最初は遊びだったのに……すごすぎ! ハチロクを電気自動車に改造しちゃった大学生たち
電気をエネルギー源として動く電気自動車。次世代のエコカーとして注目されており、さまざまな自動車メーカーが研究・開発を行っています。そんな電気自動車を、市販の車を改造することで作ってしまった大学生たちがいるのです。
■最初は遊び系サークルだった……
電気自動車を作ったのは、九州工業大学情報工学部のサークル「e-car」。今回は製作初期から携わっていた「e-car」の元部長の富永萌子さんに、電気自動車を作ることになった経緯や苦労したこと、また今後の展望などを伺いました。
――市販車を電気自動車に改造しようと思った経緯はどんなことだったのでしょうか?
ある先生から、「電気自動車を作ってみないか?」と声を掛けていただいたのがきっかけです。2009年に近所のお豆腐屋さんから中古のトヨタAE86スプリンタートレノ(通称86(ハチロク))を譲り受け、EV(電気自動車)へ向けた改造が始まりました。それまでは「何かみんなで楽しくできたらいいな」というような遊び系サークルだったと聞いています。
――市販車を改造することはかなり難しいものだったと思いますが、どんな点が大変だったのでしょうか。
単純に、「モーターをいかにして車体へ固定させるか」が問題でした。FF車の場合、ミッションギアボックス自体が車体に固定されており、エンジンとモーターを入れ替える作業だけで済みます。しかし、86に関してはFR車となっており、ギアボックスが車体に固定されていません。モーターとギアボックス、モーターと車体の固定を考えるのが難しかったです。
また、車・EVに関する知識がないに等しかったことも問題でした。私が入部したのが2011年で、車を譲り受けてから2年が経過していましたが、車体はエンジンを取り除いたまま埃をかぶっている状態でした。
――その部分で相当に時間がかかったということですね。
次に、金銭的問題です。モーター・バッテリー等必要物品の購入に加えて、車両自体のメンテナンスなど、あらゆる面でお金が掛かります。モーターやバッテリーの購入以外にも、車が古いためさまざまな部品にもお金が掛かりました。
――どのようにその問題を乗り越えたのですか?
学生プロジェクト企画に応募することを考えました。しかし、当時の私たちに実績はなく、いつ完成するか見当もつかない状態でしたので、大学から学生プロジェクトに採択されることは非常に難しい状況でした。ところが、大学から学生プロジェクトに採択していただいたので、配分された予算で作りあげるにはどうしたらいいのか、安くて十分な性能を持つ物品はないのか、メンバー全員で調査と検討を繰り返しました。
――ようやく動き出した、ということですね。
完成は夢物語のようでしたが、当時の部長が根気強く一つ一つの問題をクリアするため調べては実行に移せるよう努力していました。「私が卒業するまでに動かすことができればいいね」と話していましたが、翌年2012年には走行可能な状態まで改造が完了し、車検を取得するに至りました。このときに「大学生でお金がなくても電気自動車は作れる」といった自信がサークル内で芽生えたのではないかと思います。
――自動車に関する面以外で苦労されたことはありますか?
メンバー確保に苦労しました。サークルといいながら部屋もなく、大学の実習工場の隅で作業させてもらっていましたので、認知度も低く、大会などの参加実績もなく、新入生へのアピール力に欠如していました。最初は上回生が他のサークルから友人を勧誘したり、顧問の先生から声を掛けていただいたりして、5、6人のメンバーでなんとか成り立っていました。今では毎年大勢の新入メンバーが来てくれますが、年度の後半になると半分くらいに減ってしまいます。残ったメンバーはけっこう個性的な人ばかりですが、みんなで協力してEVに取り組んでいます。