注目されているハラルフード! イスラム教でのNGな食材、OKな食材ってどんなの?
皆さんは、「ハラルフード」という言葉を聞いたことはありませんか? これはイスラム教における「食べてもよい食品」のこと。イスラム教には厳しい食事の戒律があり、「食べてもよいもの」「食べてはいけないもの」が決まっています。ではどんなものがOKで、どんなものだとNGなのでしょうか?
■ハラルの分類は難しいものではない
ハラルフードについて、一般社団法人ハラル・ジャパン協会の佐久間朋宏さんにお話を伺いました。
――イスラム教の人が食べることのできる「ハラルフード」とはどういったものなのでしょうか?
佐久間さん まず「ハラル」というのはイスラム教において食べ物だけでなく、日常のあらゆるシーンにおいて「やっていいこと」を指す言葉です。時間を守る、人を傷つけないといったこともハラルの概念に当てはまります。その中でもイスラム教徒の人たちは「食べ物」と「お祈り」について他の宗教よりも重要視しています。ですので、食べ物に関しては厳しい決まりがあるのです。その中で「食べてもよい」とされているのが「ハラルフード」と呼ばれるものなのです。
――よく「イスラム教徒は豚肉を食べてはいけない」と聞きますが、これは正しいのでしょうか?
佐久間さん 「ムスリム(イスラム教徒)は豚肉は駄目」というのは正確ではありません。正しくは「豚由来のものが駄目」ということです。お肉そのものだけでなく、豚肉のエキスが入っているものや豚の油なども絶対に食べてはいけません。これは「コーラン(イスラム教の経典)」に書いてあるからなのです。
――豚以外の肉は大丈夫なのですか?
佐久間さん 豚以外の牛や鶏肉など一般的に流通している動物の肉は食べることができますが、これもどんな肉でもOKではありません。ムスリムの人がお祈りをして、所定の方法でと畜したお肉や成分でないといけません。イスラム教にはこうしたお肉由来の厳しい制限があります。
――豚肉以外でも厳しい制約があるのですね。
佐久間さん 次に「アルコール」に関する制約があります。これは基本的に「飲むアルコール」を禁じるということなのですが、宗教者によっては消毒用アルコールや工業用アルコールも制限する方もいらっしゃいます。
――例えば、お酒を使う料理などもありますがああいったものも禁止ですか?
佐久間さん アルコールを飛ばす調理法だとしても、「アルコールを加える」という行為がまず駄目なのです。お酒を使ってもアルコールがなければ問題ないということではありません。もちろん国によって個人差もあるので、アルコールを飲むムスリムの人もいたりしますが、基本的にはアルコールを飲むのは禁止です。食事における制約はこの二つが大きく、特に動物に関することが最も厳しいということを理解してください。
――魚などはどうなのでしょうか?
佐久間さん 基本的に「水の中のもの」「土の中のもの」はハラルに当たります。ですので、日本人になじみのある「焼き魚」や「おにぎり」はハラルフードです。
――戒律を守ることで、料理のバリエーションが少なくなったり、内容が乏しい料理になったりするのではというイメージがありましたが、厳しいのは一部だけで、それ以外は自由な食事環境のようです。
佐久間さん そうですね。豚由来のものや所定の手順で処理された肉、またアルコールといったものを使わなければいいだけなので、ハラルフードだけで十分においしい食事をすることが可能です。また、日本でも明治以前は動物の肉を食べる文化は一般的ではなく、いわゆる精進料理がメーンでした。ですので、日本の食文化とハラルフードはそこまで乖離(かいり)していないのです。
――日本の料理との親和性は高いのですね。
佐久間さん コンセプトは同じでも日本とイスラムの味付けは全く違うので、そこが難しいところです。ただ、ゆくゆくは受け入れてもらえるのではないかと考えています。