泣きをするし、至らなかったと悔し涙を流す……。これは3日間寝食を共にし、真剣に向き合ったからこそ得られる感動なのではないでしょうか。私も今年度のインターンシップにチューターとして参加しましたが、チームの一員として過ごした3日間は非常に思い出深いです。
Q、インターンシップへの参加学生に対して要望などはありますか?
みなさん前向きに取り組んでくれており、要望などは特にありません。おもしろさの裏返しでもありますが、チームでアイデアをまとめることのむずかしさをぜひとも体験してほしいですね。
たとえばこのような場では、サークルやゼミでリーダーをやっているような学生が多く集まってチームを組むわけです。そんなメンバーが集団で“正解のない問い"に挑む。自分の意見を通すことを目的とするのではなく、チームでよりよい成果を創出するために全体としてどうしたらよいのだろう? 自分がどんな役割を果たせばチームがうまくいくんだろう? 私たち広告会社の仕事もチーム単位で動きますので、考え抜いたときにどういう結論がベストなのかというところをしっかり学んでほしいと思っています。「チームシップ」という視点を常に忘れずに取り組んでもらえたらうれしいですね。
Q、大学1~2年生時期から取り組んでおくべきことは?
自分にしかない「N=1」の経験をたくさんつくってほしいと思います。「N」はサンプル数のことで、ほかの誰もやったことのない経験をしてほしいということです。広告会社ではアイデアのバリエーションや、ものの見方を複数もつことがなにより大切です。その際に活きてくるのが自分しかやったことのない経験ではないでしょうか。「これ誰が知ってるの?」と疑問に思うようなマニアックなジャンルも社内を募ると誰かが知っている。そんな人材の多様性が当社の組織としての強さだと思います。
Q、西本さんが「これはおもしろい!」と思われた「N=1」の経験を挙げていただけますか?
毛ガニの養殖を自宅の風呂場でやっていた学生には驚きました。理系の学生だったんですが、いまは当社でデータ分析の仕事で多いに活躍しています。「なぜそれをやろうと思ったの?」「どうやって実現したの?」と、思わず私たちが訊いてしまいたくなるような経験、体験をしている学生は魅力的に映りますね。
面接などではどうしても人から評価を得た活動ばかりアピールしがちですが、たとえ成果が出てなくても、どんなに小さな体験でもかまわないので、オリジナルのエピソードを語ってほしいです。そこからその人の価値観や背景にあるストーリーを私たちが読み取りたいと思っています。
Q、大学1~2年生と接する場はなにか用意されていますか?
キャリア支援を目的としているわけではないのですが、学生が1~2年生の段階から私たちのプログラムに触れられる取り組みをご用意しています。
代表例のひとつが当社のブランディング専門組織である博報堂ブランドデザインが主催する「BranCo!」です。これは「ブランドデザインコンテスト」の略であるとともに、ブランコのような振り幅で右脳と左脳、感性と理性を行き来する、というダブルミーニングになっています。1チーム3~6名の学生が協力しあい、課題となるテーマについてさまざまな視点から調べ、その本質を考え抜き、魅力的なブランドのアイデアをチーム対抗で競い合うという企画コンテストになっています。実際に当社を知っていただく、博報堂のブランディングのプロセスを知ることができるという意味で、たいへん重要な機会ではないでしょうか。
Q、「BranCo!」など大学1~2年生に向けて広く門戸を開放していることの意図とは?
「BranCo!」に限らず、「生活者発想合宿」や「クリエイティブ・サマーキャンプ」も年齢制限は設けておりません。参加条件は「国内外の大学または大学院に在籍している方」でして、学年は不問です。
いずれにしろ就業体験という枠組みにとらわれることなく、物事を多面的にとらえる「生活者発想」という当社ならではのアプローチは、社会人になったときにきわめて有用でしょう。そんなものの見方、考え方に少しでも早い時期から触れてもらうことに大きな意味があると思っています。
【トピックス】一般観覧ができる最終プレゼンテーションが3月18日開催!
※関連記事
ブランドデザインを考える「BranCo!」が今年も開催!
Q、最後に、大学生に一言、エールをお願いします。
広告会社は、自分が生み出したアイデアが世の中の口の端に上るかもしれない、メディアに取り上げられるかもしれない、誰かを感動させられるかもしれない、という夢を真剣に追求できることが最大の魅カだと思います。そのダイナミズムを経験できるのが広告会社の楽しさかな、と。
博報堂と博報堂DYメディアパートナーズでは、いま「未来を発明する会社へ。Inventing the future with sei-katsu-sha」という合同ビジョンを掲げておりまして、5年後、10年後に向け、広告会社が世の中にとってどういう存在になっていくべきかを考えています。
新しいプロダクトデザインを手がける、自分たちで商品をつくる、なにかサービスを開発する……など、当社が長い間培ってきた「生活者発想」を進化させ、広告会社が担える役割を増やしていきたい。そのためにあらゆることを楽しんで一緒に考えてくれる人たちと働きたい。未来を明るく楽しくするためのアイデアをぜひ、一緒に発明しましょう。
【プロフィール】
西本裕紀
(ニシモト ユウキ)
株式会社博報堂
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
人事局人事部
マネジメントプラニングスーパーバイザー
2009年入社。早稲田大学社会科学部卒。
博報堂に入社後、コーポレートコミュニケーション局(現・PR戦略局)にて食品会社、通信会社、飲料会社などの広報・情報戦略の立案、PRプラニングなどを担当。その後、TBWA HAKUHODOや博報堂広報室などを歴任し、2015年より人事局人事部にて新卒採用を担当。